【2024.2】NPO法人もものづくり補助金の対象となる!注意点とポイントは?
中小企業などが申請できるものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、NPO法人(特定非営利活動法人)も対象になります。営利活動ができない中、公益性ある事業をさらに広めたいNPO法人にとって、貴重な資金調達方法になります。
一般的な事業者とは異なる補助率の適用や手続き方法になるので、事前に確認しておきましょう。当記事では、NPO法人のものづくり補助金について解説します。
ものづくり補助金とは?
NPO法人が対象になるものづくり補助金も、原則は通常の法人と同じ目的の下で支給されます。提出した事業計画書やその他提出書類などを事務局が審査し、採択を受ければ原則として交付されます。
過去に採択されたNPO法人の例は次の通りです。
ものづくり補助金の採択を受けたNPO法人 | 事業内容 |
---|---|
NPO法人VYS YOGI | テラヨガ事業のシステム化 |
NPO法人教室ICT実践会 | プログラミング的思考を養う小・中学生向け演習教材の高度化開発 |
特定非営利活動法人しんりん | 環境負荷の軽減も踏まえた間伐材の伐採促進事業 |
以下では、ものづくり補助金の概要について解説します。
ものづくり補助金の概要
ものづくり補助金とは、中小企業・小規模事業者などが今後複数年にわたって相次いで直面する法改正・制度変更に対応するため、革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行い、生産性を向上させる設備投資を行う事業者を支援する制度です。
上記の目的は、NPO法人においても同じです。上記目的や基本要件などをクリアした事業計画や、適格な実績・信用度などを持つことが採択条件になります。
例えばNPO法人で「子どもの教育用の教材・プログラムをグレードアップしたい」「地元の町興しのためにデジタルを活用した広告宣伝・業務改善をしたい」といった場合に、ものづくり補助金を活用できます。
ものづくり補助金の補助率と最大金額は?
ものづくり補助金の通常枠で申請した場合、原則として補助率は2分の1、補助金額(従業員数21人以上の場合)は最大1,250万円です。一方でNPO法人の場合、従業員が20人以下だと補助率が3分の2に上がります。
同じくグローバル市場開拓枠も、従業員20人以下のNPO法人であれば補助率が2分の1から3分の2に上がります。その他の枠については、通常の法人と同様の補助率です。
NPO法人もものづくり補助金の対象
NPO法人がものづくり補助金に申請をする場合、普通の法人とは異なる要件をクリアする必要があります。以下ではNPO法人を含めた事業者が、ものづくり補助金の申請のために満たすべき要件を解説します。
ものづくり補助金の申請のために満たすべき要件
ものづくり補助金の申請のために満たすべき要件は、主に企業規模と基本要件の2つです。
満たすべき企業規模は、中小企業等経営強化法第2条第1項に規定されている中小企業者に該当するか否かです。業種ごとに定められた、一定以下の資本金または常勤従業員数である事業者が該当します。
なおNPO法人の場合は、上記表とは別の企業規模要件が設定されています。また、特定事業者や組合も、別の企業規模要件が定められています。詳細はものづくり補助金の公募要領をご覧ください。
次に基本要件とは、次の要件を満たした3〜5年の事業計画を策定することです。
- 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
- 事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内でもっとも低い賃金)を、毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準にする
- 事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加させる
さらに、公募要領に書いてある加点項目を満たした事業計画であれば、採択の審査時に事務局からプラス評価され、採択される可能性が上がります。また、一般枠の通常枠以外(デジタル枠やグリーン枠など)を申請する場合は、申請する枠に応じた追加要件のクリアが必要です。
その他細かい要件は、ものづくり補助金の最新の公募要領をご覧ください。
ものづくり補助金の申請のためにNPO法人が満たすべき要件
NPO法人がものづくりを申請するには、通常の法人とは別の企業規模要件を満たす必要があります。ものづくり補助金の申請対象となる、NPO法人の事業規模およびその他の要件は次の通りです。
- 広く中小企業一般の振興・発展に直結し得る活動を行うNPO法人
- 従業員数が300人以下
- 法人税法上の収益事業(法人税法施行令第5条第1項に規定される34事業)を行うNPO法人
- 認定NPO法人(所轄庁から一定基準を満たしたと認定された、税制優遇措置を受けられるNPO法人)ではない
- 交付決定時までに補助金の事業に係る経営力向上計画(経営革新等支援機関のサポートを受けて策定した、自社の経営力を向上するために実施する計画)の認定済み
例えば経営力向上計画の認定や収益事業の実施などの要件を満たしても、認定NPO法人の場合はものづくり補助金の対象外になります。
なお基本要件や通常枠以外の一般型枠・グローバル市場開拓枠の要件については、通常の法人と変わりません。
NPO法人がものづくり補助金に申請する際の注意点は?
NPO法人がものづくり補助金を申請する場合、企業規模の要件と同じく通常の法人とは異なる部分があります。NPO法人がものづくり補助金の申請をする際の注意点として、提出書類や補助率の算出方法の違いを解説します。
提出書類が通常の法人と異なる
ものづくり補助金を申請する際には、事業計画書や補助経費に関する誓約書、賃金引き上げ計画の誓約書、従業員数の確認書類などが必要です。通常の法人の場合、貸借対照表や損益計算書などの決算書等を提出します。
一方でNPO法人の場合は、損益計算書の代わりに活動計算書の提出が必要です。
活動計算書とは、通常の法人における損益計算書に該当する書類です。収益から費用を差し引き、当期正味財産増減額を算出します。
NPO法人は営利企業のように「収益を出すために経費を使う」という考え方ではなく、「活動にかかった経費をどのような収益で補ったか」という考え方になることから、損益計算書ではなく活動計算書を作成し財政状況を報告します
補助率の算出方法が異なる
従業員が20人以下のNPO法人だと、ものづくり補助金一般枠の通常枠と、グローバル市場開拓枠の補助金が2分の1から3分の2に増加します。つまり同じ金額の経費でも、当該枠だと補助金の交付額が増える可能性があります。
補助金の交付額の計算式は、「事業に使用した経費×補助率」です。枠ごとに定められた上限額まで支給されます。例えば補助事業で1,500万円の経費がかかった場合、交付額に以下の違いが生まれます。
- 1,500万円×1/2=750万円
- 1,500万円×2/3=1,000万円
NPO法人がものづくり補助金に採択されるためのポイントは?
NPO法人がものづくり補助金に採択されるためのポイントは、「新規性の高い事業を行う」「競合分析を徹底的に行う」の2点です。NPO法人は営利企業と比較して採択数が少ないので、しっかりとポイントを押さえて申請しましょう。
新規性の高い事業を行う
ものづくり補助金の目的に「革新的な商品・サービスの開発」とあるように、ものづくり補助金は新規性の高い事業を高く評価する傾向があります。NPO法人も例外ではありません。
既存事業との違いや、従業員に与える具体的な効果を定量的・定性的に示せるようにしましょう。NPO法人の場合、グリーン枠など申請数が少なくかつ事業内容と相性がよい枠へ申請するのも1つの手です。
競合分析を徹底的に行う
ものづくり補助金の審査項目の1つに、「事業化に向けて、市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か」があります。また、新規性の高い事業を企画するには、競合のNPO法人の特徴・強み・弱みを分析し、自法人事業の優位性や独自性を洗い出す必要があります。
そのため、NPO法人がものづくり補助金を申請する際は、競合分析を徹底的に行いましょう。競合分析は採択率の向上に加え、自法人の活動状況や業務フローの問題点抽出・改善に役立ちます。
まとめ
NPO法人はものづくり補助金の対象になるため、補助金による事業拡大・業務プロセス改善などが可能です。NPO法人の場合の提出書類や補助率は、通常の法人と異なる面があるものの、補助金受取までの流れはほとんど同じになります。
事業計画書や分析内容の充実が、採択を受けるためのポイントです。申請前の準備が結果を大きく左右するので、しっかりと対策を講じましょう。