【2024.2】小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠とは?必要となる書類まで徹底解説!

小規模事業者持続化補助金 賃金引上げ枠

小規模事業者持続化補助金(持続化補助金)には、通常枠の他にも「賃金引上げ枠」が設けられています。申請には事業場内最低賃金の引上げや追加書類の提出などが求められますが、補助上限金額の大幅増加や赤字事業者特例などのメリットがあります。

本記事では、小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠の詳細申請に必要な追加要件必要書類などをまとめました。

この記事を読むと
  • 賃金引上げ枠の追加要件や必要書類が分かる
この記事の目次
小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは?

小規模事業者持続化補助金とは、働き方改革、インボイス制度、被用者保険の適用拡大などの制度変更への対応が必要な小規模事業者のうち、販路拡大等によって生産性向上・持続的発展を目指す事業者を金銭的に補助する補助金制度です。
新しい販売方法の構築、パンフレットやWeb広告を用いた広告戦略、新商品開発による宣伝効果など、自社のサービス・商品をより広い範囲で売る戦略を検討する法人・個人事業主が対象になります。
本補助金の交付を受けるには、対象事業者であること、補助事業の目的に合う事業計画書を提出し採択されること、事業計画書通りの補助事業実施と確定検査に問題がないことが必要です。

また本補助金にはオーソドックスな「通常枠」以外にも、賃上げ要件を達成することでより高額な補助金を受け取れる「賃金引上げ枠」を始めとする特別枠が設定されています。
以下では小規模事業者持続化補助金の活用方法や対象事業者、基本要件、申請方法・スケジュールなどを見ていきましょう。

小規模事業者持続化補助金はどんな時に活用する?

小規模事業者持続化補助金の対象となる販路拡大について、実際の活用事例を基にご紹介します。

  • ケーキ等に顧客の好きな写真や絵を印刷できる可食プリンターを導入し、新規顧客獲得による業績向上を達成した
  • 在宅介護者に対する出張理容サービス実施のために移動式リクライニングチェア・シャンプーユニットを導入し、出張理容サービスに関するパンフレット作成・配布を実施した
  • 新しい写真プランの提案によって、新規顧客獲得と客単価20~30%アップを達成した
  • 地元有名店の食品の商品化と生産体制確保のための業務用グリル購入、新商品PR・新規顧客獲得のためのパンフレット作成、ランディング広告掲載のためのホームページ作成などを行い、新規顧客獲得と前年比売上高6%増加につながった

このように、本補助金は広告宣伝から新サービス・商品開発までさまざまな用途に活用できます。ただし、公募要領等に記載がある「補助対象経費」に該当しない経費で事業計画を策定した場合、いくら優れた販路拡大事業でも補助対象になりません。注意しましょう。

弊社「株式会社INU」では、補助金申請や事業計画書の作成など、小規模事業者持続化補助金に関するさまざまなサポートを請け負っています。本当に効果がある補助事業計画の策定や事業計画書の作り方に関してお悩みであれば、ぜひ無料相談からご活用ください。

小規模事業者持続化補助金の対象事業者

小規模事業者持続化補助金の対象事業者は、以下の小規模事業者の定義に該当する者です。

業種常時使用する従業員の数
商業・サービス業5人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業20人以下
製造業その他20人以下

他にも過去3年間の課税所得年平均15億円以下商工会議所の管轄地域内での事業実施などの条件を満たす必要がありますが、それほど難しい要件はありません。

ただし、一定の事業形態に該当する事業者は、小規模事業者でも交付対象にならないので注意しましょう。中小企業以上の規模の事業者は、ものづくり補助金や事業再構築補助金など中小企業を対象にした補助金制度の活用をおすすめします。

対象事業者の詳細は、公募要領などをご確認ください。

小規模事業者持続化補助金の基本要件

小規模事業者持続化補助金の通常枠へ申請するには、ものづくり補助金における基本要件や事業再構築補助金における申請要件といった、具体的な数値が指定された要件は設けられていません。以下に該当する補助事業の実施を計画する小規模事業者なら、申請対象になります。

  • 策定した経営計画に基づいて実施する、「販路拡大等のための取組」または「販路拡大等と組み合わせて行う業務効率化(生産性向上)のための取組」であること
  • 商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること
  • 国が助成する他の制度と同一・類似内容の事業、事業実施後1年以内に売上が見込めない事業、そのほか公的支援に相応しくないと判断された事業でないこと

通常枠以外の特別枠は、上記の他にも枠ごとの要件を満たさなければ申請ができません。例えば賃金引上げ枠には、従業員の賃上げに関する具体的な数値目標が定められています。その他卒業枠・後継者支援枠・創業枠・インボイス特例の要件は、すべて公募要領にて確認できます。

小規模事業者持続化補助金の申請方法・スケジュール

小規模事業者持続化補助金へ申請するには、事前準備とスケジュールに沿った手続きと事業実施が必要です。申請方法やスケジュールについて、以下で大まかにまとめました。今回は電子申請の流れを見ていきます。

  • GビズIDプライムアカウントを取得する
  • 経営計画書と補助事業計画書を作成する
  • 商工会議所・商工会から事業支援計画書を発行してもらう
  • 宣誓・同意書や収支・業績がわかる書類(決算書、確定申告書、活動計算書など)を準備する
  • 特別枠ごとに必要な書類や加点項目に関する書類など、任意で提出する書類を準備する
  • 国・自治体の電子申請システムJグランツより、電子申請を行う
  • 採択を受けて通知がされたら、事業計画に沿って補助事業を行う
  • 補助事業終了後に実績報告を行い、確定検査や現地調査を受けて補助金額を確定する
  • 精算払請求を行い、補助金の交付を受ける
  • 補助事業終了日より1年後に、事業効果等状況報告を行う

郵送による申請も可能ですが、郵送申請は事務局からの減点対象になると明言されているのでおすすめはしません。どうしても電子申請が難しいケースでなければ、電子申請をおすすめします。

各必要書類や電子申請・補助事業の手引書などは、小規模事業者持続化補助金の公式サイトにてダウンロード可能です。

小規模事業者持続化補助金の公式サイト

賃金引上げ枠ではより大規模な補助を受けられる

小規模事業者持続化補助金の通常枠に申請すると、最大50万円の補助金を受け取れます。しかし特別枠の賃金引上げ枠とインボイス特例を活用すれば、最大250万円の補助金交付です。賃金引上げ枠の詳細とインボイス特例による上乗せなどについて解説します。

補助額は最大200万円

賃金引上げ枠の補助金額の上限は200万円です。通常枠の4倍もあります。また、業績が赤字の事業者に関しては、通常枠よりも補助率の優遇を受けられるのも賃金引上げ枠のメリットです。それぞれの補助上限金額・補助率を見ていきましょう。

通常枠賃金引上げ枠
補助上限金額50万円200万円
補助率2/32/3(赤字事業者は3/4)
追加申請要件なしあり

その代わり賃上げは必須

通常枠より補助金額・補助率が優遇されている賃金引上げ枠ですが、その代わり追加申請要件として賃上げの達成が必須になります。賃金引上げの証拠となる書類や、追加の提出書類も必要です。

補助金制度は補助事業終了後の後払い方式であるため、従業員の賃上げを実施している期間はキャッシュフローが厳しくなる可能性があります。賃金引上げ枠へ申請する際は、自社の資金状況も確認しておきましょう。

とはいえ賃上げによる従業員のモチベーションアップやエンゲージメント向上も期待できることから、人材面での生産性向上につながる可能性もあります。

赤字事業者ならより有利に

赤字事業者が賃金引上げ枠を利用すると、補助率が2/3から3/4に引き上げられます。例えば申請した経費が180万円の場合だと、普通の事業者なら180万円×2/3=120万円の交付になるところが、赤字事業者なら180万円×3/4=135万円と15万円多く補助金が交付されます。

インボイス特例を用いると更に上乗せ可能

インボイス特例とは、免税事業者からインボイス事業者(適格請求書発行事業者)へ転換に伴う事業環境変化に対する政策支援の一種です。
「2021年9月30日~2023年9月30日の属する課税期間で一度でも免税事業者だった、または免税事業者であることが見込まれる事業者」および「2023年10月1日以降に創業した事業者」のどちらかに該当し、なおかつインボイス登録を受けた事業者に一律50万円の補助上限金額の上乗せ措置が行われます。

一般枠なら100万円、賃金引上げ枠なら250万円まで補助上限金額が引き上がります。

賃金引上げ枠の追加要件

小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠へ申請するには、追加要件を満たした事業計画書を策定しましょう。賃金引上げ枠の追加要件について解説します。

事業所内最低賃金の引上げが必要

小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠の追加要件の1つに、「事業場内最低賃金の引上げ」があります。事業場内最低賃金とは、事業者全体(店舗等やパート・アルバイトなどの非正規雇用者の賃金など)を含めた、1時間あたりの賃金のことです。

具体的な追加要件は、「事業場内最低賃金が申請時の地域別最低賃金(都道府県ごとの最低賃金)+30円以上」を、補助事業終了時点で達成することです。例えば東京都の場合は1,113円(2023年10月時点)であるため、1,143円以上を目指します。

もしすでに地域別最低賃金より+30円以上になっている場合は、「現在支給している事業場内最低賃金の+30円以上」を達成する必要があります。

厚生労働省「地域別最低賃金」

事業所内最低賃金の計算方法

事業場内最低賃金の計算は、必ず時給あたりの数値に直して行います。年俸制、月給制、歩合給(インセンティブ給)等の給与体系を採用している事業者は、以下の計算式を基に事業場内最低賃金を算出してください。

・年俸制

年俸総額÷1年間の所定労働時間数(所定労働日数×1日の所定労働時間数)

・月給制

直近の給与支払時における月給÷1か月平均所定労働時間数

※11か月平均所定労働時間数=(365日-1年の休日合計日数)×1日の所定労働時間数÷12か月

・日給制

直近の給与支払時における日給÷1日の所定労働時間数

・歩合給

1年間(12か月分)の歩合給の平均時間単価を算出(雇入れ後1年未満の場合は、雇用されてからの期間で算出)

固定給と併用しているときは、通常の方法で算出した固定給の「時間給または時間換算額」に、上記による歩合給の時間単価を合算

時間給や時間換算額に合算できるのは、基本給・役職手当・職務手当などです。逆に算入できないものとしては、以下に示した諸手当等が該当します。

  • 賞与(ボーナス)
  • 時間外勤務手当(残業代)
  • 休日出勤手当
  • 深夜勤務手当
  • 通勤手当
  • 家族手当
  • 精皆勤手当
  • 臨時の賃金(結婚祝賀金等)
  • 役職手当

事業場内最低賃金の計算方法は、公式サイト「申請方法」の「別紙参考資料」や厚生労働省「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」にて詳細な解説があります。

事業場内最低賃金の計算は、「賃金引上げ枠の申請に係る誓約書」の提出時にも必要です。

赤字事業者特例の追加要件

赤字事業者として申請する場合は、赤字事業者特例の追加要件を満たしましょう。まず、賃金引上げ枠において赤字事業者に該当するのは、次の計算式において直近1期または直近1年間の課税所得金額が0円以下である者です。

・法人

直近1期分の法人税申告書の別表一・別表四「所得金額または欠損金額」欄の金額

・個人事業主

直近1年間の「所得税および復興特別所得税」の確定申告書第一表の「課税される所得金額」欄の金額

賃金引上げ枠において追加で必要となる書類

小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠へ申請する場合、通常枠の書類に加えて追加での書類提出が必要です。それぞれの詳細を見ていきましょう。

賃金引上げ枠において追加で必要となる書類

賃金台帳の写し

賃金台帳の写しとは、「役員・専従者従業員の除いた全従業員分の直近1か月分」の「労働基準法に基づく賃金台帳」の写しです。労働基準法に基づく賃金台帳とは、以下の10項目が網羅されたものを言います。

  1. 氏名
  2. 性別
  3. 賃金計算期間
  4. 労働日数
  5. 労働時間数
  6. 時間外労働の労働時間数
  7. 休日労働の労働時間数
  8. 深夜労働の労働時間数
  9. 基本給や手当等の種類とその金額
  10. 控除項目とその金額

誓約書

誓約書とは、「賃金引上げ枠の申請に係る誓約書」のことです。提出資料の様式7が該当します。表面・裏面ともに記入しましょう。

<表面>

<裏面>

出典:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金<一般型>第14回受付締切回用「<第14回>別紙 参考資料」

雇用条件が記載された書類の写し

雇用条件(1日の所定労働時間、年間休日)が記載された書類の写しを準備します。例えば、雇用契約書労働条件通知書就業規則などが該当します。

赤字事業者特例の場合に必要な書類

赤字事業者の追加要件を満たしている場合は、次の書類準備と手続きを行い、赤字事業者であることを事務局へ申告しましょう。

  • 経営計画書(様式2)の赤字事業者の欄にチェックする
  • 補助事業計画2(様式3)の「Ⅱ.経費明細表」の赤字事業者の欄にチェックする
  • 法人の場合は、直近1期に税務署へ提出した税務署受付印がある法人税申告書別表一・別表四の写し(e-Taxで申告していた場合は、受付印の代用として受付結果を印刷したもの、表面に受付印がなかったときは税務署が発行する納税証明書の写しを追加で提出)
  • 個人事業主の場合は、直近1年税務署へ提出した税務署受付印がある所得税および復興特別所得税の確定申告書第一表の写し(e-Taxで申告した場合は受付印の代用として受付結果を印刷したもの、表紙に受付印がなかったときは税務署が発行する納税証明書を追加で提出)

実績報告時にも必要となる

賃金引上げ枠に申請した場合、実績報告時にも通常枠のものに追加して書類の提出が必要になります。必要書類は次の通りです。

  • 実績報告書提出時における直近1か月分の労働基準法に基づく賃金台帳の写し
  • 雇用条件が記載された書類の写し

まとめ

小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠へ申請することで、通常枠の50万円より高い200万円が補助上限金額として適用されます。インボイス特例を併せると最大250万円まで上乗せが可能です。また赤字事業者であれば、所定の要件クリアと手続きによって補助率を2/3から3/4に上げられます。

賃金引上げ枠への申請には事業場内最低賃金の引上げや追加書類の提出などが求められますが、通常枠の4倍もの補助金が交付されるチャンスがあるので、要件を満たせるならぜひ利用してみてください。

もし「事業場内の賃金引上げを前提にした事業計画のアイデアが出ない」「採択を受けられる事業計画書を作る自信がない」という場合は、補助金サポートのエキスパートである弊社「INU株式会社」へご相談ください。公認会計士や税理士などを含めた7人の専門家が、賃金引上げ枠における事業計画策定から申請までサポートします。

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