省力化投資補助金は、最大1,500万円の補助金を受け取れる令和6年よりスタートした補助金制度です。第1回公募は、6月25日から7月19日までとなっています。
あらかじめ準備されたカタログの中から製品を選び、その製品の導入にかかる経費を補助するという形です。
そしてカタログの中には、自動で荷物を運んだり台車を牽引したりできる「無人搬送車」が掲載されています。製造業の工場や倉庫などでの省力化・省人化に活用が可能です。無人搬送車の導入をお考えの事業者様は、ぜひ本補助金を利用してはいかがでしょうか。
本記事では、省力化投資補助金の概要や省力化投資補助金で無人搬送車を導入するメリットなどを解説します。
- 省力化投資補助金の概要が分かる
- 省力化投資補助金の無人搬送車の導入方法を把握できる
- 省力化投資補助金を活用する際の注意点が分かる
監修者
松山市の税理士 越智聖税理士事務所代表。株式会社聖会計代表取締役社長。税理士。
経済産業省認定経営革新等支援機関
越智聖税理士事務所は平成27年4月に松山で開業した、主に中四国全域の中小企業の皆様をご支援している会計事務所である。会計・税務はもちろんのこと、お客様のお悩み事を解決する総合的なコンサルティング、緻密な経営診断にもとづく経営コンサルティングなどを得意としている。前職において関与先の上場支援、多くの業種の税務経営支援、相続税、事業承継対策に従事し、12年の実務経験を経て独立開業。現在、職員6名の体制でお客様を支援。
事業再構築補助金の書類確認など多岐にわたる業務に対応ができる。圧倒的な実績を持つ認定経営革新等支援機関として多くの事業者を支援。愛媛県内で事業再構築補助金の採択率が税理士、会計士、中小企業診断士などの中で5位になる。四国税理士会松山支部所属。
高齢化社会の要請である介護事業経営支援にも取り組み、新規事業立ち上げから財務体質改善、集客アドバイスなど、さまざまなサービスを提供。また、様々な業種に対応し、建設業、飲食業、不動産業、社会福祉法人、酪農業、さらには漫画家、芸能関係などの珍しい業種にも対応している。仕事のほとんどがお客様や他士業の先生からの紹介となっている。現状では80%が紹介で、それ以外は直接の依頼や、ネットでの集客である。税理士業務以外の仕事(保険、法人設立、建設業許可など)は、提携している専門家の方に積極的に依頼し、お客様へのサポート体制の拡充を図っている。顧問先が黒字になるように、出来上がった試算表を基に徹底的に分析して改善すべき点を指摘。また、多くの業種を取り扱っていて、周りの業界のヒアリング調査も実施。これにより、一般的には7割が赤字企業といわれるなか、当事務所の顧問先の黒字率は6割を超える。
【他媒体での監修事例】
・UPSIDERお役立ち記事にて記事監修

中小企業が活用できる省力化投資補助金とは?
中小企業が活用できる省力化投資補助金とは?
省力化投資補助金とは、中小企業や小規模事業者の人手不足を対象に、数百万~数千万円の補助金を交付する国の補助金制度です。
人手不足の解消につながる「省力化(ツールや設備の導入などによって、作業工数を削減すること)」を達成する目的で、ITツールや設備を導入する事業者が行う、設備投資および附随するものにかかる経費を補助します。
省力化投資補助金の大きな特徴は、事前に「省力化を達成できる製品等・製造事業者・販売事業者」として登録されている製品を、カタログの中から選ぶ点にあります。
カタログから自社の業務効率化や生産性向上、賃上げにつながる省力化ができる製品を選択し、その製品を用いた事業計画の経費が補助対象です。
2024年6月現在のカタログの中には、工場や倉庫で導入されている「無人搬送車」も掲載されています。
もし無人搬送車の導入による省力化・省人化を検討する事業者様がいれば、省力化投資補助金の活用をぜひ検討してみてください。
ただし省力化投資補助金の交付を受けるには、無人搬送車を活用した事業計画書を作成し、その事業計画が「目的や要件と照らし合わせて適切かどうか」の審査を受ける必要があります。事務局の審査にて採択を受け、採択を受けた事業を完了した後でないと補助金を受け取れません。
以下では、省力化投資補助金の概要や補助対象事業者、対象経費、補助金額などを解説します。
省力化投資補助金の補助対象事業
省力化投資補助金の交付を受けるには、本補助金の交付目的に合致する事業を行い、その事業で発生した経費を報告する必要があります。
省力化投資補助金の補助対象事業は、人手不足に関する以下いずれか1つに該当するものです。また、該当する旨を事業計画内で説明をします。
- 人手不足が原因で、従業員の平均残業時間が30時間超になっている
- 整理解雇ではない離職・退職によって前年度比より5%以上従業員が減少している
- 採用活動したにもかかわらず、満足行く結果にならなかった
- その他、省力化が必要となっている(別途省力化量計算書、機器配置予定図が必要)
作成する事業計画書には、「無人搬送車の使用方法」「無人搬送車によって期待される省力化効果」「既存業務から抽出を見込まれる時間・人員」の3点を盛り込みます。加えて、公募要領にある「基本要件」と「採択における要件」を満たさなければなりません。
基本要件
基本要件とは、「労働生産性の向上目標」と「賃上げ目標」です。労働生産性の向上目標は必須、賃上げ目標は達成すれば補助金上限50%引上げとなっています。
労働生産性の向上目標とは、「補助事業終了後3年間は、毎年、申請時と比較して労働生産性を年平均成長率(CAGR)3%以上向上させること」です。年平均成長率や労働生産性の計算方法は、公募要領に記載されています。
賃上げ目標とは、「事業場内最低賃金を45円以上増加させること」と「給与支給総額を6%以上増加させること」の両方の達成です。賃上げ目標を掲げた上で達成できなかったときは、補助金額が減額されます。
採択における要件
採択における要件とは、公募要領に記載された、採択を受けるためにクリアすべき10項目です。
- 導入する省力化製品に紐付けられた業種のうち少なくとも1つ以上が、補助事業者の営む事業の業種と合うこと
- カタログにある価格以内の製品本体価格・導入経費を補助対象として事業計画に組み込むこと(補助額の範囲外で、自費により経費を追加することは認められる)
- 基本要件の労働生産性の向上目標を設定し、その実現に向けて取り組むこと
- (補助上限額の引き上げを行う場合)基本要件に記載する賃上げの目標を設定し、その計画を従業員に対して表明するとともに、その実現に向けて取り組むこと
- 省力化製品を登録されている業種・業務プロセス以外に使わないこと
- 労働生産性の向上に係る目標を合理的に達成することが可能な事業計画に沿って実施されること
- 効果報告期間が終了するまでの間、省力化製品の導入を契機として、補助金の事業目的達成のために解雇したり退職を促したりしないこと
- (補助額が500万円を超える場合)付保割合が補助率以上である保険または共済への加入を行うこと(支払保険料は補助対象外)
- すでに所有する製品の置き換えを行うものではないこと
- GビズIDプライムを取得していること
いずれの要件も特別なことではなく、補助金申請において常識的な範囲内での決まりごとのようなものです。そこまで難しく考えずとも、省力化投資補助金の交付を本気で狙うなら、自然と達成できているでしょう。
省力化投資補助金の補助対象者
省力化投資補助金の補助対象者は、組合・社団法人などを除いた一般的な中小企業者の場合だと、以下の資本金または従業員数であることが条件です。
出典:公募要領
組合、社団法人、その他公募要領に記載された中小企業者以外には、それぞれ異なる要件が課されています。また中小企業者であっても、親会社が株式を取得している、直近に15億円以上の課税所得を得たことあるといった場合は、補助対象から外れる場合があります。
また本補助金は、全従業員の賃金が最低賃金を超えている事業者でなければ応募できません(交付申請日および実績報告日)。最低賃金は、厚生労働省が公表する地域別最低賃金額が基準となります。
詳細は、公募要領をご覧ください。
省力化投資補助金の補助対象経費
無人搬送車における省力化投資補助金の補助対象経費は、「無人搬送車の本体価格」と「無人搬送車導入にかかる費用(導入経費)」の2つです。
無人搬送車の本体価格には、無人搬送車本体の金額、それらに附随する専用ソフトウェア・情報システム等の購入に要する経費などが挙げられます。
無償提供、リース・レンタル、中古品、交付決定前に導入した無人搬送車、消費税といった租税公課などは、補助対象外です。
導入経費は、無人搬送車の運搬費、動作確認の費用、マスター設定などの導入に関する費用全般です。導入スタッフへの委託・外注費、宿泊費・交通費、そのほか導入には直接関係のない費用は対象外になります。
省力化投資補助金の補助率と補助金額
省力化投資補助金の補助金額上限は、交付申請時点での補助対象事業者の常勤従業員数によって変化します。本補助金の補助率と補助金額は次の通りです。
| 従業員数 | 補助率 | 補助上限額(大幅な賃上げを行う場合) |
| 5人以下 | 1/2以下 | 200万円(300万円) |
| 6~20人以下 | 500万円以下(750万円) | |
| 21人以上 | 1,000万円以下(1,500万円) |
無人搬送車の導入価格は、1台あたり200万〜500万円程度と言われています。21人以上の従業員がいる事業者なら、3〜5台分の費用を補助金でまかなえるでしょう。
省力化投資補助金の事業全体の流れ
省力化投資補助金の交付を受けるまでの事業全体の流れは、他の国の補助金事業と同じように進みます。
出典:公募要領
省力化投資補助金が交付されるまでの、大まかな流れは次の通りです。
- 自動倉庫の導入によって、人手不足を解消し売上や生産性が向上する事業計画書を作成する
- GビズIDの公式ホームページにて、Gビズプライムアカウントを作成する
- 電子申請受付システムを用いて、事務局へ事業計画書と必要書類を提出する
- 採択通知を受け取ったら、事務局から交付決定の通知を受けて補助事業を開始する
- 補助事業が終了後、実績報告を行い補助金の金額を確定させる
- 確定した金額を事務局へ請求し、確定金額の交付を受け取る
- 毎年の年度初めにて、効果報告を通算5年間行う
上記とは別に実地調査などが行われるケースがあります。実地調査などの事務局の指示に非協力的な場合は、補助金額の減額となる可能性があります。
省力化投資補助金を活用して導入できる無人搬送車とは?
省力化投資補助金を活用して導入できる無人搬送車とは?
2024年6月現在、省力化投資補助金を活用して導入できる無人搬送車は、「協働運搬ロボット サウザースタンダードベーシック」と「協働運搬ロボット サウザーベーシック」です。いずれも、株式会社Doogが製造しています。
サウザーシリーズは、さまざまなロボット機能と機動力を兼ね備えた、協業運搬ロボットです。
反射ラインに沿って自動走行する「ライントレース」、レーザーセンサで人などの追従対象に付いていく「自動追従」、周囲の環境を記憶して自動走行する「メモリトレース」を可能としています。
いずれも、荷台への積載120kg+牽引300kgで最大420kgの荷物の運搬が可能です。
導入をおすすめしたい企業
省力化投資補助金にて無人搬送車の導入をおすすめしたい企業は次の通りです。
- 搬送作業にかかる業務負担を軽減したい
- 既存設備や現場作業の工程を変えずに、作業動線に沿った自動運搬を取り入れたい
- 建屋間移動、狭い通路、スロープ、凹凸路で搬送設備を導入したい
- 頻繁なレイアウト変更や賃貸作業所の変更が発生する
- その他、倉庫業、製造業、卸売業、小売業で無人搬送車を求めている
おおよその価格と導入費用
省力化投資補助金の無人搬送車のおおよその価格は、1台あたり500万円程度です。カスタマイズや導入時の交渉などによって金額は前後すると考えられるので、詳細は販売事業者へ直接お問い合わせください。
活用事例・ポイント
省力化投資補助金の対象であるサウザーシリーズなら、重量物の牽引や運搬が発生する現場にて、従業員の身体的負担を大きく軽減できます。複雑な経路の倉庫や製造現場でも対応できるので、大規模施設でなくても十分に活用できます。
自動追従機能、ライントレース、メモリトレースのうち、自社に合う機能を選べるのも魅力です。
省力化投資補助金を活用して無人搬送車を導入するメリットとは?
省力化投資補助金を活用して無人搬送車を導入するメリットとは?
省力化投資補助金を活用して無人搬送車を導入するメリットは、「搬送作業の無人化の実現」「事故率の低減」「ヒューマンエラーの削減」「導入によるコスト削減」の4つが挙げられます。
搬送作業の無人化の実現
無人搬送車なら重量物の運搬・牽引を人の代わりに対応してくれるので、従業員にかかる負担を大きく軽減できます。身体的負担や時間・労力が削減できれば、運搬・牽引作業の工数を大きく削減できるでしょう。
搬送作業をすべて無人搬送車に任せられれば、作業の無人化によって従業員を他の付加価値の高い仕事へ回すこともできます。
事故率の低減
省力化投資補助金で導入できる無人搬送車には、安全機器が取り付けられます。安全機器によって事故が発生しそうなときに停止したりセンサーによって障害物を避けたりできるので、現場での事故率を低減できるでしょう。
また無人搬送車が作業を活用すれば、運搬・牽引作業による従業員の怪我といった事故も防げます。
ヒューマンエラーの削減
無人搬送車の活用によって、運搬・搬送作業を自動で任せられます。搬送ルート間違い、搬送物の落下・破損、疲労による搬送スピードの低下、注意力散漫によるその他ヒューマンエラーを防ぐことにつながるでしょう。
これらによるコスト削減
無人化の実現による人件費削減、事故率・ヒューマンエラー低減による余計なコストの削減など、無人搬送車の導入によって作業中のさまざまなコストを削減できる可能性があります。
また、従業員の残業代や社会保険料なども間接的に抑えられるでしょう。
省力化投資補助金を利用して無人搬送車を導入する方法とは?
省力化投資補助金を利用して無人搬送車を導入するには、カタログの無人搬送車の販売事業者に、事業計画書の作成を協力してもらう必要があります。
打診を受けた販売事業者は、事業計画書が要件に合致したことを確認し、事業計画策定後に共同申請を行わなければなりません。
もし事業計画実施後に目標が大きく未達、事業実態と乖離した労働生産性の向上目標の策定といった悪質なケースでは、販売事業者名が公表される可能性があります。
以上のことから考えても、販売事業者も補助金に関して積極的に協力してくれると推測できるでしょう。
事業計画は、無人搬送車によってもたらされる具体的な効果を数値化する、論理的かつ根拠ある説明を行う、補助対象経費の範囲内での支出にするといったことを意識しましょう。
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まとめ
無人搬送車の導入を検討しているのであれば、省力化投資補助金を活用することで金銭的補助を受けられる可能性があります。
「運搬・牽引作業を効率化したい」「従業員の負荷を軽減して生産性を上げたい」といった事業者向けの無人搬送車を導入できるので、ぜひ本補助金を活用してみてください。
ただし、本補助金の交付を受けるには、事務局の採択を受けられる事業計画書が必要です。
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