【2025.8】消費税額分はものづくり補助金の補助対象外!他の対象外経費についても解説

ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)の申請に不備や矛盾があると、不採択や補助金返還となる可能性があります。申請時の注意点の1つに、「経費にかかった消費税額分はものづくり補助金の対象外」という決まりがあります。
本記事では、ものづくり補助金における消費税の扱いやその他対象外経費について、21次公募時点での情報をまとめました。
- 消費税額分はものづくり補助金の対象外であることがわかる
- ものづくり補助金は補助対象経費がわかる


ものづくり補助金とは?消費税額分には使えない?
ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者、個人事業主などを対象とした国の補助金制度です。今後対応を迫られる各制度の変更(被用者保険の適用拡大、働き方改革、インボイス制度、賃上げなど)に対応しようとする中小企業等が、革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善による生産性向上を目指す設備投資を支援します。
ものづくり補助金には、スタンダードな「通常枠」の他にも「グローバル枠」や過去にはそのほかにも申請枠が設けられていました。それぞれ申請条件や補助上限額、補助率が異なるので、自社に合う類型へ申請しましょう。
ものづくり補助金とは?消費税額分には使えない?
ものづくり補助金の対象事業者は?
ものづくり補助金の対象事業者は、一定以下の資本金または常時従業員となっている事業者です。

中小企業者や特定事業者の一部などは、上記表とは異なる基準が設けられています。詳しくは公募要領をご確認ください。
ものづくり補助金の申請要件は?
ものづくり補助金の申請要件は、「基本要件」および「基本要件に加えて各申請枠に設けられた追加要件」を満たした事業計画書を作成・提出することです。
基本要件とは、「給与支給総額・事業場内最低賃金・付加価値額の一定以上の増加・維持」を達成することです。どの申請枠に申し込む場合でも、基本要件は必ず達成しなければなりません。
基本要件
基本要件①:付加価値額の増加要件
⚫ 補助事業終了後 3~5 年の事業計画期間において、事業者全体の付加価値額の年平均成長率(CAGR。以下同じ。)を 3.0%(以下「付加価値額基準値」という。)以上増加させること。
⚫ 具体的には、申請者自身で付加価値額基準値以上の目標値(以下「付加価値額目標値」という。)を設定し、事業計画期間最終年度において当該付加価値額目標値を達成することが必要です。
⚫ 付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものをいいます。
基本要件②:賃金の増加要件 【目標値未達の場合、補助金返還義務あり】
⚫ 補助事業終了後 3~5 年の事業計画期間において、従業員(非常勤を含む。以下同じ。)及び役員それぞれの給与支給総額の年平均成長率を 2.0%(以下「給与支給総額基準値」という。)以上増加させること。
又は従業員及び役員それぞれの 1 人あたり給与支給総額の年平均成長率を事業実施都道府県における最低賃金の直近 5 年間(2019 年度を基準とし、2020 年度~2024 年度の 5 年間をいう。)の年平均成長率(以下「1 人あたり給与支給総額基準値」という。)以上増加させること。
⚫ 具体的には、申請者自身で給与支給総額基準値以上の目標値(以下「給与支給総額目標値」という。)及び 1 人あたり給与支給総額基準値以上の目標値(以下「1 人あたり給与支給総額目標値」という。)をそれぞれ設定し※1※2、交付申請時までに全ての従業員又は従業員代表者、役員(以下「従業員等」という。)に対して表明のうえ、事業計画期間最終年度において当該給与支給総額目標値及び 1 人あたり給与
支給総額目標値を達成することが必要です。
⚫ 事業計画期間最終年度において、少なくともいずれか一方の目標値を達成する必要があります。いずれも達成できなかった場合、達成度合いの高い目標値の未達成率に応じて補助金返還を求めます。また、従業員等に対して設定した目標値の表明がされていなかった場合、交付決定取消し、補助金返還を求めます。
⚫ 給与支給総額とは、従業員及び役員に支払った給与等(給料、賃金、賞与及び役員報酬等は含み、福利厚生費や法定福利費、退職金は除く)をいいます。また、1 人あたり給与支給総額とは、給与支給総額を従業員数及び役員数で除したものをいいます。
基本要件③:事業所※内最低賃金水準要件【目標値未達の場合、補助金返還義務あり】
⚫ 補助事業終了後 3~5 年の事業計画期間において、事業所内最低賃金(補助事業の主たる実施場所で最も低い賃金)を、毎年、事業実施都道府県における最低賃金より 30 円(以下「事業所内最低賃金基準値」という。)以上高い水準にすること。
⚫ 具体的には、申請者自身で事業所内最低賃金基準値以上の目標値(以下「事業所内最低賃金目標値」という。)を設定し、交付申請時までに従業員等に対して表明のうえ、毎年、当該事業所内最低賃金目標値を達成することが必要です。
⚫ 達成できなかった場合、補助金返還を求めます。また、従業員等に対して設定した目標値の表明がされていなかった場合、交付決定取消し、補助金返還を求めます。
※ ここでいう「事業所」とは、「補助事業の主たる実施場所」を指します。P7 に記載されている補助事業の主たる実施場所の考え方にしたがって目標値を設定し、申請・報告してください。なお、主たる実施場所における従業員の最低賃金を、本要件の達成状況として事業化状況報告において報告してください。
基本要件④:従業員の仕事・子育て両立要件(従業員数 21 名以上の場合のみ)⚫ 「次世代育成支援対策推進法」(平成 15 年法律第 120 号。以下「次世代法」という。)第 12 条に規定する一般事業主行動計画の策定・公表を行うこと。
⚫ 具体的には、申請時までに、次世代法に基づき一般事業主行動計画を策定し、仕事と家庭の両立の取組を支援する情報サイト「両立支援のひろば」に策定した、申請締切日時点で有効※な一般事業主行動計画を公表することが必要です。
※ 「申請締切日時点で有効」とは、申請締切日が一般事業主行動計画の計画期間内に入っている必要があります。
⚫ 一般事業主行動計画を「両立支援のひろば」に掲載するにあたっては、1~2 週間程度の期間を要しますので、該当事業者はお早めに一般事業主行動計画の策定・公表に向けた準備等を行ってください。また、策定・公表した一般事業主行動計画は、可能な限り管轄の都道府県労働局へ届出ください。
追加要件は、各申請枠の事業目的に応じたものや、特例活用の有無に応じて設定されたものがあります。
各枠の申請要件の詳細は、公募要領にてご確認ください。
ものづくり補助金でいくら貰える?
交付されるものづくり補助金は、「申請した経費金額(確定検査で決定した金額)×補助率」で算出できます。現在、ものづくり補助金の補助率と補助上限金額は以下のように設定されています。
製品・サービス高付加価値化枠
| 従業員数 | 補助上限金額 (補助下限額100 万円) | 補助率 |
| 5人以下 | 750 万円 | 中小企業 :1/2 小規模企業・小規模事業者及び再生事業者:2/3 |
| 6~20人 | 1,000 万円 | |
| 21~50 人 | 1,500 万円 | |
| 51 人以上 | 2,500 万円 |
グローバル枠
| 補助上限金額 (補助下限額100 万円) | 補助率 |
| 3,000万円 | 中小企業 :1/2 小規模企業・小規模事業者及び再生事業者:2/3 |
ものづくり補助金の申請方法、スケジュールは?
ものづくり補助金へ申請するには、事業計画書や必要書類を揃えて、専用の電子申請システムにアクセスします。電子申請システム以外での申請は受け付けていないので注意しましょう。申請後のスケジュールは、次のように進みます。
- 事務局による審査・採択決定通知
- 採択事業者による交付申請
- 採択された事業計画書に基づき、補助事業を実施
- 中間検査
- 補助事業終了後、補助事業の実績報告
- 事務局による確定検査・交付額の確定
- 補助金の請求・事務局による補助金支払い
- 6年間の事業化状況・知的財産権等報告の実施
交付が決定した後も、各種手続きや検査で不備があれば、ものづくり補助金の返還が求められる可能性があります。例えば交付申請時に消費税込みの経費を申請すると、消費税相当額の返還となります。
消費税はものづくり補助金の補助対象経費ではない!
補助事業にかかる設備投資の費用や備品購入代などの経費を支払う際、その経費にかかる消費税も業者や店舗へ支払います。この消費税は、補助対象経費ではありません。「60万円の設備を購入して消費税が6万円だから、66万円をものづくり補助金の経費として申請しよう」という判断は誤りです。
ものづくり補助金と消費税の関係について、詳細を見ていきましょう。
消費税はものづくり補助金の補助対象経費ではない!
税抜きでの申請が基本
ものづくり補助金の経費申請といった申請全般は、税抜きで行うのが基本です。消費税分を、補助金交付申請額の算定に入れることはできません。消費税等の除外については、公募要領にも明記されています。
| 補助金交付申請額の算定段階において、消費税等は補助対象経費から除外して算定してください。 引用:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(16次締切分)P24 (7)交付申請書提出の際、消費税及び地方消費税額等仕入控除税額を減額して記載しなければなりません。 引用:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(16次締切分)P25 |
例えば16次公募要領では、次の項目について消費税抜きが明言されています。
- 補助対象外経費の公租公課(消費税および地方消費税額)
- 機械装置・システム構築費や技術導入費などの補助対象経費の上限額
- 設備投資の必要単価50万円の税抜き表示
このように、原則としてものづくり補助金の経費関係の記載には「税抜き」としっかりと書いてあります。
ものづくり補助金から消費税等が除外される理由として、仕入税額控除の仕組みが挙げられます。仕入税額控除とは、課税売上の消費税額(商品やサービスを売ったときに、相手から受け取る消費税)から、課税仕入れの消費税額(事業のために何かを購入した際に、相手へ支払う消費税)を差し引く制度です。
例えば商品10万円を販売して1万円の消費税を受け取り、5万円の備品を購入して5,000円の消費税を支払っていた場合、1万円から5,000円を差し引けます。この場合、事業者が納めるべき消費税は5,000円となります。
消費税の二重課税を防ぐのが、仕入税額控除の目的です。
仮にものづくり補助金申請時に消費税込みの経費にすると、仕入時に支払う消費税分まで交付対象になります。これでは「仕入税額控除による還付」と「ものづくり補助金の交付」が重複し、実質的に消費税を納めていないことになります。還付と交付の二重取りを防ぐために、ものづくり補助金の経費は税抜きでの申請が基本です。
なお、気をつけるのは経費申請のときのみです。補助事業中の課税仕入れとして支払った消費税は、通常通り仕入税額控除の対象になります。例えば補助事業の一環で500万円の機械設備に消費税50万円を支払ったときは、50万円分を課税売上の消費税額から差し引けます。
税込みで申請した場合、消費税相当額の返還が求められることも
各種経費等の申請を税込で申請したときは、補助金にかかる部分について消費税相当額の返還を求められる可能性があります。
もし誤って消費税込みの経費を申請したときは、早めに訂正を行いましょう。故意に消費税額分を申請したまま補助金を受け取ると、消費税相当額を超える返還を求められるかもしれません。

ものづくり補助金の他に注意すべき対象外経費
消費税を始めとする公租公課は、ものづくり補助金の補助対象経費の範囲外です。公租公課の他にも、注意すべき対象外経費が存在します。
ものづくり補助金の他に注意すべき対象外経費
補助事業期間外に発注、納品、検収等を実施したもの
ものづくり補助金の補助対象経費は「補助期間中に発注、納品、検収等を実施したもの」であるため、補助事業開始前や終了後に発生した経費は対象外になります。
リース契約やレンタルなどの借用の場合は、交付決定後に契約したものが対象です。補助事業期間を超えた後も借用を続けて発生した費用は、原則として対象外になります。
またものづくり補助金は事業再構築補助金とは異なり、事前着手制度はありません(16次公募時点)。
不動産や車両の購入費用
不動産や車両の購入費用は、消費税と同じくものづくり補助金の対象外経費です。
ただし車両に関しては、「事業所や作業所内のみで走行し公道を自走できないもの」および「税法上の車両および運搬具に該当しないもの」は対象になります。要は、補助事業の実施に必要不可欠で他の用途で使用できない車両なら、経費申請できます。
一方で不動産に関しては、特別な措置も存在しません。不動産関係なら他にも、「工場建屋、構築物、簡易建物(ビニールハウス、コンテナ、ドームハウス等)の取得費用、およびこれらを作り上げるための組み立て用部材の取得費用」が対象外です。
汎用性があるもの購入費
ものづくり補助金の補助事業実施を目的とした使用以外にも、さまざまな事業で使える汎用性あるものの購入費は、消費税と同じく対象外経費です。16次公募要領では、次のものが挙げられていました。
- 事務用パソコン
- プリンタ
- 文書作成ソフトウェア
- タブレット端末
- スマートフォン
- デジタル複合機
ただし、「補助事業の製造ラインの管理システムしか入っていないパソコン」「キャリア契約がなく補助事業関係のデータしか閲覧・記録できないスマートフォン」といった、補助事業のみに使用することが明らかなものは補助対象経費に含まれます。
なお、上記の例に限らず補助事業実施のために取得した財産全般は、補助事業以外での使用は原則として禁止されています。
さらに処分制限期間においては、財産を勝手に処分(売却、無償・有償譲渡、交換、貸付、担保に供する処分、廃棄など)することも認められていません。処分を求めるときは、財産処分の手続きが必要になります。
補助金の書類作成・送付に係る費用
ものづくり補助金の事務局へ送付する各種書類(報告書など)の作成や申請、送付にかかる費用は、消費税と同じく対象外経費です。書類作成の代行をお願いしたときにかかる依頼料も、同じく対象外経費になります。

ものづくり補助金で消費税以外の対象外経費がわからず不安なら株式会社補助金プラスにご連絡を
ものづくり補助金の対象経費判定は複雑で、消費税以外にも多くの対象外項目が存在します。経費区分を間違えると採択後の実績報告で大きな問題となるため、事業者様にとって重要な判断ポイントです。
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まとめ
ものづくり補助金の経費申請は、消費税分の補助金交付と還付の二重取りを防ぐためにすべて税抜きの金額を申請します。税込み申請だと、消費税相当額の補助金の返還となる可能性があるので注意しましょう。
ものづくり補助金の申請は、消費税以外にもさまざまな注意点が存在します。公募要領の確認や専門家への相談を行い、正しい事業計画書の作成と申請ができるようにしましょう。



