省力化投資補助金とは、令和5年の補正予算にて新しく設立された、中小企業・小規模事業者を対象にした国の補助金制度です。「人材不足問題を解消したい中小企業等の、IoTやロボットへの省力化投資」を、最大1,500万円支援します。
本補助金の特徴は、製品カタログに登録された製品の購入や導入にかかる費用のみを補助するという点です。一定の要件を満たしたうえで事務局の審査に通過できれば、その製品はカタログへ登録されます。
自社製品が省力化投資補助金のカタログに登録されれば、本補助金の交付を受けたい事業者からの製品注文につながり、売上拡大やブランド力向上を見込めるでしょう。つまり、補助金の交付を受ける者だけではく、販売事業者や製造事業者の利益にもつながる補助金制度となっています。
本記事では、省力化投資補助金の省力化製品・製造事業者のカタログ登録方法について解説します。
中小企業や小規模事業者が活用できる省力化投資補助金とは、令和5年度からの3年間を変革期間とすることを踏まえて、中小企業や小規模事業者などの売上拡大・生産性向上を後押しするため、人手不足に悩んでいる事業者がIoT、ロボット、その他システムなどの人手不足解消に効果がある汎用製品を導入するための事業費等の一部を補助することにより、省力化投資を促進して中小企業等の付加価値額や生産性向上を図るとともに、賃上げにつなげることを目的にした補助金制度です。
本補助金の大きな特徴は、「事前にカタログに登録された製品の購入や導入にかかる費用のみが、補助対象になる」という点です。カタログに載っていない製品関係の経費は、省力化補助金の対象外となります。
出典:省力化製品・省力化製品製造事業者登録要領
製品をカタログに登録する際は、指定された工業会等に対して「製品登録審査申請」を行い、取り扱っている製品が「省力化に資するか」「費用対効果がよいのか」などを審査されます。審査にて承認されれば、カタログへ製品を登録する手続きに進みます。
当然ながら、省力化投資補助金の補助事業実施のために購入された製品の売上は、販売事業者の利益となります。省力化投資補助金の申請で自社製品が選ばれるほど、売上の向上につながります。
このように本補助金は、補助金の交付を受ける側と補助金対象となる製品を提供する側のいずれも、金銭的メリットがある制度だと言えるでしょう。
以下では、まず基本となる省力化投資補助金の交付を受ける事業者側の概要を解説します。
省力化投資補助金の対象となる事業とは、現に人手不足に悩んでおり、省力化によって人手不足の問題の解消や一定の労働生産性の向上を達成できる事業計画を策定できるものです。
具体的には、基本要件、採択における要件、人手不足に関する事項の3つを満たした事業が、補助対象事業となります。
以下では、詳細を見ていきましょう。
基本要件には、必須項目となる「労働生産性の向上目標」と、達成することで補助金額50%引上となる追加項目「賃上げ要件」があります。
労働生産性の向上目標とは、「補助事業終了後の3年間、1年ごとに申請時と比較して労働生産性を年平均成長率(CAGR)3%以上向上させること」です。
賃上げ要件は、「事業場内最低賃金を45円以上増加させること」と「給与支給総額を6%以上増加させること」のどちらも満たすことです。
労働生産性の計算式や賃上げ要件の詳細は、公募要領をご覧ください。
省力化投資補助金には、申請に際して満たしておくべき基本的な要件が定められています。1つでも満たせないと事務局からの採択を受けられないので注意しましょう。採択における要件は次の通りです。
「自社が人手不足であるという客観的事実」を証明することで、補助対象事業の対象となる事業計画として認められます。公募要領にて定められてた、人手不足の事業者であるという証拠は以下の通りです。
- 人手不足によって、従業員の残業時間が平均30時間超となっている
- 自然離職・退職(整理解雇ではないもの)によって、前年度比より5%以上従業員が減少している
- 採用活動を行ったが、人手不足の解消には至らなかった
- その他、省力化が必要となっている理由がある
上記のうち4のみを選択したときは、「省力化量計算書にて、導入前後の工数を基に省力化の割合を計算する」「機器配置予定図にて、配膳ロボット導入後の機器配置や作業動線などを説明する」などの作業が必要です。
補助金額が500万円以上の場合は、事業計画期間終了時までは、火災などによる財産の損失等に備えて、付保割合が補助率の1/2以上の保険または共済への加入が必須となります。
省力化投資補助金の補助対象者となる中小企業や小規模事業者は、中小企業等経営強化法に定められた資本金または常勤の従業員数以下の者です。
出典:公募要領
一方、販売事業者や製造事業者として製品カタログに製品を登録したい事業者については、上記のような要件は設けられていません。審査に通過すれば、事業規模にかかわらずカタログに自社製品を登録できます。
省力化投資補助金の補助対象経費は、主に「券売機の本体価格(製品本体価格)」と「券売機導入に要する費用(導入経費)」です。
製品本体価格は、補助事業のためにだけに使用される券売機の本体や、附随する専用ソフトウェア、情報システムなどの購入に要する経費です。
リース・レンタル、中古品、交付決定前に導入した製品、消費税、無償提供されたものなどは補助対象外になります。自社で購入することを前提とした、事業計画を立ててください。
導入経費は、省力化製品の設置作業、運搬費、動作確認費用、マスタ設定費用などです。
交付決定前にかかったもの、過去に購入したものに対する費用、省力化製品の導入に関係のないデータ作成・データ投入費用、原材料費・光熱費などは対象外になります。
カタログへ製品を登録したいときは、当該製品の性能や金額が補助対象経費になるように、ある程度調整することも大切です。
省力化投資補助金の補助金額上限は、交付申請時点の補助対象事業者の常勤従業員数ごとに、金額テーブルが設定されています。本補助金の補助率と補助金額は次の通りです。
従業員数 | 補助率 | 補助上限額(大幅な賃上げを行う場合) |
5人以下 | 1/2以下 | 200万円(300万円) |
6~20人以下 | 500万円以下(750万円) |
21人以上 | 1,000万円以下(1,500万円) |
省力化投資補助金の事業全体は、おおよそ以下の流れに沿って進みます。
- 省力化達成によって、売上・生産性が向上する事業計画書を作成する
- GビズIDの公式ホームページにて、Gビズプライムアカウントを作成する
- 電子申請受付システムを用いて、事務局へ事業計画書と必要書類を提出する
- 採択通知を受け取ったら、事務局から交付決定の通知を受けて補助事業を開始する
- 補助事業が終了後、実績報告を行い補助金の金額を確定させる
- 確定した金額を事務局へ請求し、確定金額の交付を受け取る
- 毎年の年度初めにて、効果報告を通算5年間行う
上記はあくまで補助金の交付を受ける事業者の流れです。カタログへ製品を登録する際は、別途手続きを進める必要があります。
製造事業者・工業会の方々向けのカタログ登録フローとは?
省力化投資補助金の対象となる製品をカタログに登録するには、製造事業者・工業会の方々向けのカタログ登録フローに沿って手続きを進める必要があります。
承認カテゴリーとは、省力化投資補助金の対象製品として登録できる省力化製品カテゴリーのことです。承認カテゴリーに該当しない製品は、事業者側から工業会へ登録したい製品カテゴリーの意見書を提出します。
2024年6月の承認カテゴリー一覧は次の通りです。
承認カテゴリー | 概要 |
券売機 | 注文受付、券類の発行などを自動的に行う機器 |
自動精算機 | 商品販売時およびサービス提供時の精算対応関係を自動的に行う機器 |
自動チェックイン機 | チェックイン・チェックアウト機能など、宿泊施設の窓口に関するものを備えた機器 |
スチームコンベクションオーブン | コンベクションオーブンに蒸気発生装置を取り付け、さまざまな加熱調理に対応できる機器 |
無人搬送車 | 無人で動く台車や車両にて、ものの移動や牽引ができる機能を持つ機器 |
検品・仕分けシステム | 検品や仕分けを高精度で自動対応してくれる機器 |
自動倉庫 | パレットやケース、コンテナを自動的に入出庫・保管できる倉庫 |
清掃ロボット | 各種センサーにより人や障害物を回避しながら自律走行で床を清掃するロボット |
配膳ロボット | 各種センサーにより人や障害物を回避しながら自律走行で料理や飲物などを配膳するロボット |
タブレット型給油許可システム | セルフ式ガソリンスタンドにおいて、来店客に対して行う給油許可行為をSS事務所内システム(固定式)とタブレット型システムを連動させることにより、タブレット型給油許可システムを用いて、事務所内に限らずSS敷地内であれば給油を許可することが可能となるシステム。 |
オートラベラー | 製品、製品パッケージ、パッケージ資材に粘着ラベルを自動的に貼り付ける機器 |
飲料補充ロボット | 飲料補充業務を行うためのロボット |
デジタル紙面色校正装置 | 商品箱等の紙器パッケージ印刷の色校正を行うための印刷装置 |
測量機 | トータルステーション(水平角と鉛直角を計測する経緯儀に、測距機能が内蔵された測量機)のうち、ノンプリズム、モータードライブ、遠隔操作、自動視準、自動追尾などの省力化を実現する機能を有している測量機 |
製品・製造事業者登録の流れについて、大まかなスケジュールを見ていきましょう。
省力化投資補助金のカタログ申請に必要な書類は、主に次の通りです。
上記はあくまで基本的な書類であり、別途資料の提出が求められる可能性があります。申請書類は、公式サイトにてダウンロードが可能です。
製造事業者・工業会の方々が気をつけるべき注意点として、以下のものが挙げられます。
製品登録要件を満たすことで、省力化投資補助金の対象製品として認められます。おおまかな要件は、以下で解説します。なお詳細な情報は、すべて「省力化製品・省力化製品製造事業者登録要領」にて記載されていますので、ここではそれぞれの概要を見ていきましょう。
概要事項とは、「定義や概要、業務範囲が明確になっており、事前に登録された製品カテゴリに属することがわかること」といった、登録する製品のさまざまな要件について定めたものです。機能、申請単位、単体性能、汎用品であること、といったものが設定されています。
製品性能および価格に関する事項とは、省力化指標にしたがった省力化効果の算出値と基準値についてや、人件費削減効果、製品本体価格設定など、性能や価格関係について定めたものです。
供給体制に関する事項とは、量産体制、サプライチェーン関係の確認など、製品の供給体制関係について定めたものです。
サービス体制に関する事項とは、製造事業者が整えておくべき体制についてまとめたものです。具体的には次の通りです。
引用:省力化製品・省力化製品製造事業者登録要領
製造事業者の登録要件とは、カタログに登録できる製造事業者について定めたものです。すべてを満たしたうえで、宣誓を行う必要があります。主な内容を見ていきましょう。
日本国内で法人登記した日本国内で事業を営む法人、国からの指名停止措置などを受けていない、その他不正行為をしていないなど、申請するうえでの前提条件が定められています。
登録期間中に、製品の生産を継続して行うのに十分な経営基盤を有しているかを確認されます。
登録した省力化製品について、十分に供給やサポートを行える体制を確保できているかを見られます。予期しない変動で体制が不十分になったとき、体制が回復するまで事務局へ連絡を行いカタログ掲載を一時取りやめを行うなど、適切な措置が講じられるか否かも確認されます。
公募要領を遵守すること、必要な情報の提出や報告などを行うこと、変更や修正の必要が出たら速やかに変更申請を行うこと、お問い合わせへの対応や補助事業の周知活動に取り組むことなど、補助事業の実施にあたって守るべきさまざまな事項が決められています。
省力化製品の登録単位は、「原則型番ごとに製品登録を行っていること」「複数の製品や周辺機器等の構成要素を組み合わせて稼働する製品の場合は、省力化効果を発揮するための最低限の構成要素のみがパッケージとして含まれていること」が基本となります。
パッケージに含まれるのはあくまで省力化効果を発揮するものに限定されるので、省人かと関係のない製品・部品などは対象外になるので注意しましょう。
省力化投資補助金における省力化製品の本体価格は、原則として50万円以上であることが必要です。また、本補助金の補助上限金額に対して著しく高額でないことも重要です。さらに、販売価格は経済的合理性があり、市場価格から逸脱していないことも大切になります。
省力化投資補助金においては、補助対象経費となる費用しか補助対象として認められません。認められるのは、製品本体価格と導入に要する費用(導入費用)の2つです。
そして補助対象経費は、参考値として保守・サポートに要する費用の目安を申請する必要があります。
一方で補助対象外になる費用も多数存在しているので、事前に登録要領にてご確認ください。例えばリース・レンタル契約のもの、中古品、省力化製品の試運転に伴う原材料費・光熱費などは、補助対象外となります。
製造事業者は、自身が製造する省力化製品を販売する販売代理店等に対して販売事業者登録を行う際に、製造事業者とは別の販売事業者への登録手続きや要件が存在します。販売事業者の方々向けの交付申請フローを見ていきましょう。
販売事業者として登録されるには、事前に登録された省力化製品の販売、各種サポートを行える事業者であるとして製造事業者の確認を受けたうえで、事務局へ登録申請を行い、事務局および外部審査委員会による審査で採択される必要があります。
販売事業者は、事業者が省力化投資補助金の申請を行う際に、各種サポートや共同申請を行う責務が生じます。
販売事業者の登録手順は次の通りです。
出典:中小企業庁省力化投資補助金「販売事業者登録から応募・交付申請の流れ」
販売事業者の要件を満たしたうえでカタログに掲載されれば、カタログを見た事業者から連絡がくるようになります。その後、実際に本補助金への申請に進むときは、事業者をサポートしつつ共同申請に対応しましょう。
なお登録の流れについての詳細は、「販売事業者登録申請の手引き」もぜひご覧ください。
2024年6月時点での申請期間は、「2024年3月11日より製品カテゴリーごとに順次開始する。詳細はホームページに掲載する」となっています。現在は申請締切は設けられていません。
販売事業者の方々が準備すべき必要書類は、主に次の通りです。
販売事業者の方々が気をつけるべき注意点として、「販売事業者の方々の補助対象経費」と「販売事業者の要件」、「その他の注意点」が挙げられます。
販売事業者の方々は、省力化投資補助金の補助対象経費に何があるかを正確に把握しておきましょう。
補助対象経費にならない事業や費用を提案してしまうと、その分の補助金の交付がないばかりか、むしろ支出が増えてしまうことになります。そうした提案は事業者からの信頼を著しく低下させることになるので、販売事業者になる予定の事業者はしっかりとチェックしておいてください。
前述した販売事業者の要件は、原則としてすべて満たさなければなりません。そのため、販売事業者の登録を受けようと思うときは、販売事業者の要件をすべて確認し、要件に合致する体制を整える必要があります。
販売事業者の登録を受けたいときは、以下の注意点も事前に確認しておいてください。
省力化投資補助金は、補助金の交付を受ける側だけでなく、製造事業者や販売事業者側にも売上アップや販路拡大といったメリットにつながる補助金制度です。
製造事業者や販売事業者として登録するには、それぞれに設けられた申請フローに沿った手続きを進める必要があります。省力化製品・省力化製品製造事業者登録要領や省力化製品販売事業者登録要領をご確認ください。