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※記事は作成時の公募要領をもとに作成しているため最新の情報と異なることがございます

マシニングセンタ事業には、新事業進出補助金を活用できるかわからない方が多いのではないでしょうか。しかし条件によっては、マシニングセンタ事業にも新事業進出補助金を活用することができます。
新規にマシニングセンタ事業を立ち上げることは高額な設備投資となるため、新事業進出補助金を活用することで企業におけるマシニングセンタ事業の経費負担を軽減することができます。
この記事では、新事業進出補助金の概要やマシニングセンタ事業の採択事例について解説していきます。

マシニングセンタ事業への採択事例を見ていくまえに、新事業進出補助金の概要について簡単に説明していきます。
マシニングセンタ事業に使える?新事業進出補助金の概要
新事業進出補助金は、中小企業等が行う既存事業と異なる事業への前向きな挑戦であって、新市場・高付加価値事業への進出を後押しすることで、中小企業等が企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図り、賃上げにつなげていくことを目的としています。
新事業進出補助金で受け取れる上限金額、補助率は、以下のように決まっています。
| 従業員数 | 補助率 | 通常の補助上限額 | 賃上げ特例時の補助上限額 |
|---|---|---|---|
| 20人以下 | 1/2 | 750万円 ~ 2,500万円 | ~ 3,000万円 |
| 21~50人 | 1/2 | 750万円 ~ 4,000万円 | ~ 5,000万円 |
| 51~100人 | 1/2 | 750万円 ~ 5,500万円 | ~ 7,000万円 |
| 101人以上 | 1/2 | 750万円 ~ 7,000万円 | ~ 9,000万円 |
第2回の公募期間は、令和7年9月12日(金)から令和7年12月19日(金)18:00まで(厳守)となっています。
補助対象者には、中小企業者、中小企業者以外の法人(企業組合等や一般財団法人など)、特定事業者の一部、対象リース会社が含まれます。
中小企業者の場合、資本金または常勤従業員数が一定の基準以下である必要があります。例えば、製造業・建設業・運輸業の場合は資本金3億円以下または常勤従業員数300人以下、卸売業の場合は資本金1億円以下または常勤従業員数100人以下などの基準が設けられています。
| 業種 | 資本金 | 常勤従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 (ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く) | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
補助対象経費には、機械装置・システム構築費、建物費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、広告宣伝・販売促進費が含まれます。
機械装置・システム構築費と建物費については、いずれか一方が必須となります。
外注費については補助金額全体の10%が上限、専門家経費については100万円が上限、広告宣伝・販売促進費については事業計画期間1年あたりの売上高見込み額(税抜き)の5%が上限となっています。
マシニングセンタ事業と新事業進出補助金は相性が良いと言われています。その理由を以下で解説します。
マシニングセンタ事業と新事業進出補助金が相性が良い理由
マシニングセンタは数百万円から数千万円の高額な設備投資が必要となる工作機械です。新事業進出補助金は、従業員数に応じて最大7,000万円(賃上げ特例適用時は最大9,000万円)まで補助を受けることができ、補助率も2分の1と手厚い支援が受けられます。
例えば、従業員数が60人の企業が4,000万円のマシニングセンタを導入する場合、2,000万円の補助を受けることができます。この補助金により、企業の初期投資負担を大幅に軽減し、新規事業への参入障壁を下げることができます。
マシニングセンタの導入により、これまで対応できなかった高精度加工や複雑形状の部品製造が可能になります。これは新事業進出補助金が求める「市場の新規性要件」と「製品等の新規性要件」を満たしやすい特徴があります。
例えば、従来の汎用旋盤による加工から5軸マシニングセンタによる航空機部品加工への進出や、自動車部品製造から半導体製造装置部品への新市場進出など、明確な事業転換を示すことができます。
マシニングセンタは自動化・高精度化により、大幅な生産性向上が期待できます。これは新事業進出補助金の付加価値額要件(年平均成長率4.0%以上)を達成しやすい投資といえます。
加工時間の短縮、不良品率の低下、人件費の最適化などにより、営業利益と付加価値額の向上が見込めます。特に、従来手作業で行っていた工程を自動化することで、人材を高付加価値業務にシフトさせることも可能になります。
最新のマシニングセンタには、IoT機能やAI制御などの先端技術が搭載されています。これらの技術活用は、新事業進出補助金の審査項目「政策面」において高く評価される要素です。
デジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築などを通じて、日本経済のイノベーションを牽引する事業として認められやすくなります。
マシニングセンタ事業に新事業進出補助金を活用する際の注意点にはどんなものがあるでしょうか。以下で解説します。
マシニングセンタ事業に新事業進出補助金を活用する際の注意点
マシニングセンタを導入する際、単なる設備更新や生産能力の増強では補助対象になりません。既存事業とは明確に異なる新規性が求められます。
事業計画では、マシニングセンタ導入により製造する製品が、自社にとって新規性を有することを明確に示す必要があります。過去に製造していた製品の再製造や、既存製品の製造量を増やすだけの計画は認められません。
例えば、「既存の鉄鋼部品加工からアルミニウム合金やチタン合金などの航空機用部品加工への進出」といった、材質や用途が明確に異なる製品への転換を示すことが重要です。
新たに参入する市場が、既存事業とは異なる顧客層やニーズを対象としていることを、客観的なデータや統計を用いて説明する必要があります。単に商圏を拡大するだけでは市場の新規性要件を満たしません。
例えば、「自動車業界向けから航空宇宙産業向けへ」「国内市場から海外輸出市場へ」など、業種や顧客属性が明確に異なることを示しましょう。
新事業進出補助金では、賃上げ要件の達成が必須となっており、未達の場合は補助金の返還義務が生じます。
交付申請時までに、全ての従業員または従業員代表者に対して、一人当たり給与支給総額目標値と給与支給総額目標値を表明することが必要です。この表明がない場合、交付決定が取り消され、補助金全額の返還を求められます。
一人当たり給与支給総額は都道府県の最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、給与支給総額は年平均成長率2.5%以上の増加が求められます。マシニングセンタ導入による収益向上を見据えた、実現可能な賃上げ計画を策定しましょう。
事業計画期間最終年度にいずれかの目標値を達成できなかった場合、補助金交付額に未達成率を乗じた額の返還が必要です(ただし、付加価値額が増加していない場合や営業利益赤字の場合など例外あり)。
補助事業実施場所の都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準を、事業計画期間中毎年維持する必要があります。
この要件を満たせなかった年度があると、補助金交付額を事業計画期間の年数で除した額の返還を求められます。マシニングセンタ導入により生産性が向上しても、最低賃金水準を下回らないよう注意が必要です。
特定の期間に類似のテーマや設備に関する申請が集中している場合、過剰投資と判断され大幅な減点を受ける可能性があります。
マシニングセンタ導入による新事業進出は人気のあるテーマですが、他社と差別化された独自の市場分析、競合優位性、技術的特徴を明確に示すことが重要です。
単に「マシニングセンタを導入して高精度加工を行う」という一般的な内容ではなく、自社の強みや地域特性、既存顧客との関係性などを活かした具体的な戦略を示しましょう。
応募申請時までに、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、「両立支援のひろば」に公表することが必要です。
この要件は見落とされがちですが、必須要件のため、申請前に必ず対応を完了させておきましょう。計画の策定・公表には一定の時間がかかるため、早めの準備が重要です。
金融機関等から資金提供を受けて補助事業を実施する場合は、資金提供元の金融機関等から事業計画の確認を受け、「金融機関による確認書」を提出する必要があります。
マシニングセンタは高額な設備のため、補助金だけでなく融資も併用するケースが多くなります。事前に取引金融機関と相談し、事業計画の妥当性について確認を受けておきましょう。
以下では、実際にマシニング事業に補助金が活用された事例を紹介します。
マシニングセンタ事業に補助金を活用した事例
事業計画名:宇宙ステーション用バルブ装置への設備導入と自社開発による新分野展開
企業名:高砂電気工業株式会社
補助金を利用して、本事業は、当社の既存事業である産業用特殊バルブの製造販売から、横型マシニングセンタと自動溶接システムの設備導入により生産性の向上を図り、宇宙ステーション用特殊バルブ製造販売への新分野展開を目指したマシニングセンタ事業の事例です。
事業計画名:設備導入と自社技術開発による半導体製造装置部品製造への新市場進出
企業名:有限会社猪又製作所
補助金を利用して、本事業は、工作機械部品製造を主力とした既存事業から大型マシニングセンタの設備導入と自社技術開発によりリードタイム短縮と高精度化を図り、半導体製造装置部品加工への新市場進出を目指したマシニングセンタ事業の事例です。
事業計画名:新型EV開発に必要なテスト車のボディ、フレームの試作への進出
企業名:株式会社ヒロミツ製作所
補助金を利用して、これまで培ってきた自動車部品の試作技術のノウハウを活かすとともに、EVの製造に対応できる三次元レーザ加工機、マシニングセンタを導入し、EV開発に必要な筐体、フレーム の試作分野の新事業展開を図ったマシニングセンタ事業の事例です。
この記事では、マシニングセンタ事業に新事業進出補助金を活用する方法について解説しました。
新規にマシニングセンタ事業を立ち上げて品質を高めるためには、製造工程や設備の改善が必要になります。マシニングセンタ事業で新事業進出補助金の利用を検討している場合は、この記事を参考にしながらぜひ、マシニングセンタ事業のための申請をおこなってみてください。
第2回の公募期間は令和7年12月19日(金)18:00までとなっておりますので、申請を検討されている方はお早めに準備を進めてください。
