【2024.3】ものづくり補助金のデジタル枠とは?活用方法や採択のポイントを徹底解説!
ものづくり補助金には、特定の要件を満たすことで申請できる「デジタル枠」があります。通常枠よりも補助率が高くなる等のメリットがありますが、申請の際に「自社の事業はこれに該当するのだろうか」と疑問をもっている方も多いでしょう。
この記事では、デジタル枠についての概要や申請要件、更にはデジタル枠でものづくり補助金の採択を目指す際のポイント等についても解説します。
- ものづくり補助金のデジタル枠の概要がわかる
- ものづくり補助金のデジタル枠を申請するための要件が理解できる
- ものづくり補助金のデジタル枠の具体的な活用方法やポイントがわかる
ものづくり補助金のデジタル枠の概要
ここでは、ものづくり補助金のデジタル枠についての基本的な内容をご紹介します。
ものづくり補助金のデジタル枠の概要
デジタル枠の目的
ものづくり補助金は、原則として中小企業や個人事業主の設備投資を支援するものです。そのような設備投資の中でも「DX(デジタルトランスフォーメーション)」に関する商品やサービスの開発、又はデジタル技術を用いた生産プロセスやサービス提供方法の導入を支援するのがデジタル枠です。
このデジタル枠は、DXを推進する国の施策の一貫として設けられているものなので、その趣旨を反映した特別の要件が複数設けられています。これらの要件については、後で詳しく解説します。
デジタル枠で受け取れる金額と補助率
デジタル枠でものづくり補助金の交付を受ける場合、その最大補助額は通常の枠で申請した場合と同じです。すなわち…
・従業員5人以下の場合 ⇒ 最大750万円まで
・従業員6~20人の場合 ⇒ 最大1,000万円まで
・従業員21人以上の場合 ⇒ 最大1,250万円まで
となります。
一方で、補助率については通常枠よりも優遇されており、通常枠では事業計画に要する費用のうち1/2を上限として補助されるところ、デジタル枠では「2/3」の割合で補助を受けることができます。
ものづくり補助金の詳しい補助率や上限金額はこちら
デジタル枠の通常枠との違い
ここでは、デジタル枠と通常枠での違いを改めて整理したいと思います。
デジタル枠の通常枠との違い
デジタル枠の補助率が高い
デジタル枠の特徴的な点の一つは、先ほども述べた通り、通常枠よりも補助率が優遇されていることです。通常枠では再生事業者や小規模事業者の場合を除き、事業計画の費用のうち1/2を上限として補助金の交付を受けることになりますが、デジタル枠の場合は2/3を上限として交付を受けることができます。ちなみに、再生事業者や小規模事業者の場合は通常枠でも2/3の補助率で交付を受けられますので、デジタル枠で申請する必要性は薄いでしょう。
デジタル枠の採択率が高い
デジタル枠の特徴としては、通常枠よりも採択率が高い傾向にあるという点も挙げられます。
第10回公募においては、通常枠の採択率が58.8%だったのに対しデジタル枠の採択率は66.7%で、次の第11回公募においても通常枠の採択率56.5%に対してデジタル枠の採択率は66.9%となっていました。デジタル枠の採択率が通常枠に比べて10%程度高くなっているのが見て取れます。
しかしながら直近の第12回公募においては、デジタル枠の採択率は約59%となっているようで、通常枠とほぼ同じ数値となっています。第12回公募では前回と比べてデジタル枠の応募が300件近く減少しているので、この現象は一過性のものである可能性もありますが、この点については注視するべきといえます。
なお、これまではデジタル枠で不採択となっても通常枠で再審査を受けられましたが、14次公募以降は公募要項にこの旨が記載されていないことから、おそらく今後は二重の審査はなされないものと思われます。ご注意ください。
ものづくり補助金のデジタル枠を申請するための要件
ここでは、デジタル枠でものづくり補助金を申請する場合に要求される特別要件について解説します。
デジタル枠を申請するための要件は?
デジタル技術の活用を行う事業であること
デジタル枠の特別要件の一つは、補助を受けようとする事業が「DXに資する革新的な製品・サービスの開発」または「デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善」に該当するものであることです。
より具体的に言えば、
「DXに資する革新的な製品・サービスの開発」は、AIやIoT等のデジタル技術を主な内容として含む製品、部品、サービス、ソフトウェアを開発する事業
「デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善」は、AIやIoT、ロボットシステム等のデジタル技術を活用する形で、従来の業務フローや生産プロセスを大きく変革する事業を指します。
ですので、単にデジタル製品を導入したり、データの電子化を行ったりするだけの事業はデジタル枠の対象とはなりません。デジタル枠は中小企業におけるDXを強く推進するという趣旨で設けられたものですから、デジタル枠で申請を目指す場合の事業計画は、DXに貢献するような製品、サービス等を開発したり、デジタル技術を活用して従来の業務フローを改良するようなものでなければならないのです。
DXの自己診断を提出すること
デジタル枠の特別要件の二つ目は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対し
て、DXの進捗に関する自己診断を提出していることです。
自己診断は、経済産業省で公開されている「DX推進指標」を基準として行う必要があり、IPAの公式サイトにある結果入力フォームでその内容を入力することで提出となります。
なお、この自己診断の提出はものづくり補助金の応募締め切り日までに行う必要がありますので、ご注意ください。
「SECURITY ACTION」の宣言を行うこと
デジタル枠の特別要件の三つ目は、上記と同じ独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が規定している「SECURITY ACTION」の宣言を行うことです。この「SECURITY ACTION」は、IPAが定めた情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度で、IPAから認定されるものではありません。
また、取り組みの度合いによって「一つ星」と「二つ星」が用意されていますが、デジタル枠を申請するにあたってはどちらの宣言でもかまいません。この「SECURITY ACTION」に関する要件は、IPAが定めた基本的なセキュリティ対策を行うことを宣言するだけで満たされますから、忘れずに早いうちから宣言することをおすすめします。
ものづくり補助金のデジタル枠の具体的な活用方法は?
ここでは、具体的にどのような事業がデジタル枠で補助されるのかをご説明します。
上の図はデジタル枠の想定活用事例を示したもので、飲食業、小売業、製造業におけるデジタル枠の活用の具体的な事例が示されています。
まず、飲食業や小売業における需要予測システムの導入については、上のデジタル枠の要件①で述べた「デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善」にあたります。需要予測システムの導入は、デジタル技術を用いて従来の業務フローを改善しているという点で、この要件を満たす典型的な場合といえるでしょう。
次に製造業における新製品開発については、デジタル枠の要件①で述べた「デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善」にあたるようなものであれば、これもデジタル枠の対象として申請が可能です。
最後に、AIを活用した製造システムの導入については、こちらもデジタル枠の要件①で述べた「デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善」にあたります。
これらを見てわかるように、デジタル枠が想定しているのは、主にAI等のデジタル技術を活用した業務フローの改善や生産プロセスの改良、新製品開発となっています。デジタル枠で申請する場合は、計画している事業がそのような特徴を有するものとなるかが特に重要と言えるでしょう。
ちなみに、デジタル枠の対象は上の図に示された業種に限られるわけではありません。
「ものづくり補助事業公式ホームページ」で公表されている採択例においては、どの枠で採択されたかまでは公表されていませんが、上記以外の業種でも「AIを用いたビル管理のDX化」等の、明らかにデジタル枠で申請したと考えられる事業計画が多数採択されていることから、上記の図で示されている飲食業、小売業、製造業以外の業種でもデジタル枠で採択される可能性は十分にあると考えられます。
デジタル枠に採択されるためのポイント
デジタル枠に採択されるためのポイント
ここでは、デジタル枠で採択を勝ち取るためのポイントをいくつかご紹介します。
デジタル技術の活用方法を具体的に説明する
デジタル枠は国のDX推進施策の一貫ですから、デジタル枠で申請する場合はその事業計画がDXに関するものであること、つまり「デジタル技術をこのように活用することによって、このような形で自社のDXに寄与する」ことを十分に説明することが望ましいです。
その際には上の想定事例のように、デジタル技術を活用する複数の取り組みを計画に含めることも効果的と思われます。
デジタル技術の活用による効果を定量的に説明する
デジタル技術の活用方法を説明する際には、その活用による効果を定量的に説明するのもポイントです。そもそも補助金の申請全般において、その事業による効果を定量的に説明することは採択を勝ち取るうえで重要ですが、デジタル枠においては要件にDX進捗の自己診断が含まれていること等からも、特に定量的な評価を重視していると考えられます。
そのため、デジタル枠での申請の際には、通常枠の場合に比べてよりしっかりとした事業計画を練り上げ、「この計画によって製造コストを~%削減できる」「この技術の導入によって製造時間を~時間短縮できる」などといった内容を具体的、定量的に記載して申請することが求められます。
ものづくり補助金とAI
ものづくり補助金のデジタル枠はAIツールの導入やAI生成に利用できます。もちろん、通常枠でもAI関連に利用することが可能です。
現在、国は企業のデジタル化に対して様々な支援を行っています。そのため、ものづくり補助金もAI導入、デジタル化に利用することができるのです。AIツールを導入することによって生産性を上げることも可能になり、また新規事業を始めることもできるかもしれません。
AIの導入を考えている方は、ぜひものづくり補助金の活用を考えてみてはいかがでしょうか?
AI生成やAI導入でものづくり補助金に採択された事例
以下では、AI生成、導入でものづくり補助金に採択された事例を紹介します。
AI生成やAI導入でものづくり補助金に採択された事例
株式会社補助金プラスでコンサルした事例
以下の事業者様は、株式会社補助金プラスでコンサルし、ものづくり補助金に採択されました。AIを利用したシステム開発費を経費としてものづくり補助金に申請しました。
会社名:株式会社Tleez
業種:AIスタートアップ(システム受託)
金額:7,500,000円
新規事業:AI搭載広告作成支援システム
経費:AIの開発費、広告支援サービスの構築費
お客様の声
「先進的なAI開発を受託するシステム開発企業です。学会にAIに関する論文の発表を行うなど世界からも認められた高い技術力が強みです。より多くの人々、そして企業をご支援していくため、新たに自社の技術を生かした新規事業を行う必要がありました。様々調べる中でものづくり補助金の存在を知りましたが、最新のテクノロジーに精通したコンサルタントがおらず諦めていました。しかし、INUに依頼したところ、弊社の技術的強みや将来の展望などをうまくまとめてくださり、ものづくり補助金が採択されました。INUが事業のための提携先などを紹介してもらい事業進捗まで一貫して支援してもらえました。」
その他の事例
その他、AI関連でものづくり補助金に採択された事例を紹介します。
会社名:株式会社God-Wind
AI電子カタログを利用した新たな互助会営業方法を確立し生産性を向上
会社名:タビットツアーズ株式会社
GPSと連動したAI自動音声観光ガイドによる観光案内付バスツアー
会社名:有限会社柳沼ボデー工場
AI搭載デジタル機器導入による業務効率化・生産性向上
会社名:株式会社沼田屋タクシー
AI自動配車システムによる小規模タクシー事業者間Maas構築
会社名:株式会社トウヨーネジ
AI付き自走式補助ロボットの導入で、出荷業務の超効率化を実現
会社名:株式会社ファッションクロスフルシマ
AI搭載のX線検査機の導入による検知精度と生産効率の向上
会社名:三習工業株式会社
AI搭載画像判別センサと測定機導入による検査体制の刷新
会社名:株式会社オーケー光学
AI活用した顧客管理システム開発によるD2C事業への進出
まとめ
この記事では、デジタル枠の概要や要件、具体的な活用事例、採択の上でのポイント等について説明しました。デジタル枠は通常よりも多くの要件があり、注意すべきポイントも多くありますので、申請をお考えの方は専門家と相談することをおすすめします。