【2025.8】ものづくり補助金の付加価値額とは?計算方法をわかりやすく解説

ものづくり補助金には付加価値額に関する要件が設けられています。付加価値額とは「営業利益+人件費+減価償却費」のことです。付加価値額は収益計画で計算する必要があるため、ものづくり補助金に申請する全ての事業者が定義を理解する必要があります。
この記事では、ものづくり補助金の付加価値額の計算方法を法人、個人事業主別に解説します。決算書のどの項目が当てはまるかという点まで紹介します。ぜひ参考にしてください。
- ものづくり補助金の付加価値額とは何かが理解できる
- ものづくり補助金の付加価値額の計算方法がわかる

付加価値額の計算が必要なものづくり補助金とは
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者の事業変革と成長促進を支援する国の補助制度です。
この制度の基本的な目的は、事業者が将来的に連続して発生する制度改正に適応できるよう、経営効率の向上を実現する先進的な製品開発やサービス創造、そして海外市場への参入を目指す事業活動に対して、必要な設備導入費用の一部を国が支援することにあります。
支援対象は、従来の枠組みを超越した革新性を持つ製品・サービスの開発や、国際的な需要獲得を狙った市場開拓事業に限られており、これらの事業に不可欠な機械設備や装置への投資について国が費用負担を行います。
この政策の最終的な目標は、中小企業者等の業務効率化を通じて、従業員の所得水準を持続的に改善し、それによって日本経済全体の活性化を図ることです。
なお、ものづくり補助金の基本要件には付加価値額に関する要件が設けられているため、申請時には付加価値額の計算が必要になります。これにより、補助事業の生産性向上効果を定量的に評価し、補助金の適正な交付を確保する仕組みとなっています。
ものづくり補助金の付加価値額要件とは
ものづくり補助金の付加価値額要件とはどんなものでしょうか。以下で解説します。
ものづくり補助金の付加価値額要件とは
ものづくり補助金の基本要件
まず、ものづくり補助金の基本要件は以下のように設定されています。
基本要件
基本要件①:付加価値額の増加要件
⚫ 補助事業終了後 3~5 年の事業計画期間において、事業者全体の付加価値額の年平均成長率(CAGR。以下同じ。)を 3.0%(以下「付加価値額基準値」という。)以上増加させること。
⚫ 具体的には、申請者自身で付加価値額基準値以上の目標値(以下「付加価値額目標値」という。)を設定し、事業計画期間最終年度において当該付加価値額目標値を達成することが必要です。
⚫ 付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものをいいます。
基本要件②:賃金の増加要件 【目標値未達の場合、補助金返還義務あり】
⚫ 補助事業終了後 3~5 年の事業計画期間において、従業員(非常勤を含む。以下同じ。)及び役員それぞれの給与支給総額の年平均成長率を 2.0%(以下「給与支給総額基準値」という。)以上増加させること。
又は従業員及び役員それぞれの 1 人あたり給与支給総額の年平均成長率を事業実施都道府県における最低賃金の直近 5 年間(2019 年度を基準とし、2020 年度~2024 年度の 5 年間をいう。)の年平均成長率(以下「1 人あたり給与支給総額基準値」という。)以上増加させること。
⚫ 具体的には、申請者自身で給与支給総額基準値以上の目標値(以下「給与支給総額目標値」という。)及び 1 人あたり給与支給総額基準値以上の目標値(以下「1 人あたり給与支給総額目標値」という。)をそれぞれ設定し※1※2、交付申請時までに全ての従業員又は従業員代表者、役員(以下「従業員等」という。)に対して表明のうえ、事業計画期間最終年度において当該給与支給総額目標値及び 1 人あたり給与
支給総額目標値を達成することが必要です。
⚫ 事業計画期間最終年度において、少なくともいずれか一方の目標値を達成する必要があります。いずれも達成できなかった場合、達成度合いの高い目標値の未達成率に応じて補助金返還を求めます。また、従業員等に対して設定した目標値の表明がされていなかった場合、交付決定取消し、補助金返還を求めます。
⚫ 給与支給総額とは、従業員及び役員に支払った給与等(給料、賃金、賞与及び役員報酬等は含み、福利厚生費や法定福利費、退職金は除く)をいいます。また、1 人あたり給与支給総額とは、給与支給総額を従業員数及び役員数で除したものをいいます。
基本要件③:事業所※内最低賃金水準要件【目標値未達の場合、補助金返還義務あり】
⚫ 補助事業終了後 3~5 年の事業計画期間において、事業所内最低賃金(補助事業の主たる実施場所で最も低い賃金)を、毎年、事業実施都道府県における最低賃金より 30 円(以下「事業所内最低賃金基準値」という。)以上高い水準にすること。
⚫ 具体的には、申請者自身で事業所内最低賃金基準値以上の目標値(以下「事業所内最低賃金目標値」という。)を設定し、交付申請時までに従業員等に対して表明のうえ、毎年、当該事業所内最低賃金目標値を達成することが必要です。
⚫ 達成できなかった場合、補助金返還を求めます。また、従業員等に対して設定した目標値の表明がされていなかった場合、交付決定取消し、補助金返還を求めます。
※ ここでいう「事業所」とは、「補助事業の主たる実施場所」を指します。P7 に記載されている補助事業の主たる実施場所の考え方にしたがって目標値を設定し、申請・報告してください。なお、主たる実施場所における従業員の最低賃金を、本要件の達成状況として事業化状況報告において報告してください。
基本要件④:従業員の仕事・子育て両立要件(従業員数 21 名以上の場合のみ)⚫ 「次世代育成支援対策推進法」(平成 15 年法律第 120 号。以下「次世代法」という。)第 12 条に規定する一般事業主行動計画の策定・公表を行うこと。
⚫ 具体的には、申請時までに、次世代法に基づき一般事業主行動計画を策定し、仕事と家庭の両立の取組を支援する情報サイト「両立支援のひろば」に策定した、申請締切日時点で有効※な一般事業主行動計画を公表することが必要です。
※ 「申請締切日時点で有効」とは、申請締切日が一般事業主行動計画の計画期間内に入っている必要があります。
⚫ 一般事業主行動計画を「両立支援のひろば」に掲載するにあたっては、1~2 週間程度の期間を要しますので、該当事業者はお早めに一般事業主行動計画の策定・公表に向けた準備等を行ってください。また、策定・公表した一般事業主行動計画は、可能な限り管轄の都道府県労働局へ届出ください。
ものづくり補助金に申請する際は、上記の基本要件を満たすことが必須です。グローバル枠等に申請する場合は別途追加で要件が追加されます。
付加価値額とは
付加価値額に関する要件は、基本要件①です。付加価値額とは、先ほど説明した通り以下の式で表すことができます。
付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
つまり、付加価値額要件とは営業利益、人件費、減価償却費を足したものの年平均成長率を3.0%以上増加させるということです。申請時に目標値を設定し、事業計画が完了する際に目標値を達成する必要があります。
ものづくり補助金の付加価値額の計算方法:法人編

法人の場合、付加価値額はどのように計算したら良いのでしょうか。
まず、付加価値額の計算式は先述した通りです。
営業利益は損益計算書の「営業利益」を、減価償却費は販売管理費内訳の「減価償却費」をそのまま参照しましょう。
一方で人件費は自身で計算する必要があります。人件費は経費を合計することで計算することができます。
- 売上原価に含まれる労務費(福利厚生費、退職金等を含んだもの。)
- 一般管理費に含まれる役員給与、従業員給与、賞与及び賞与引当金繰入れ、福利厚生費、 退職金及び退職給与引当金繰入れ
- 派遣労働者、短時間労働者の給与を外注費で処理した場合のその費用
上記に着目しながら、人件費を考えて計算しましょう。
ものづくり補助金の付加価値額の計算方法:個人事業主編

個人事業主の付加価値額は以下の項目の合計となります。( )内の数字は個人事業主青色申告決算書における該当番号を指しています。
- 差引金額(33)
- 利子割引料(22)
- 減価償却費(18)
- 福利厚生費(19)
- 給料賃金(20)
個人事業主の場合、営業利益と人件費は次のように計算されるため上記のような計算式になるのです。
- 営業利益 = 差引金額 + 利子割引料
- 人件費 = 福利厚生費 + 給料賃金
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まとめ
ものづくり補助金の付加価値額は「営業利益+人件費+減価償却費」で計算され、年平均成長率3.0%以上の増加が基本要件として設定されています。法人では損益計算書の各項目を参照し、個人事業主では青色申告決算書の該当番号から計算します。
付加価値額の計算は複雑で、特に人件費の算出では複数の項目を合計する必要があります。法人の場合は売上原価の労務費や一般管理費の給与関連費用を含め、個人事業主では決算書の特定項目から算出します。
申請時に設定した目標値は事業計画期間最終年度での達成が必須となるため、正確な計算と現実的な目標設定が重要です。付加価値額の計算をはじめ、ものづくり補助金に必要な準備は早めに進めましょう。計算に不安がある場合は、専門家のサポートを受けることで確実な申請が可能になります。



