【2024.2】医療法人はものづくり補助金の対象外!個人クリニックは使えるが注意点も
ものづくり補助金は、医療法人に利用できるのかと疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。基本的に、医療法人はものづくり補助金申請の対象外です。
この記事では、ものづくり補助金の概要や医療法人等のクリニックにおける活用事例について解説していきます。
- ものづくり補助金を医療法人事業に活用するときの条件が分かる
- ものづくり補助金のクリニックでの活用例を知れる
- 医療法人事業で活用するときの注意点が分かる
ものづくり補助金の概要
医療法人等のクリニックへの活用事例を見ていくまえに、ものづくり補助金の概要について説明していきます。
ものづくり補助金の概要
ものづくり補助金とは?
ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者が新たな製品やサービスを開発する際に、国から一部の費用を補助してもらえる制度です。この制度の目的は、イノベーションを促進し、国内の産業競争力を高めることにあります。
なお、ものづくり補助金の対象となる事業は以下のような条件を満たす必要があります。
満たすべき要件
・新規性:既存の製品やサービスとは異なる付加価値を提供すること
・高度性:最先端技術や知的財産を活用すること
・実用性:市場ニーズに応えること
・持続性:環境や社会に配慮すること
ものづくり補助金の申請方法や審査基準などは、毎年公募要領によって異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。医療法人やクリニックでもものづくり補助金を活用するために、要件をしっかり把握しましょう。
ものづくり補助金ではいくら受け取れる?
ものづくり補助金で受け取れる金額は、以下のとおりです。
申請枠 | 補助上限 | 補助率 | |
省力化枠 | 750万円~ 8,000万円 | 1/2 (小規模・再⽣事業者:2/3) | |
製品・サービス高付加価値枠 | 通常類型 | 750万円~ 1,250万円 | 1/2 (小規模・再⽣事業者:2/3) ※新型コロナ回復加速化特例:2/3 |
成長分野進出類型(DX・GX) | 1,000万円〜 2,500万円 | 1/2 (小規模・再⽣事業者:2/3) | |
グローバル展開型 | 3,000万円 | 1/2 (小規模・再⽣事業者:2/3) |
補助金の金額は、事業規模や内容、申請枠によって異なります。一般的には、補助対象経費の1/2以内で、上限は8,000万円、それ以上の金額は自己負担となります。医療法人だからとは関係なく、補助金を受け取るためには、事前に申請書や事業計画書を提出し、審査を受けなければなりません。
審査では、事業の目的や効果、技術的な内容や経済性などが評価されます。補助金は、事業が完了した後に支払われますが、途中で中間報告や検査をおこなうこともあります。
引用元:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金について
ものづくり補助金の採択率は?
ものづくり補助金の採択率は、申請件数や審査基準によって異なりますが、一般的には40%〜60%程度といわれています。ものづくり補助金の申請には専門家による厳しい審査を受けなければならないため、採択されるためには高い品質と独創性が求められます。
医療法人はものづくり補助金を受け取れる?
ものづくり補助金の対象可否はクリニックが医療法人であるか、個人経営であるかが重要なポイントになります。
医療法人はものづくり補助金を受け取れる?
医療法人は補助対象外
医療法人が運営する病院や歯科医院は、ものづくり補助金の対象外です。ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者のものづくり能力を高めることを目的とした補助金制度になります。
医療法に基づいて設立された医療法人の事業は上記の目的に沿わないとともに、補助金の支給要件も満たしません。よって、医療法人はものづくり補助金を受け取ることはできません。
個人事業主等の個人クリニックは補助対象
医療法人ではなく、医療業を個人で開業している方はものづくり補助金の対象となります。個人クリニックや歯科医院などの医療業は、医療機器の導入やスタッフの研修などにものづくり補助金を活用できます。
クリニックがものづくり補助金を活用する際の注意点
医療法人でなくても、クリニックがものづくり補助金を活用する際には、いくつかのポイントに注意する必要があります。場合によっては事業自体がものづくり補助金の対象にならないこともあるため、資格や要件をあらかじめ確認しておくようにしましょう。
保険収入のある事業は対象とならない
医療法人ではない場合でも各種保険料など、保険収入のある事業はものづくり補助金の対象外です。公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等との重複がある事業を申請する事業者は補助対象とならないと、ものづくり補助金の公募要領でも記載されています。
新サービスの提供や既存サービスの改善を行う必要がある
クリニックにおいて、対応患者数を増やすために機械の台数を単に増加させるなどはものづくり補助金の対象外となります。何かしらの新規サービスの提供もしくは既存サービスの改善を新たに行う必要があります。
また、購入済みの設備にも適用することができないため、注意が必要です。
クリニックでのものづくり補助金の活用事例
クリニックでのものづくり補助金の活用事例
診療の精度を上げる高性能な機器の導入
企業名:櫻場デンタルクリニック
新型高精度スキャンシステム導入によって、治療時間を大幅に短縮した事例です。
従来の治療法だと来院回数も多く治療時間も長くなるため、小児や高齢者には負担が大きくなるという課題がありました。新型高精度スキャンシステム導入により、即日治療が可能となり年齢問わず、安全・安心で質の高い治療をおこなうことができるようになったのです。
また、歯の詰め物などの修復物の作製も院内で実現しました。
患者の予約や待ち時間を減らすシステムの開発
企業名:アイ・ティ・エス株式会社
スマートフォンやタブレットなど、問診票をクラウド経由でどこからでも簡単に入力できる仕組みを開発した事例です。
これまでのクリニックでは待ち時間が長く、問診票の記入にも時間がかかるというのが大きな課題となっていました。しかし、システム導入によって、クリニックに行く前に問診票を記載することができ、大幅な時間短縮が可能になったのです。
これによって、待ち時間短縮だけでなく、医療サービス向上も実現しました。
睡眠習慣改善や季節性感情障害緩和のための装置の開発
企業名:株式会社電制
目に高照度の光を当てて、体内時計を整える装置を開発した事例です。
これまでの日常生活においては夜間勤務や時差ぼけ、日照不足など体内時計や自律神経の乱れが課題となっていました。この課題を解決するために、メガネのように装着できる利便性や目への安全性を確保しながら、装置の開発を実現したのです。
体内時計を調整しながら朝と夜のメリハリをつけて、高齢者の夜中の徘徊も防げるということで、介護業界でも注目を集めています。
簡易的なガンのスクリーニングを可能にする装置の導入
企業名:株式会社レナテック
1度に150人の血清中の微量金属イオンを自動で測定できる装置を導入した事例です。
これまでのガン検診は非常に手間がかかり、日本におけるガン検診率を下げているのが課題となっていました。この装置を導入したことで、17種類の血中微量元素のバランスから、わずかな採血でさまざまな種類のガンを検査できるようになったのです。
クリニックの負担も減り、検診のハードルが下がったことで受診者数は年間1万人を達成しました。
患者の状態に合わせた高度な治療の実現
企業名:きけがわ歯科医院
睡眠時無呼吸症候群患者に合わせて最適なマウスピースを製作するための装置やソフトを導入した事例です。
以前から睡眠時無呼吸症候群の治療にはマウスピースが使われてきましたが、マウスピースを1度製作してしまうと治療の進行度によって微調整できないといった課題がありました。装置やソフトを導入したことで、0.1ミリ単位でのネジによる微調整が可能になり、治療の進行度に合わせて形を変えることができるようになったのです。
さらに、患者自身での調整も可能にしています。また、最適なマウスピースの形も検討できるようになり、効果の最大化も実現しました。
まとめ
この記事では、医療法人等のクリニックにものづくり補助金を活用する方法について解説しました。
クリニックにおけるものづくり補助金は、医療法人なのか個人なのかによっても対象要件が異なります。個人経営のクリニックでものづくり補助金の利用を検討している場合は、この記事の採択事例を参考にしながら、ぜひ申請をおこなってみてください。