中小企業にとって、事業再構築補助金は新分野への進出や事業展開をする際に大きな支援をしてくれる補助金制度です。
令和5年10月をもって第11回公募が終了し、令和6年4月23日に第12回の公募要領が発表されました。今回の12回公募ではこれまでとどのような変更点があるのかを解説します。
この記事の目次
事業再構築補助金は、ウィズコロナ・ポストコロナ時代において、新市場進出、事業・業種転換、事業再編、国内回帰等の取組を通じ、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等事業者を支援する制度です。
事業を再構築するための大きなお金を支援してくれる補助金ですが、申請すれば誰でも活用できるわけではなく事務局からの審査を通過しなければ補助金を活用できません。
第12回公募でも上記の前提は変わりませんが、より一層コロナによる経営難で苦しんでいる事業者を支援する内容へと変化しました。
事業再構築補助金に申請するには、全ての申請枠に共通して以下の必須要件を満たす必要があります。
- 事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること
- 事業計画を金融機関等や認定経営革新等支援機関と策定し、確認を受けていること
- 付加価値額を向上させること
引用:事業再構築補助金 必須申請要件
その他に、それぞれの申請枠や類型ごとに指定されている必須要件があります。自社が要件を満たしているか、申請したい枠ごとに必ず事前確認しておきましょう。先述したように、第12回公募では申請枠の変更がありました。必ず最新の申請枠の公募要領を確認するようにしてください。
事業再構築補助金は従業員数が多い企業ほど受け取れる補助金の上限金額も多くなります。第12回の補助額、補助率については申請枠や類型ごとに以下のように決まっています。
成長分野進出枠(通常類型)
従業員数 | 補助上限金額 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の金額 | 補助率 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の補助率 |
20人以下 | 1,500万円(2,000万円) | 中小企業:1/2 (2/3) 中堅企業:1/3 (1/2) |
21~50人 | 3,000万円(4,000万円) |
51~100人 | 4,000万円(5,000万円) |
101人以上 | 6,000万円(7,000万円) |
参照:事業再構築補助金 必須申請要件
成長分野進出枠(GX進出類型)
企業の種類 | 従業員数 | 補助上限金額 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の金額 | 補助率 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の補助率 |
中小企業 | 20人以下 | 3,000万円(4,000万円) | 1/2 (2/3) |
21~50人 | 5,000万円(6,000万円) |
51~100人 | 7,000万円(8,000万円) |
101人以上 | 8,000万円(1億円) |
中堅企業 | – | 1億円(1.5億円) | 1/3(1/2) |
参照:事業再構築補助金 必須申請要件
コロナ回復加速化枠(通常類型)
従業員数 | 補助上限金額
| 補助率 |
5人以下 | 1,000万円 | 中小企業:2/3 (従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは 3/4)
中堅企業:1/2 (従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは 2/3) |
6~20人 | 1,500万円 |
21人~50人 | 2,000万円 |
51人以上 | 3,000万円 |
参照:事業再構築補助金 必須申請要件
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)
従業員数 | 補助上限金額
| 補助率 |
5人以下 | 500万円 | 中小企業:3/4(一部 2/3) 中堅企業:2/3(一部 1/2)
※「コロナ借換保証等で既往債務を借り換えていること」という任意要件を満たさない場合、補助率は()内の数字になる |
6~20人 | 1,000万円 |
21人以上 | 1,500万円 |
参照:事業再構築補助金 必須申請要件
サプライチェーン強靱化枠
従業員数 | 補助上限金額
| 補助率 |
– | 5億円 (建物費がない場合は3億円) | 中小企業:1/2 中堅企業:1/3 |
参照:事業再構築補助金 必須申請要件
上記のように、事業再構築補助金は非常に多額の補助金額を受け取れる可能性がある補助金です。申請枠や従業員ごとに金額が異なる点には注意してください。
事業再構築補助金の申請方法は、GビズIDプライムアカウントを取得し、「jGrants」という補助金申請システムを利用した電子申請にて行います。
GビズIDプライムアカウントは、取得申し込みから発行までおよそ2週間程度かかるので、事業再構築補助金申請を検討しているなら、早めに余裕をもって準備しましょう。
事業再構築補助金の申請〜補助金受け取りまでの以下の通りです。
- 事前確認や必要書類の準備を行い、事業計画書を作成した後に電子申請を行う
~事務局による審査(約2か月)~
- 採択通知を受け取る
- 交付申請を行う
- 交付決定後、補助金額が決定する
- 補助事業実施期間に入る
- 事業の実績報告を行う
- 確定検査を受ける
- 補助金確定通知書の確認後、補助金精算払請求書を提出する
- 補助金が振り込まれる
現在募集中の第12回公募は5/20(月)18:00 ~ 7/26(金)18:00が申請期間です。まだ準備を始めていない方は、GビズIDプライムアカウントの準備などから早めに着手しておきましょう。
事業再構築補助金は、先述した通り活用には採択される必要があります。これまでの採択率は以下の通りです。
公募 |
応募件数 |
採択件数 |
採択率 |
第1回公募 |
22,229件 |
8,015件 |
36.0% |
第2回公募 |
20,800件 |
9,336件 |
44.9% |
第3回公募 |
20,307件 |
9,021件 |
44.4% |
第4回公募 |
19,673件 |
8,810件 |
44.8% |
第5回公募 |
21,035件 |
9,707件 |
46.1% |
第6回公募 |
15,340件 |
7,669件 |
49.9% |
第7回公募 |
15,132件 |
7,745件 |
51.1% |
第8回公募 |
12,591件 |
6,456件 |
51.3% |
第9回公募 |
9,368件 |
4,259件 |
45.4% |
第10回公募 |
10,821件 |
5,205件 |
48.1% |
第11回公募 |
9,207件 |
2,437件 |
26.5% |
過去のデータから分析すると、採択率はおおよそ50%以下です。特に直近の第11回公募は大幅に採択率が低くなりました。
事業再構築補助金に採択されるのは簡単なことではないと言えるため、採択のためにはしっかりした根拠のある実現可能な事業計画書の作成などが必須です。第12回公募では、これまで以上に採択率が低くなる可能性もあります。他にも加点項目を活かすなど、採択のためのポイントをきちんと押さえて申請を行いましょう。
事業再構築補助金の第12回公募の申請期間は5/20(月)18:00 ~ 7/26(金)18:00で、公募要領が令和6年の4/23に公開されました。これまでの募集回とは申請枠等に大幅な変更がありました。以下では7つの変更点について解説します。
事業再構築補助金の第12回公募では、申請枠が3つに削減されました。成長分野進出枠とコロナ回復加速化枠はそれぞれ2つの類型に分かれています。11回公募までは6つ申請枠があったので、大幅に削減されたと言えます。
第11回までの申請枠
成長枠 | 産業構造転換枠 | グリーン成長枠 | 物価高騰対策・回復再生応援枠 | 最低賃金枠 | サプライチェーン強靭化枠 |
| | エントリー | スタンダード | | | |
第12回の申請枠
成長分野進出枠 | コロナ回復加速化枠 | サプライチェーン強靭化枠 |
通常類型 | GX進出類型 | 通常類型 | 最低賃金類型 | |
第12回公募では、今もコロナの影響を受ける事業者やポストコロナに対応した事業の再構築を目指す事業者への支援が重点化しました。
今回新設された成長分野進出枠は、ポストコロナに対応し、今後の成長が見込まれる分野への事業再構築を行う企業や、市場縮小等の課題に直面し今後の事業再構築を行う会社を支援する申請枠です。通常枠の他にGX進出類型があり、GX進出類型はグリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題解決に取り組む事業展開を行う場合に申請可能です。GX進出類型のほうが補助金額が高く設定されています。
また、コロナ回復加速化枠も第12回公募で新設された申請枠です。コロナの影響による債務の借り換えや事業再生に取り組む企業を支援する枠です。最低賃金類型はコロナ終息後に最低賃金引き上げの影響を受けている企業を支援するための類型です。最低賃金類型は、2022年10月から2023年9月の間で3か月以上最低賃金+50円以内で雇っている従業員が全体の10%以上を占めていることという必須要件があります。もしも自社が当てはまっている場合はぜひ申請を検討してみてください。
サプライチェーン強靭化枠は、ポストコロナの経済社会において、今後国内のサプライチェーンの強靱化や地域産業の活性化に取り組む企業を支援する申請枠です。補助金額は最大5億円で、かなり大きい金額を受け取れる特別枠です。今回募集されているサプライチェーン強靭化枠は第10回公募の際に募集されていたサプライチェーン強靭化枠とほとんど同じ内容です。第10回で不採択になってしまった方は、ぜひ再度チャレンジしてみることをおすすめします。
上記の成長分野進出枠とコロナ回復加速化枠は、補助金の上乗せ措置を活用することができます。卒業促進上乗せ措置と中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置があり、それぞれ企業規模を広げて中小企業からの脱却を目指す場合や、大幅な賃上げを行う場合に活用できます。
それぞれの上乗せ措置の詳しい内容は以下の通りです。
卒業促進上乗せ措置
| |
対象事業者 | ・成長分野進出枠、コロナ回復加速化枠のいずれかに申請している事業者であること ・成長分野進出枠、コロナ回復加速化枠いずれかの補助事業終了後、3~5年で中小企業や特定事業者、中堅企業の規模から卒業すること |
補助上限額 | 成長分野進出枠、コロナ回復加速化枠の補助金額上限に準じて決定 |
補助率 | 中小企業:1/2 中堅企業:1/3 |
参照:事業再構築補助金 必須申請要件
中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置
| |
対象事業者 | ・成長分野進出枠、コロナ回復加速化枠のいずれかに申請している事業者であること ・成長分野進出枠、コロナ回復加速化枠いずれかの補助事業終了後3~5年の間、事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引上げること ・成長分野進出枠、コロナ回復加速化枠いずれかの補助事業終了後3~5年の間、従業員数を年平均成長率1.5%以上増員させること |
補助上限額 | 3,000万円 |
補助率 | 中小企業:1/2 中堅企業:1/3 |
参照:事業再構築補助金 必須申請要件
企業規模を大きくしようと考えている方や、従業員の賃金引き上げを考えている方はぜひ活用してみてください。
コロナ回復加速化枠の中の二つの類型について、第12回公募ではコロナ借換要件というものが追加されました。コロナ借換要件とは「コロナ借換保証等で既往債務を借り換えていること」で、コロナ借換要件が申請時の要件の1つになりました。
コロナ借換保証等は具体的に以下のものを指します。
引用:経済産業省 事業再構築補助金第12回公募の概要
コロナ回復加速化枠では、上記のようなコロナ借換保証で債務の借り換えがあることを証明するために「コロナ借換要件・加点確認書」の提出が必要になりました。
これまでの第11回公募までは事前着手制度というものがありました。補助金への採択が決まり交付申請を行なった後、交付決定して補助金額が確定してから補助事業を開始するのが通常の流れですが、今まではこの事前着手制度を活用すれば、交付決定される前に補助事業を開始することができました。つまり、これまでは事前着手制度を利用すれば交付決定前に開始していた事業も補助金の対象になっていたのです。
しかし第12回からは、事前着手制度は以下の場合を除き原則として利用することができなくなりました。
- 第10回、第11回公募において、物価高騰対策・回復再生応援枠又は最低賃金枠の補助金交付候補者として不採択となった事業者が、第12回公募において、コロナ回復加速化(通常類型)又はコロナ回復加速化(最低賃金類型)に申請する場合
- 第10回公募において、サプライチェーン強靱化枠の補助金交付候補者として不採択となった事業者が、第12回公募において、サプライチェーン強靱化枠に申請する場合
引用:経済産業省 事業再構築補助金第12回公募の概要
上記の場合が認められる事業者は、今回も事前着手制度を活用することができます。しかし、上記はあくまでも経過措置であり、今後事前着手制度は完全に廃止されていくので注意しましょう。
第12回公募では、これまでになかったオンラインの口頭審査が審査内容に追加されることになりました。ただし、全ての申請者が対象になるわけではなく一定の審査基準を満たした事業者のみが対象です。
事業計画の内容についての審査で、事業の適格性や革新性、優位性等を観点に審査されます。1事業者あたり15分程度が予定され、もしも対象になった場合は事務局から案内が来ます。
事業再構築補助金は、採択が決まっても補助金の交付があるのは補助事業が完了した後です。そのため、実際に補助事業を開始するにあたり金融機関から資金提供を受けたい場合もあるでしょう。そのような時の要件が新たに第12回より追加されたのです。
第12回の公募でもしも資金提供を受ける場合、資金調達元となる金融機関から「金融機関による確認書」を発行してもらい、事務局へ提出しなくてはならなくなりました。もしも資金調達を行う場合、忘れずに書類の準備を行いましょう。
事業再構築補助金は、12回公募から審査にAIが導入され、より一層厳しく審査されることになりました。これまで以上に文章のコピペや使い回しはAIによって厳しくチェックされるでしょう。コピペを多用してしまうと不採択になる可能性もあります。また、書類不備等もチェックされるので、必ず正しい情報を書くようにしましょう。
さらに、同じテーマにさまざまな会社から申請が集中してしまった場合、大幅な減点になるということも公募要領に記載されています。以下は公募要領の引用です。
これまで、同じテーマで複数の事業者が採択されるケースが多くあり、同じ事業内容への過剰投資が課題になっていました。例えばフルーツサンド店の経営や無人販売機の設置、サウナやエステの開業などを目指す事業者が多く採択され、結果的にその分野への過剰投資が進む形になってしまっていました。そのため、上記のような措置が設けられたのです。
テーマ等が他の会社と被らないよう、独自性のあるテーマや内容をしっかり考えてから申請しましょう。
採択され、事業を開始したら必ず行わなければいけない事業化状況報告について、これまでは1年ごとの報告が義務付けられていました。しかし、第12回公募からは四半期ごとに報告しなければならなくなりました。
これまでは補助事業完了後から5年間、合計6回の事業化状況報告を行うのがルールでした。しかし、四半期ごとへの変更になったため、事業化状況報告の回数は24回と大幅に増えました。採択者の負担がこれまでよりもかなり増えるでしょう。事業化状況報告をしなかった場合は補助金の返還を求められてしまうため、必ず行う必要があります。
事業化状況報告の回数が多くなったため、必ず計画性を持って行うようにしましょう。
第11回公募の採択率は大幅に下がりましたが、第12回公募でも採択難易度は上がると予想されています。では、第12回公募の事業再構築補助金に申請する際のポイントを解説していきます。
第12回公募の申請ポイントとして、より独自性の強い事業計画が求められるでしょう。
以前、外部有識者から指摘されていた内容ですが、第10回公募では、ゴルフ・サウナ・エステに関するほぼ同様の事業計画の申請者がどちらも採択されていたことがありました。このように、似たような事業計画の申請者が複数採択されている件が問題視されている状況です。
そのため、第12回公募ではより独自性をアピールできる質の高い事業計画書の作成が求められるでしょう。他社と似たような事業内容だと、不採択になってしまうかもしれません。内容やテーマについても、自社の独自性を出していけると良いでしょう。
参考:日刊工業新聞
また、もちろんコピペや使い回しの文章はNGです。先述したように、AI導入で審査が厳格化される予定です。しっかり考えた文章で事業計画を作成しましょう。経営者本人の独自の視点で事業計画を作成していくのが大切です。
事業再構築補助金の第12回公募では申請者が増加し、より質の高い事業計画が求められるでしょう。その場合、競争率の高い公募になることが予想されます。他事業者と差別化し、自社の評価を高めるためにも積極的に加点項目の獲得を行なっていくのが良いでしょう。
健康や女性活躍のえるぼし、子育て認定のくるみんマークの取得などの認定を受けていれば重要な加点項目となります。
さらに大幅な賃上げを実施する事業者は賃上げの幅が大きいほど追加で加点されます。事業再構築補助金に申請する事業者は、自社の取り組みが加点項目に該当するか必ず確認しましょう。
また、今回よりコロナ借換加点が項目に追加されました。コロナ借換加点も確認し、もしも当てはまる場合は資料を準備しきちんと提出しましょう。
参考:事業再構築補助金 公募要領
事業再構築補助金の事業計画の審査では、事業における独自性の高さだけではなく、事業の成長性や収益性も大変重視されています。
コロナ渦期間に重視された事業の安定性や存続可能性よりも、第12回公募からは思い切った事業再構築により経済の活性化を促す中小企業の成長性や収益性を重視する方向にシフトしています。今後の成長性や収益性をしっかりアピールできる事業計画書の作成を目指しましょう。
事業再構築補助金の第12回公募の事業計画では、独自性に加えて成長性や収益性の高さが求められます。それらを事業計画書で示す時、必ず明確な根拠を提示して説明するようにしましょう。
市場のマーケティング調査や、補助事業で提供する商品やサービスのビジネスモデルなどの明確な根拠となるデータを用いるのがおすすめです。事業内容を中長期で実現できるということをしっかり示しましょう。
また費用対効果や、既存事業とのシナジー効果、想定の収益金額などの詳細も記載し、独自性・成長性・収益性に具体性を持たせ、審査員に事業計画を印象付けることがポイントです。
株式会社補助金プラスでは補助金申請の支援サービスを提供しています。多くの事業者様が補助金を有効活用し、新規事業や事業転換等の実現ができるようにお手伝いをしています。
現在、第12回事業再構築補助金に申請したい事業者様の支援を受け付けています。株式会社補助金プラスの主な特徴は以下の通りです。
事業再構築補助金の第12回公募に申請し、採択されるポイントを押さえた事業計画書を作りたい!という事業者様はぜひ株式会社補助金プラスにお問い合わせください。
事業再構築補助金の第12回公募は、申請枠の見直しなど様々な変更が入りました。多額のお金を補助してくれる制度なので、これまで以上に採択難易度が高くなると予想されています。
第12回公募事業再構築補助金への申請を考えている方は、しっかりと変更点を確認して対策をしておきましょう。