【2024.2】ものづくり補助金の加点項目「事業継続力強化計画」とは?BCPとの違いは?

ものづくり補助金 BCP

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※記事は作成時の公募要領をもとに作成しているため最新の情報と異なることがございます

BCPとは、事業継続計画のことを指します。事業者が「事業継続力強化計画」を策定して認定されている場合、ものづくり補助金の審査において加点され、また補助金以外にも金融支援や税制優遇等を受けることができます。

この記事では、事業継続力強化計画についての概要や、事業継続計画(BCP)との差異、具体的な策定と認定の流れについて解説します。

この記事を読むと
  • 事業継続力強化計画と事業継続計画(BCP)の違いがわかる
  • 事業継続力強化計画を作成するメリットがわかる
  • 事業継続力強化計画の対象事業者がわかる
  • 事業継続力強化計画の取得の流れが把握できる
この記事の目次

事業継続力強化計画と事業継続計画(BCP)の違いは?

ものづくり補助金 事業継続力強化計画

「事業継続力強化計画」と似た用語として、「事業継続計画(BCP)」があります。

実は両者は基本的な部分では共通しており、どちらも自然災害などの緊急時における事業者の対応をあらかじめ決定しておくという趣旨で制定される計画です。しかしながら「事業継続力強化計画」と「事業継続計画(BCP)」は主に二つの点で異なります。

一つ目の差異は、国によって制度化されたものであるか否かです。

前者の「事業継続力強化計画」は、中小企業や小規模事業者を対象として経済産業省が認定するもので、認定されれば補助金の加点措置、特定金融機関からの融資における優遇、防災設備に関する税制優遇など多数の恩恵を受けられます。また、計画の作成にあたっては経済産業省がフォーマットを用意しており、それに従って策定を進めることができます。

これに対し、「事業継続計画(BCP)」は各企業が自主的に策定を進めるものであって、国等からの認定制度はありません。またフォーマットに関しての制約もなく、各社が自由に計画を策定できます。

二つ目の差異は、計画の具体的な内容についてです。

「事業継続力強化計画」は、緊急時に発生しうるトラブルの想定や、事前対策の実施、基本的な初動対応方針などを主に定めるものです。

これに対し「事業継続計画(BCP)」は、復旧業務の詳細な内容や、被害発生時にも事業を継続するための財務体制の構築、訓練の実施など、事業継続力強化計画よりも具体的かつ発展的な内容を策定するものである場合が多く、中小企業が策定するにはややハードルの高いものとなっています。

すなわち、「事業継続力強化計画」は「事業継続計画(BCP)」のより初歩的な形態であるとも言えます。実際に経済産業省としても「事業継続力強化計画」は「事業継続計画(BCP)」の基本的な部分を抽出したもので、「事業継続力強化計画」の作成は事業者の危機対応力を高める第一歩であると位置づけています。

ですので、「事業継続力強化計画」に続いて「事業継続計画(BCP)」を策定するのも合理的ですし、逆にすでに「事業継続計画(BCP)」を策定している事業者はそれを「事業継続力強化計画」のフォーマットに合わせて認定を受けるだけで、補助金の加点等の優遇を得ることができます。

事業継続力強化計画を作成するメリットは?

ものづくり補助金 事業継続力強化計画

ここでは、事業継続力強化計画の策定にはどのような利点があるかを解説します。

事業継続力強化計画を作成するメリットは?

金融支援

事業継続力強化計画の認定を受けると、各種金融機関から利率の優遇、保証枠の拡大、スタンドバイクレジット等の各種優遇措置を受けることができます。

第一に、事業継続力強化計画の認定を受けた事業者は、その計画の実施にあたって日本政策金融公庫から、基準利率から0.9%低い利率での融資を受けることができます。なお、この際の貸付限度額は7億2000万円となりますが、利率の優遇を受けられるのはそのうち4億円までの部分に限られます。更に限度額7億2000万円の内2億5000万円までの部分は、計画の実施ではなく運転資金の名目で融資してもらうことも可能ですが、その部分についても利率の優遇はありませんのでご注意ください。

また、当然ながら融資に際しては日本政策金融公庫による審査がありますので、認定を受けたからといって必ず融資を受けられるわけではありませんから、その点についても注意が必要です。

第二に、事業継続力強化計画の認定を受けた事業者は、信用保証協会からの信用保証において、通常枠とは別の特別枠が割り当てられたり、保証枠が拡大するなどの優遇を受けることができます。具体的には、普通保険なら2億円、無担保保険なら8,000万円、特別小口保険なら2,000万円の別枠が追加されます。更に、新事業開拓保険なら従来2億円の保証枠が3億円まで、海外投資関係保険なら従来2億円の保証枠が4億円まで拡大されます。

第三に、事業継続力強化計画の認定を受けた事業者は、その海外支店や海外子会社が海外金融機関から受ける融資について、日本政策金融公庫からの債務の保証を受けることができます。ただしこの「海外金融機関」は日本政策金融公庫と提携関係にあるものに限られます。また、保証の限度額は4億5000万円となっています。

ものづくり補助金等における加点

事業継続力強化計画の認定における主要な利点の一つとして、ものづくり補助金の審査時に加点を受けられることが挙げられます。

ものづくり補助金の公募要領においては「有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者」について加点するとされており、はっきりと加点対象となっていることが読み取れますが、ここで注意しなければならないのが「有効な期間の」という記述です。

つまり、加点を受けるには「すでに認定を受けた」事業継続力強化計画の実施期間中である必要があります。事業継続力強化計画の認定には非常に時間を要しますので、ものづくり補助金における加点を狙う方は、各種計画をなるべく早く準備することをおすすめします。

税制優遇

上記に加えて、防災設備の導入に関する税制優遇も事業継続力強化計画の恩恵として挙げられます。

具体的には、青色申告書を提出する「中小企業者※」が「その認定を受けた日から同日以後1年を経過する日」までに、計画で導入する予定の「対象設備※」を実際に取得運用している場合に、その設備について20%の特別償却(令和5年4月1日以後に取得する場合は特別償却18%)という税制優遇を受けることができます。

※ここでいう中小企業者とは…

・「資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人」

・「資本又は出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人」

・「事業協同組合、協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、商店街振興組合」

・「常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主」

であって、みなし大企業ではないものをいいます。

※ここでいう対象設備とは…

⇒ 自然災害や感染症が発生した場合に、それらの事業活動への影響を軽減させる減価償却資産であって、100万円以上の「機械及び装置」、30万円以上の「器具及び備品」、60万円以上の「建物附属設備」に該当するものを指します。

具体例としては、「機械及び装置」ならば自家発電設備、「建物付属設備」ならば防水シャッター等が挙げられます。より詳細な定義および例示は中小企業庁による「事業継続力 強化計画認定制度の概要」に記されていますので、そちらをご覧ください。

事業継続力強化計画の対象となる事業者は?

ものづくり補助金 事業継続力強化計画

事業継続力強化計画の認定制度は、中小企業の防災・減殺施策を支援する目的で設けられたものですから、当然として対象も中小企業と一部の連携企業に限られます。

より具体的に説明すると、業種によって異なる資本金と常勤従業員数の要件があり…

・製造業その他:資本金3億円以下または従業員数300人以下
・卸売業:資本金1億円以下または従業員数100人以下
・小売業:資本金5,000万円以下または従業員数50人以下
・サービス業:資本金5,000万円以下または従業員数100人以下
・ゴム製品製造業:資本金3億円以下または従業員数900人以下
・ソフトウェア・情報処理サービス業:資本金3億円以下または従業員数300人以下
・旅館業:資本金5,000万円以下または従業員数200人以下

の企業が対象となります。

※ここでいう「製造業その他」は、自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除きます

また、これら以外にも個人事業主や、各種組合(企業組合、協業組合、事業協同組合など)が対象となりますが、個人事業主については上述した資本金と常勤従業員の要件を満たす必要があります。

更に、ここで述べた「事業継続力強化計画」の対象事業者の要件は、先ほど解説した「税制優遇」の要件とは異なっており、事業継続力強化計画の対象となっても税制優遇の対象とはならない場合がありますので、ご注意ください。

事業継続力強化計画の取得の流れは?

ものづくり補助金 事業継続力強化計画

ここでは、事業継続力強化計画の具体的な策定、申請、取得方法について解説します。

事業継続力強化計画の取得の流れは?

事業継続力強化計画の策定

事業継続力強化計画の具体的な策定手順は中小企業庁により示されていますので、ここではその記載を基に策定手順を解説します。事業継続力強化計画には、複数事業者間で連携して策定、申請する「連携型」もありますが、ここでは原則である「単独型」の策定について解説します。

まず、計画策定にあたっては現在の状況を整理検討して、その検討内容の概略を計画の冒頭に記載する必要があります。

第一に検討することとされているのが「事業継続力強化の目的」です。目的とは、すなわち「どのような理由で、どのような業務を継続する必要があるのか」ということです。この際、「地域の経済社会に与える影響の軽減」という観点からの分析を含めることも重要とされています。また、ここで対応すべき「災害」については、感染症やサイバー攻撃等も含めて検討することが求められています。

次は、災害等のリスクの確認と認識です。ハザードマップ等を参考にして「ヒト(人員)」「モノ(建物・設備・インフラ等)」「カネ(リスクファイナンス等)」「情報」などの観点から、自社に生じうる被害がどのようなものになるか検討します。

更に、災害発生時にどのような初動対応を取るべきかを検討します。初動対応としては、原則として「人命の安全確保」「緊急時体制の構築」「情報収集及び共有」が求められ、計画においても必ずこれらに関する記載が必要です。

そして、災害発生時の被害を軽減するにあたってどのような事前対策を施せばよいかや、平時にどのような訓練を実施するかについても検討することが求められます。

一通り検討が完了したら、その検討内容を基に計画を策定します。

原則としては、上で検討した内容に照らして「災害が発生した場合に生ずる脆弱性」⇒「対策内容」を具体化して記載していくことになります。

主な記入項目としては

・「自然災害等が発生した場合における対応手順(初動対応)」
・「事業継続力強化に資する対策及び取組」
・「平時の推進体制の整備、訓練及び教育の実施その他の事業継続力強化の実効性を確保するための取組」
・「実施期間」
・「事業継続力強化を実施するために必要な資金の額及び調達方法」

等があります。

「事業継続力強化に資する対策及び取組」については更に「自然災害等が発生した場合における人員体制の整備」「事業継続力強化に資する設備、機器及び装置の導入」「事業活動を継続するための資金の調達手段の確保」「事業活動を継続するための重要情報の保護」など、より詳細な記載が要求されており、計画中で最も重視される部分であることが伺えます。

事業継続力強化計画の申請

事業継続力強化計画は、単独事業者で策定申請する「単独型」と、複数事業者間で連携して策定申請する「連携型」で分かれており、それぞれ申請方法が異なります。

単独型の場合、「事業継続力強化計画電子申請システム」からオンラインで申請することになります。この際、GビズIDアカウントが必要となり、この作成にも2週間程度を要するので注意が必要です。

連携型の場合、各事業者の代表の所在地を管轄する経済産業局に対し、各種書類を郵送して申請することとなります。各申請先についての詳細は後述します。

事業継続力強化計画の認定

事業継続力強化計画の申請後、特に記載内容に不備がなければ認定を受けることができ、上述したような様々な恩恵に与ることができます。しかしながら、この認定手続きは非常に長い時間を要します!

申請から認定まではおよそ45日かかるとされており、記載内容によっては審査期間がより長くなることもあります。この事業継続力強化計画をものづくり補助金の加点事由として利用する場合、ものづくり補助金の申請時点までに認定を受けている必要がありますから、ものづくり補助金での加点を目指す方は、特にこの点に留意する必要があります。

事業継続力強化計画の提出先まとめ

ものづくり補助金 事業継続力強化計画

単独型で申請する場合は、「事業継続力強化計画電子申請システム」において申請します。

連携型で申請する場合の申請先は、代表事業者の所在地によって異なります。

・北海道⇒
北海道経済産業局 中小企業課 
〒060-0808
北海道札幌市北区北8条西2-1-1 札幌第1合同庁舎 
011-709-1783

・青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島⇒
東北経済産業局 中小企業課 
〒980-8403
宮城県仙台市青葉区本町3-3-1 仙台合同庁舎(B棟) 
022-221-4922

・茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、長野、山梨、静岡⇒
関東経済産業局 中小企業課 
〒330-9715
埼玉県さいたま市中央区新都心1-1 さいたま新都心合同庁舎1号館 
048-600-0394

・愛知、岐阜、三重、富山、石川⇒
中部経済産業局 中小企業課 
〒460-8510 
愛知県名古屋市中区三の丸2-5-2
052-951-2748

・福井、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山⇒
近畿経済産業局 中小企業課 
〒540-8535 
大阪府大阪市中央区大手前1-5-44 
06-6966-6119

・鳥取、島根、岡山、広島、山口⇒
中国経済産業局 中小企業課 
〒730-8531
広島県広島市中区上八丁堀6-30 広島合同庁舎2号館 
082-224-5653 

・徳島、香川、愛媛、高知⇒
四国経済産業局 産業振興課 
〒760-8512
香川県高松市サンポート3-33 高松サンポート合同庁舎
087-811-8566

・福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島⇒
九州経済産業局 経営力向上室 
〒812-8546
福岡県福岡市博多区博多駅東2-11-1
092-482-5561

・沖縄⇒
沖縄総合事務局 中小企業課 
〒900-0006 
沖縄県那覇市おもろまち2-1-1 
098-866-1755

ものづくり補助金における加点の効果

ものづくり補助金 事業継続力強化計画

最後に、ものづくり補助金における加点の重要性について解説します。

下の図は、ものづくり補助金の加点項目の多さと採択率の関連性を示すものですが、加点事由が多いほど採択率が高くなり、4点の加点項目がある事業者の採択率は86.7%に達しています。これはものづくり補助金の採択率がおおよそ50〜60%で推移していることを考えると驚異的な数値です。

※加点項目5点に該当する事業者については、そもそも申請数が極めて少ないことから、統計上度外視可能であると思われます。

これを考えると、事業継続力強化計画の認定を受けることによって、ものづくり補助金の加点を目指すのは十分に合理的であると言えます。ものづくり補助金の採択と事業継続力強化計画を並行して目指す場合は多様な作業、検討が必要となりますから、支援者などと相談して進めることをおすすめします。

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