省力化投資補助金とは、令和5年度の補正予算より新設された、中小企業・小規模事業者の省人化投資を支援する補助金制度です。他の補助金制度と同じく、本補助金の目的に合う事業計画書を作成して提出し、その事業計画書について事務局から採択を受けることで交付対象になります。最大1,500万円です。
「スチームコンベクションオーブン(プログラム機能付き調理器具)」の導入を検討している場合、この省力化投資補助金を活用することで、本体価格や導入費用が補助されます。
本記事では、省力化投資補助金にてスチームコンベクションオーブンを導入する際のさまざまな概要・流れを解説します。
この記事の目次
中小企業が活用できる省力化投資補助金とは、少子高齢化、働き方改革、働き方の多様化などの影響で人材不足となっている中小企業や小規模事業者を、金銭的に補助する国の制度です。
本補助金の補助対象となるのは、「人手不足に悩んでいる中、ロボットやIoTなどの導入によって省人化を行い、人手不足解消や売上拡大など達成できる事業」です。
公募要領にて規定されたさまざまな要件を満たした事業計画書を作成したうえで審査を行い、その事業計画書について採択を受けられれば補助対象になります。
省力化投資補助金の特徴は、事前に製品カタログに記載されている製品の導入のみが補助の対象になる点です。製品カタログの中には、「スチームコンベクションオーブン」も含まれています。
出典:中小企業庁省力化投資補助金「製品カタログ」
省力化投資補助金で導入できるスチームコンベクションオーブンは、熱に関する自動調整機能、自動洗浄機機能、焼きムラ抑え、マルチタイマーなど、さまざまな機能や種類の中から選べます。
卓上タイプから業務用高機能のものまで多くの種類を取り揃えているので、自社に合うモデルを選べます。
以下では、省力化投資補助金の概要を解説します。
省力化投資補助金の交付を受けるための条件の1つに、「人手不足に悩んでいて省力化が必要であり、一定以上の数値目標をクリアするもの」と認められる事業計画書の策定が挙げられます。
具体的には、「人手不足に関する事項」「基本要件」「採択における要件」の3つを満たすことです。スチームコンベクションオーブンの導入によって、人手不足関係の課題を克服できる計画にしましょう。
以下では、省力化投資補助金の補助対象事業の詳細を解説します。
どのようにして「人手不足の企業であるか」を証明するかと言うと、以下に示した項目のうち1つでも当てはまるかで確認します。。
- 人手不足が原因で従業員の残業時間が平均30時間超となっている
- 自然離職・退職(整理解雇ではないもの)によって、前年度比より5%以上従業員が減少している
- 採用活動の結果が実らず、人手不足の解消には至らなかった
- その他、省力化が必要となっている理由がある
上記のうち4のみに該当するときは、「省力化量計算書にて、導入前後の工数を基に省力化の割合を計算する」「機器配置予定図にて、配膳ロボット導入後の機器配置や作業動線などを説明する」などの作業が必要です。
詳細は公募要領をご確認ください。
基本要件とは、事業計画を策定するにあたって、策定した事業計画で達成すべき目標値です。
基本要件には、必須項目である「労働生産性の向上」が設けられています。具体的には「補助事業終了後の3年間、1年ごとに申請時と比較して労働生産性を年平均成長率(CAGR)3%以上向上させること」という条件です。
また一方で、「賃上げ要件」である事業場内最低賃金を45円以上増加させること」と「給与支給総額を6%以上増加させること」のいずれも満たすことで、補助金額50%の引き上げが可能です。
スチームコンベクションオーブンの導入によって、上記の数値目標が達成できる事業計画書を作成しましょう。
省力化投資補助金の採択を受けるには、申請の前提条件となる「採択における要件」をすべて満たす必要があります。
上記のすべてを満たしているか否かを、申請前には必ず確認しましょう。
もし補助金額が500万円以上になるときは、事業計画期間終了時までは火災などによる財産の損失等に備えて、付保割合が補助率の1/2以上の保険または共済への加入が必須となります。
省力化投資補助金の補助対象者となる中小企業・小規模事業者は、以下の表に示した資本金または常勤の従業員数以下の者です。
出典:公募要領
スチームコンベクションオーブンは、飲食サービス業でよく活用されます。最低ラインは資本金5,000万円以下または従業員数100人以下です。中小規模の飲食店であれば、十分にクリアできる条件だと言えるでしょう
ただし一般社団法人、NPO法人、組合などといった法人形態については、上記の基準とは別の資本金・従業員の規定が存在します。みなし同一法人やみなし大企業に当てはまる場合、補助金の申請ができないケースがあるので、事業規模や株主関係は一度確認しましょう。
詳細は、公募要領をご覧ください。
省力化投資補助金の補助対象経費は、主に「スチームコンベクションオーブンの本体価格(製品本体価格)」と「スチームコンベクションオーブン導入に要する費用(導入経費)」です。
製品本体価格は、補助事業のためにだけに使用されるスチームコンベクションオーブンの本体や、附随する専用ソフトウェア、情報システムなどの購入に要する経費です。カタログに事前登録されている価格が上限となります。
ただしリース・レンタル、中古品、交付決定前に導入した製品、消費税、無償提供されたものなどは補助対象外です。事業計画書は、必ず購入を前提としたものを作成しましょう。
一方で導入経費は、省力化製品の設置作業、運搬費、動作確認費用、マスタ設定費用などが該当します。
交付決定前にかかったもの、過去に購入したものに対する費用、省力化製品の導入に関係のないデータ作成・データ投入費用、原材料費・光熱費などは対象外です。
省力化投資補助金の補助金額上限は、交付申請時点の補助対象事業者の常勤従業員数ごとに、金額テーブルが設定されています。本補助金の補助率と補助金額は次の通りです。
従業員数 | 補助率 | 補助上限額(大幅な賃上げを行う場合) |
5人以下 | 1/2以下 | 200万円(300万円) |
6~20人以下 | 500万円以下(750万円) |
21人以上 | 1,000万円以下(1,500万円) |
スチームコンベクションオーブンの相場は、200万~300万円、大型のもので400万~500万円程度です。省力化投資補助金であれば従業員数が5人以下であっても、1台および1台の半額程度の予算を十分にまかなえます。
省力化投資補助金は、補助事業を実施してから交付される後払い方式です。スケジュールを事前に確認し逆算して資金計画を立てておき、スチームコンベクションオーブン導入直後の資金繰りが苦しくなることがなくなるよう注意しましょう。
出典:公募要領
省力化投資補助金が交付されるまでの、大まかな流れは次の通りです。
- スチームコンベクションオーブンを導入し、省人化達成による売上・生産性が向上する事業計画書を作成する
- GビズIDの公式ホームページにて、Gビズプライムアカウントを作成する
- 電子申請受付システムを用いて、事務局へ事業計画書と必要書類を提出する
- 採択通知を受け取ったら、事務局から交付決定の通知を受けて補助事業を開始する
- 補助事業が終了後、実績報告を行い補助金の金額を確定させる
- 確定した金額を事務局へ請求し、確定金額の交付を受け取る
- 毎年の年度初めにて、効果報告を通算5年間行う
上記とは別途実地検査や立入検査が行われるときは、事務局の指示に従いましょう。従わないと、補助金の減額および交付停止になる可能性があります。
省力化投資補助金を活用して導入できるスチームコンベクションオーブンとは?
省力化投資補助金を活用して導入できるスチームコンベクションオーブンは、2024年6月現在、数十種類の製品がカタログに登録されています。主なものは次の通りです。
上記の他にも、自動洗浄機能を搭載したものなど、組み込まれたプログラム機能に応じたさまざまな機能が付いたスチームコンベクションオーブンが存在します。
省力化投資補助金を活用してスチームコンベクションオーブンの導入をおすすめしたい企業は、主に次の通りです。
省力化投資補助金を活用してスチームコンベクションオーブンを導入する場合、本体価格・導入費用の目安は数百万円程度です。設置費用は数十万円程度を見込んでおきましょう。詳細な価格は、都度メーカーへお問い合わせください。
省力化投資補助金を活用してスチームコンベクションオーブンであれば、調理現場のさまざまな作業の作業効率化につながります。
「自動調理を活用して調理を行い、その間に他の調理や作業に取り掛かる」「これまでできなかった調理法を行い、料理の品質を向上させる」など、さまざまな活用方法があります。
省力化投資補助金を活用してスチームコンベクションオーブンを導入するメリットは、「業務の自動化」「人材不足への対応」「ヒューマンエラーの削減」「これらによるコスト削減」の4つが挙げられます。
省力化投資補助金を活用してスチームコンベクションオーブンを導入するメリットとは?
スチームコンベクションオーブンのプログラミングによっては、自社にぴったりの調理方法や調理時間を設定できます。自社にとって最適な設定を行えば、調理時間短縮、調理工数・負担の低減などにつながるでしょう。
スチームコンベクションオーブンによって自動調理機能などを使えば、調理関係の作業にかかる人員を削減しやすくなります。また、誰が調理しても品質ムラが発生しづらくなり、調理人材の不足への対応にもつながります。
自動調理は誰が利用しても一定の品質に仕上がるので、ヒューマンエラーによる品質低下やフードロスを削減できます。
スチームコンベクションオーブンの導入により業務効率化や人材不足への対応が達成できれば、ランニングコストを大幅に削減できます。例えば残業代の削減、フードロスの削減などが挙げられます。
またスチームコンベクションオーブンによって調理時間のスピードアップや店の回転率向上などにつながれば、売上アップも見込めるでしょう。
省力化投資補助金を利用してスチームコンベクションオーブンを導入するには、ただ好きな製品を購入して申請するだけでは足りません。
必ずカタログの販売事業者に、事業計画書の作成に協力してもらう必要があります。また、販売事業者は事業計画書が要件に合致したことを確認し、事業計画策定後に共同申請を行う必要があります。
採択を受けられる共同申請とするには、販売事業者との連携が必要不可欠です。導入前には、こちらと販売事業者との意見すり合わせや事業計画策定などを進めましょう
また、採択を受けられる事業計画書に仕上げるには、「具体化・数値化した導入効果」「スチームコンベクションオーブン導入後のビジョン」「事務局が確認しやすく、見やすいレイアウト」など、事業計画書作成のコツを確認しておくことをおすすめします。
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