IT導入補助金を活用するには、事前に事務局の審査に通過し、採択される必要があります。どれくらいの事業者が採択されるのか知りたい、と考える方も多いでしょう。
本記事では、IT導入補助金のこれまでの採択率や採択されるポイントを紹介します。ぜひIT導入補助金に申請する際の参考にしてください。
IT導入補助金とはどんな補助金なのか、まずは以下で説明していきます。
IT導入補助金は、企業の業務効率化やDX化を目的とし、労働生産性をアップできるようなITツールの導入を補助してくれる補助金です。基本的にITソフトウェアの導入費が対象経費です。
対象企業は中小企業や小規模事業者で、中小企業は業種ごとに資本金や従業員の上限が定められています。その他さまざまな要件があり、全ての要件を満たしている企業がIT導入補助金に申請することができます。
IT導入補助金を活用したい場合はまずは申請を行い、その結果採択される必要があります。希望したすべての事業者が補助金を活用できるわけではないので注意してください。
申請はIT導入支援事業者と呼ばれる事業者とパートナーシップを結んで行います。導入するツールもIT導入支援事業者が提供し、事務局が事前に認定しているものに限られます(複数社連携IT導入枠を除く)。
IT導入補助金には申請枠が4つあります(インボイス枠のみ2つの類型に分かれています)。それぞれ採択率も異なります。自社の悩みやニーズに従い、どの申請枠が最も適切かを選びましょう。
申請枠 | 概要 |
通常枠 | 自社に必要なITツールを導入できる申請枠 |
インボイス枠(インボイス対応類型) | インボイス制度対応の会計・受発注・決済ソフトとソフトの使用に資するハードウェアの導入ができる申請枠 |
インボイス枠(電子取引類型) | 取引関係における発注会社側がインボイス制度対応の受発注ソフトを導入し、そのアカウントを受注会社側に付与して受発注時に使用する場合、ソフト導入費を補助してくれる申請枠 |
セキュリティ対策推進枠 | サイバーセキュリティ対策のためのソフトを導入できる申請枠 |
複数社連携IT導入枠 | 複数の事業者が協力して地域DX等に取り組む際、ITツールやハードウェアの導入費を補助してくれる申請枠 |
参照:IT導入補助金2024
IT導入補助金の補助対象や補助率、補助額は申請枠によって異なります。
| 補助対象 | 補助率 | 補助額 |
通常枠 | ・ソフトウェア ・オプション ・役務 | 1/2以内 | 5万円以上150万円未満(1プロセス以上)、150万円以上450万円以下(4プロセス以上) |
インボイス枠(インボイス対応類型) | ・ソフトウェア(必須) ・オプション ・役務 ・ハードウェア | 50万円以下は3/4以内(中小企業)、4/5以内(小規模事業者) 50万円超〜350万円以下は2/3以内 | 〜350万円 |
インボイス枠(電子取引類型) | ・受発注ソフト ・クラウド利用料(最大2年分) | 2/3以内(中小企業、小規模事業者等)、1/2以内(その他事業者等) | 〜350万円(下限なし) |
セキュリティ対策推進枠 | ・ITツールの導入費用 ・サービス(最大2年分) | 1/2以内 | 5万円以上100万円以下 |
複数社連携IT導入枠 | ・基盤導入経費 ・消費動向等分析経費 ・その他経費 | ・基盤導入経費 ソフトウェア、ハードウェアなど導入するもの、またグループ構成員人数別に異なる
・消費動向等分析経費 2/3以内 ・その他経費 2/3以内 | ・基盤導入経費 ソフトウェア、ハードウェアなど導入するもの、またグループ構成員人数別に異なる
・消費動向等分析経費 50万円以下×グループ構成員 ・その他経費 200万円以下 |
参照:IT導入補助金2024
何を導入するか、どの申請枠を活用するかによって補助される金額も変わります。補助率、補助額を確認し、おおよその補助額のシュミレーションをしておくと良いでしょう。
インボイス対応類型については以下で補助金額のシュミレーションをすることができます。インボイス対応類型の活用を考えている方は、ぜひ確認してみてください。
IT導入補助金2024 補助金シュミレーター
補助対象経費や補助率・補助額について詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
IT導入補助金を活用するには、さまざまな手続きを踏まなくてはなりません。やらなくてはならないことは上から順番に以下の通りです。
それぞれ時間がかかるため、準備はなるべく早めから行うのがおすすめです。例えばgBizIDプライムアカウントの取得には2週間ほど時間がかかると言われています。余裕を持って進めていきましょう。
また、採択後の手続きは以下のようなものがあります。
- 補助事業の開始(ツールの契約や購入から始める)
- 事業実績を報告する
- 補助金が交付される
- 事業実施効果を報告する
補助金が交付されるのは、事業実績報告が完了し、補助金額が確定した後です。上記のスケジュールを事前に確認し、何をどのタイミングで行うべきなのかシュミレーションしておきましょう。
IT導入補助金の採択率は、申請枠や締切回ごとに異なります。以下では、2023年のIT導入補助金の採択率を申請枠別に確認しましょう。
2023年と2024年は申請枠が一部異なります。下記では2023年のデータをもとに解説します。
通常枠の2023年募集分の申請者数や採択者数、採択率は以下の通りです。2023年の通常枠は補助金額ごとにA類型とB類型に分かれていました。
| 申請者数 | 採択者数 | 採択率 |
5次締切 通常枠 A類型 | 1,186 | 911 | 76.8% |
5次締切 通常枠 B類型 | 23 | 14 | 60.9% |
6次締切 通常枠 A類型 | 2,188 | 1,691 | 77.3% |
6次締切 通常枠 B類型 | 56 | 34 | 60.7% |
7次締切 通常枠 A類型 | 2,802 | 2,154 | 76.9% |
7次締切 通常枠 B類型 | 51 | 31 | 60.8% |
8次締切 通常枠 A類型 | 2,001 | 1,546 | 77.3% |
8次締切 通常枠 B類型 | 44 | 25 | 56.8% |
9次締切 通常枠 A類型 | 2,324 | 1,754 | 75.5% |
9次締切 通常枠 B類型 | 53 | 36 | 67.9% |
10次締切 通常枠 A類型 | 3,330 | 2,531 | 76.0% |
10次締切 通常枠 B類型 | 71 | 42 | 59.2% |
参照:IT導入補助金2024 交付決定事業者一覧及び交付申請件数2023(後期事務局)
申請者が最も多いのが通常枠です。
補助金額の安いA類型のほうが採択率が高めの傾向です。しかし、2024年はA類型、B類型の区別がなくなったので、おおよそ50〜75%程度の採択率になるでしょう。少なくとも2社に1社は採択されているようです。
2023年もセキュリティ対策推進枠がありました。以下はそれぞれの締切回の採択率です。
| 申請者数 | 採択者数 | 採択率 |
5次締切 セキュリティ対策推進枠 | 15 | 11 | 73.3% |
6次締切 セキュリティ対策推進枠 | 30 | 27 | 90.0% |
7次締切 セキュリティ対策推進枠 | 34 | 30 | 88.2% |
8次締切 セキュリティ対策推進枠 | 22 | 18 | 81.8% |
9次締切 セキュリティ対策推進枠 | 36 | 33 | 91.7% |
10次締切 セキュリティ対策推進枠 | 30 | 20 | 66.7% |
参照:IT導入補助金2024 交付決定事業者一覧及び交付申請件数2023(後期事務局)
セキュリティ対策推進枠は、他の申請枠よりも採択率が高くなっています。中には90%を超える採択率の締切回もあります。
しかし、直近の10次締切では採択率が一気に下がり、66.7%になっています。採択率が高いからといって手続きに手を抜いてしまうと不採択につながることもあり危険です。しっかり対策してから申請しましょう。
2024年から廃止されてしまった申請枠が、デジタル化基盤導入枠です。この申請枠も3つの類型に分かれていて、デジタル化基盤導入類型、商流一括インボイス対応類型、複数社連携IT導入類型があります。
まずはデジタル化基盤導入類型の採択率から以下に示していきます。
| 申請者数 | 採択者数 | 採択率 |
7次締切 デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型) | 3,337 | 2,727 | 81.7% |
8次締切 デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型) | 2,557 | 2,059 | 80.5% |
9次締切 デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型) | 3,911 | 2,923 | 74.7% |
10次締切 デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型) | 3,487 | 2,844 | 81.6% |
11次締切 デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型) | 3,363 | 2,642 | 78.6% |
12次締切 デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型) | 3,257 | 2,464 | 75.7% |
13次締切 デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型) | 3,034 | 2,287 | 75.4% |
14次締切 デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型) | 2,989 | 2,324 | 77.8% |
15次締切 デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型) | 3,771 | 3,006 | 79.2% |
16次締切 デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型) | 3,580 | 2,716 | 75.9% |
17次締切 デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型) | 8,878 | 6,314 | 71.1% |
参照:IT導入補助金2024 交付決定事業者一覧及び交付申請件数2023(後期事務局)
デジタル化基盤導入類型はECサイト制作やホームページ制作にも活用できたことからかなり人気があり、申請者も多くいたようです。採択率は70〜80%程でした。
次に紹介するのはデジタル化基盤導入枠の中の商流一括インボイス対応類型です。この類型は2024年度のインボイス枠の電子取引類型とほとんど同じ内容のものなので、電子取引類型に申請したい方は以下のデータを採択率の参考にすると良いでしょう。
| 申請者数 | 採択者数 | 採択率 |
3次締切 デジタル化基盤導入枠 (商流一括インボイス対応類型) | 0 | 0 | – |
4次締切 デジタル化基盤導入枠 (商流一括インボイス対応類型) | 0 | 0 | – |
5次締切 デジタル化基盤導入枠 (商流一括インボイス対応類型) | 0 | 0 | – |
6次締切 デジタル化基盤導入枠 (商流一括インボイス対応類型) | 0 | 0 | – |
7次締切 デジタル化基盤導入枠 (商流一括インボイス対応類型) | 0 | 0 | – |
参照:IT導入補助金2024 交付決定事業者一覧及び交付申請件数2023(後期事務局)
この類型は申請者が0で、上記の締切回では採択者もいませんでした。そのため、インボイス制度に対応した受発注ソフトの導入を考えている方は、2024年のインボイス枠は狙い目の申請枠と言えるかもしれません。
次に紹介するのはデジタル化基盤導入枠の複数社連携IT導入類型です。この類型も2024年の複数社連携IT導入枠と同じものなので、活用を考えている方はぜひ以下の採択率を参考にしてください。
| 申請者数 | 採択者数 | 採択率 |
3次締切 デジタル化基盤導入枠 (複数社連携IT導入類型) | 1 | 1 | 100.0% |
4次締切 デジタル化基盤導入枠 (複数社連携IT導入類型) | 2 | 2 | 100.0% |
5次締切 デジタル化基盤導入枠 (複数社連携IT導入類型) | 1 | 1 | 100.0% |
参照:IT導入補助金2024 交付決定事業者一覧及び交付申請件数2023(後期事務局)
こちらも申請者はかなり少なく、採択率は上記のデータだと毎回100%です。複数社連携IT導入枠も採択率されやすい申請枠と言えるので、ぜひ活用してみてください。
IT導入補助金を活用したくても、まずは採択されなければなりません。どのようにしたら採択される可能性を上げることができるのか、4つのポイントを以下で解説します。
申請時に提出する事業計画を実現可能な現実的なものにするように心がけましょう。
補助金をせっかく交付する事業になるので、本当に実現可能なのかという点を事務局は見定めて判断しています。また、実際に採択された後はその事業計画通りに進めていかなくてはならないため、あまりにも突飛な事業計画にしてしまうと後に苦労することになります。
補助金に採択されることを目標とするあまり、非現実的な事業計画を作成しないように気をつけましょう。
しっかりと自社の現状や強み、そして弱みを認識し、ITツールの導入によって自社の状況をどのように解決できるのかを具体的に示すように心がけてください。
IT導入補助金には、加点項目というものがあります。それぞれの申請枠ごとに加点項目があるので、なるべくそれらを満たすことによって採択の可能性を上げることができます。
加点項目は以下から確認することができます。自分の申請したい枠ではどのような加点項目があるのか確認し、ぜひ活用してみてください。
IT導入補助金2024 加点項目
また、加点項目を満たすと同時に減点項目をなるべく減らしておくことも大事です。以下の公募要領に減点項目、減点措置についての記載もあります。もしも減点項目に該当したとしても、申請前に改善できる場合があるので必ず確認しておきましょう。
IT導入補助金2024 公募要領
申請時に不備があると、どんなに良い事業計画等を作成していても不採択につながってしまいます。まず、申請時に不備がないかどうかは徹底的に確認するようにしてください。
申請時によくある不備としては以下のようなものがあります。
上記の点に気をつけて、不備のない申請をしましょう。
自社だけで申請手続きを進めていくのは時間と手間がかかる上に、上記のような不備が起こってしまう可能性もあります。不備なく、採択されるような申請を効率的に進めていくためにはIT導入補助金の申請支援を行っている専門家に相談してみるのも一手です。
申請支援を行なっている機関はたくさんあります。ぜひこれまでの実績などが高い機関に相談してみてください。スムーズで確実な申請の手助けをしてくれるでしょう。
採択を目指していたとしても残念ながら不採択になり、IT導入補助金を活用できなくなる場合もあります。その場合、もうIT導入補助金には申請できないのかと不安になってしまう方もいるでしょう。
不採択になった場合でも、次の締切回に間に合えば再度申請することが可能です。同年度内なら何度でも再申請することができるのです。また、過去に採択されたことがある場合でも交付決定日から12ヶ月以上が経過していれば再申請が可能です。
しかし、一度不採択になったということは何らかの理由があるはずです。再申請する前に、必ず前の事業計画や書類などを見直し、次は不採択にならないように心がけましょう。先述したように、専門家に相談して次は確実に採択を狙えるようにするのもおすすめです。
株式会社補助金プラスでも、IT導入補助金に申請したい事業者様に向けたサポートを行なっています。これまでにも多くの事業者様をサポートした実績があり、採択率は90%です。事業者様それぞれの強みを活かした実現可能な事業計画の作成をお手伝いします。
基本的にオンライン対応なので、遠方にいる事業者様のサポートも可能です。小さなお悩み、ご相談でも初回無料相談でぜひお聞かせください。事業者様の現状を踏まえ、採択に向けたアドバイスをさせていただきます。
IT導入補助金の採択率は申請枠によって異なりますが、2023年度のデータでは少なくとも50%以上、2社に1社は採択されていたようです。
IT導入補助金に採択されるには、実現可能な事業計画の作成や加点項目の利用など、さまざまなポイントがあります。なるべくポイントを多く抑え、採択を狙えるようにしましょう。また、専門家の手を借りるのも有用な方法です。
ITツールの導入時に便利に使えるIT導入補助金、ぜひ活用してみてください。