ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、ものづくり補助金の事業目的に合致する事業計画を策定し、生産性を向上させる設備投資を行う事業者を金銭的に補助する制度です。
ものづくり補助金は、提出した事業計画書に基づいた補助事業を実施し、補助事業中にかかった経費を補助する形で交付される後払い方式になります。各申請枠に設定されている補助上限額や補助率によっておおまかな金額が決まるので、事前にチェックしておきましょう。
本記事では、16次公募におけるものづくり補助金の各申請枠の上限額や補助率、ものづくり補助金の対象経費などを解説します。
ものづくり補助金の上限額と補助率とは、ものづくり補助金の交付金額を決定する重要な要素です。
申請できるものづくり補助金の各申請枠には、補助上限額が設定されています。極端に言えば、「補助事業中に1億円使ったから、1億円分の経費を申請する」は認められません。
ものづくり補助金の金額は、補助事業中に支出した経費金額に補助率を乗じて決められます、補助率が1/2だと、経費が2,000万円だった場合は2,000万円×補助率1/2=1,000万円が交付予定金額となります。
以下では、ものづくり補助金の各申請枠の概要と上限額・補助率について見ていきましょう。
通常枠とは、ものづくり補助金における基本的な類型です。基本要件を満たしつつ、革新的製品・サービスの開発や試作品開発、生産プロセスの改善などにつながる設備投資を行う事業計画書の作成が必要になります。基本要件は、以下の条件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定することです。
補助金額の最大は1,250万円で、補助率は原則として1/2です。再生事業者等の場合は、補助率が優遇されています。
通常枠 | 従業員数・事業者区分 | 下限・上限額 |
補助金額 | 5人以下 | 100万~750万円 |
6~20人以下 | 100万~1,000万円 |
21人以上 | 100万~1,250万円 |
補助率 | 中小企業等 | 1/2 |
小規模企業者・小規模事業者・再生事業者 | 2/3 |
回復型賃上げ・雇用拡大枠とは、自社の業況が厳しい中でも従業員の賃上げや雇用の拡大・離職防止に取り組む事業者による開発・改善を補助する申請枠です。10次公募より追加されました。基本要件に加えて、次の追加要件をクリアすると申請できます。
通常枠と比較すると、補助率は事業規模にかかわらず優遇措置が取られている点に違いがあります。前年度の売上が厳しいながらも従業員の雇用を維持している事業者は、回復型賃上げ・雇用拡大枠の利用を検討してみてください。
回復型賃上げ・雇用拡大枠 | 従業員数・事業者区分 | 下限・上限額 |
補助金額 | 5人以下 | 100万~750万円 |
6~20人以下 | 100万~1,000万円 |
21人以上 | 100万~1,250万円 |
補助率 | 全事業者 | 2/3 |
デジタル枠とは、「DX(デジタルトランスフォーメーション)に役立てる製品・サービスの開発」や「AIやIoT、デジタル技術などを活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善」によって、生産性向上を目指す事業者を支援する申請枠です。追加要件として、次のものが設定されています。
単にデジタル製品を購入する、紙の電子化を行うなどにとどまり、ものづくり補助金の事業目的を達成しない場合は申請対象外になります。
通常枠と比べると、回復型賃上げ・雇用拡大枠と同じく補助率の優遇措置が行われています。
デジタル枠 | 従業員数・事業者区分 | 下限・上限額 |
補助金額 | 5人以下 | 100万~750万円 |
6~20人以下 | 100万~1,000万円 |
21人以上 | 100万~1,250万円 |
補助率 | 全事業者 | 2/3 |
グリーン枠とは、温室効果ガスの排出削減に取り組む事業者を支援する申請枠です。第13次公募より新設されました。グリーン枠はさらにエントリー類型・スタンダード類型・アドバンス類型の3つの類型に分けられます。
温室効果ガスの排出削減事業、自社のCO2・燃料使用量の把握、再生可能エネルギー導入、中小企業版SBT(Science Based Targets)の認証または通常版もしくは中小企業版RE100への参加など、さまざまな追加要件が設定されています。3つの類型ごとに細かく要件が決まっているので注意しましょう。
申請難易度は高めですが、その分だけ上限額・補助率ともに優遇されているのが特徴です。
追加要件の詳細は、公募要領をご確認ください。
エントリー類型 | 従業員数・事業者区分 | 下限・上限額 |
補助金額 | 5人以下 | 100万~750万円 |
6~20人以下 | 100万~1,000万円 |
21人以上 | 100万~1,250万円 |
補助率 | 全事業者 | 2/3 |
スタンダード類型 | 従業員数・事業者区分 | 下限・上限額 |
補助金額 | 5人以下 | 750万~1,000万円 |
6~20人以下 | 1,000万~1,500万円 |
21人以上 | 1,250万~2,000万円 |
補助率 | 全事業者 | 2/3 |
アドバンス類型 | 従業員数・事業者区分 | 下限・上限額 |
補助金額 | 5人以下 | 1,000万~2,000万円 |
6~20人以下 | 1,500万~3,000万円 |
21人以上 | 2,000万~4,000万円 |
補助率 | 全事業者 | 2/3 |
グローバル市場開拓枠とは、海外事業の拡大・強化などを目的とした開発・改善などを目的とした設備投資を行う事業者を支援する申請枠です。「海外直接投資類型」「海外市場開拓(JAPANブランド)類型」「インバウンド市場開拓類型」「海外事業者との共同事業類型」の4つのうち、いずれか1つの類型の追加要件を満たせば交付を受けられます。
補助金の上限額は3,000万円と、グリーン枠アドバンス類型の4,000万円に次ぐ高さです。海外向けのビジネス展開を検討する場合は、グローバル市場開拓枠への応募も視野に入れましょう。
グローバル市場開拓枠 | 従業員数・事業者区分 | 下限・上限額 |
補助金額 | 従業員数の制限なし | 100万~3,000万円 |
補助率 | 中小企業等 | 1/2 |
小規模企業者・小規模事業者 | 2/3 |
各申請枠の条件に加えて、より高い給与支給総額や事業場内最低賃金の増加を行う「大幅な賃上げをする場合の特例」を適用できれば、各申請枠の補助金の上限額を引き上げられる。例えば通常枠に申請した30人規模の事業者が適用すれば、上限額は最大1,250万円から2,250万円になります。補助率は、各申請枠に準じます。
大幅な賃上げの特例 | 従業員数 | 引き上げ額 |
補助金額 | 5人以下 | 最大100万円 |
6~20人以下 | 最大250万円 |
21人以上 | 最大1,000万円 |
通常枠やグローバル市場開拓枠については、小規模事業者・小規模企業者などに対して補助率が高くなっています。小規模事業者等は、中小企業と比べると資本力・人材面で不利なことが多く、補助金の申請自体のハードルが高くなりがちです。しかしその分、補助金額等の部分で優遇されています。
ものづくり補助金の対象になるのは、補助事業期間中に支払った公募要領等で決まっている対象経費のみです。事業計画策定時は、ものづくり補助金の対象経費を支出する設備投資計画を作成しましょう。16次公募時点での、ものづくり補助金の対象経費を解説します。
ものづくり補助金の対象経費は次の通りです。
補助対象経費 | 概要 |
機械装置・システム構築費 | ・補助事業実施に必要な機械・装置や工具・器具、専用ソフトウェア、情報システムの購入や製作、借用などに要する経費・単価が税抜き50万円以上のもののみ |
技術導入費 | 補助事業の実施に必要な知的財産権等の導入に要する経費 |
専門家経費 | 補助事業の実施のために依頼した専門家へ支払う経費 |
運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料等に要する経費 |
クラウドサービス利用費 | クラウドサービスの利用費、クラウドサービスに付帯する経費 |
原材料費 | 試作品の開発に必要な原材料および副資材の購入に要する経費 |
外注費 | 製品・サービスの開発に必要な加工・設計・デザイン・検査などを外注する場合の経費 |
知的財産権等関連経費 | 補助事業に必要な知的財産権等の取得に要する弁理士の手続き代行費用や、外国特許出願のための翻訳料等の知的財産権等取得に関連する経費 |
その他申請枠ごとの経費 | 海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費 |
事業計画で支出予定の対象経費の金額に対して、補助率を乗じればものづくり補助金の交付金額が算出できます。同じ事業計画内でどの経費を申請しても問題ありませんが、上限額を超える経費を申請しても上限額以上は交付されないので注意しましょう。
続いて、ものづくり補助金の対象とならない経費も見ていきましょう、
上記の支出は、いくら高額になろうとも補助金の算出式には入りません。スマートフォンや車両などは対象経費になると勘違いしやすいので、事前にしっかりと確認しておきましょう。
ものづくり補助金の補助対象経費についてはこちら
申請経費は各申請枠に応じたものならどれでもよいものの、区分ごとに申請上限が設けられている経費があります(いずれの補助対象経費総額も税抜きで適用)。
ものづくり補助金の各申請枠には、上限額と補助率が設定されています。ものづくり補助金の交付金額は、上限額と補助率によって決まります。申請予定の枠の上限額・補助率や追加要件をチェックし、どの枠が自社に合っているかを事前にしっかりと検討しておきましょう。