【2024.2】M&Aでの事業承継後に「ものづくり補助金」を活用してみませんか? 採択事例まで徹底解説!
企業の中には、M&A(企業買収)によって事業の拡大や新分野展開を考える事業者も多くあります。この記事では、M&Aの事業承継後に会社経営を軌道にのせるためものづくり補助金を活用した採択事例を紹介しながらものづくり補助金について解説します。
ものづくり補助金とは?
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業等に交付される補助金の1つです。
ものづくり補助金は、中小企業の総合的な経営力向上を目的としています。
令和5年度12月に新たに概要が変更となり、中小企業・小規模事業者等が、革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス等の省力化のための設備投資・システム構築を行い、以下の基本要件を満たす3~5年の事業計画に取り組む事業者に補助金が支払われます。
<基本要件>
- 付加価値額 年平均成長率3%増加
- 給与支給総額 年平均成長率1.5%増加
- 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上
上記の要件を満たせばM&Aを行った事業者も対象です。
働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等など、昨今の労働環境の相次ぐ制度改革に対応する事業にも活用することができます。
また新たに新設された省力化(オーダーメイド)枠においては補助上限額が8,000万円〜1億円と大幅に引き上げられています。交付された補助金は原則として返済する必要はなく、銀行融資のように担保・保証人が求められることもありません。よってものづくり補助金は申請に審査がありますが、引き続き人気の高い補助金制度となるでしょう。
ものづくり補助金とは?
ものづくり補助金の対象事業者
ではものづくり補助金の公募要領に記載されている対象事業者の具体的内容をみていきましょう。ものづくり補助金の対象事業者は、原則中小企業や個人事業主、特定非営利活動法人、社会福祉法人が対象となります。大企業は対象に含まれていません。M&Aを行った事業者も対象になりますが、あくまで中小企業規模までが補助金対象になります。
日本の中小企業の割合は、全企業数の実に99%になるのでほぼ全ての事業者が対象です。例外として、みなし大企業は補助金対象ではありません。
ものづくり補助金におけるみなし大企業についてはこちら
ものづくり補助金ではいくら貰える?
ものづくり補助金でいくら貰えるかは、最新の公募要領に詳しく記載されています。令和5年度12月に支援枠・類型が変更され補助金額の上限が大幅に引き上げられるとともに、支援枠の種類も変化しています。
支援枠の種類によって補助上限額・補助率は変わりますが、事業者の企業規模によって750万円から8,000万円の上限金額が貰えます。
また大幅な賃上げに取り組む事業者への支援として、補助事業終了後3~5年で大幅な賃上げに取り組む事業者は上限額に加え更に100万円~2,000万円が上乗せされます。
補助率は、製品・サービス高付加価値化枠の成長分野進出類型(DX・GX)が2/3で、その他は大方1/2です。
<以下の支援枠・類型の概要は令和5年度12月時点の情報です。>
省力化 (オーダーメイド)枠 | 製品・サービス高付加価値化枠 | グローバル枠 | ||
通常類型 | 成長分野進出類型(DX・GX) | |||
要件 | 省力化への投資 | 製品・サービスの高付加価値化 | DX/GXに資するもの | 海外事業の拡大・強化に資するもの |
補助上限 | 750万円~8,000万円 | 750万円~1,250万円 | 1,000万円~2,500万円 | 3,000万円 |
補助率 | 1/2 ※小規模・再生事業者2/3 ※1,500万円までは1/2、 1,500万円を超える部分は1/3 | 1/2 ※小規模・再生事業者2/3 ※新型コロナ加速化特例2/3 | 2/3 | 1/2 ※小規模2/3 |
*参考:https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r5/r5_mono.pdf
このように公募要領はその都度変更される場合があるので、必ず最新のものをチェックしておきましょう。
ものづくり補助金の申請方法・スケジュール
ものづくり補助金の申請は「公募期間内に事業計画書を電子申請する」という流れで行います。M&Aを行って事業承継した企業も同様です。電子申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要で、取得には3週間ほどかかることから早めにアカウントを作成しましょう。
ものづくり補助金の申請にあたっては、基本要件の「給与支給総額・事業者内最低賃金・付加価値額」の要件を全て満たす「3〜5年の事業計画」を策定し提出することが申請に求められる条件です。
取得したGビズIDでものづくり補助金の電子申請システムにログインし、事業計画書の入力や必要書類のアップロードを行い送信することでものづくり補助金の申請は完了です。
補助金の申請後、事業計画書等の審査が行われ、審査に通ると補助金の採択通知がシステムに送られてきます。事務局からの採択通知の後、事業申請者は交付申請を行い、その後交付決定を受けることで補助事業実施が可能となります。
このように、ものづくり補助金は申請の手続きから採択結果の通知、補助事業内容の変更届や事業完了の実績報告、補助金の受給など全てのやり取りがインターネット上で行われるので、ネット回線やプリンター環境は整えておいた方がスムーズです。
ではものづくり補助金の申請から補助金の受給に至るまでのスケジュールを、以下令和5年度12月時点版の公募スケジュールを参考にしながら確認していきます。
*参考:https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r5/r5_mono.pdf
<補助事業実施前>
申請には、事業計画書やその他様々な必要書類があるので準備をし、GビズIDにてログイン後電子システムにて申請処理を行います。
その後提出した書類を基に補助金事務局が審査を行います。(審査の結果がでるまで大体2か月程度要します)
審査に通過すると「採択通知」が電子システムに届きます。しかしこの採択通知では補助金支払いが認められたということではなく、その後に行う「交付申請」によって具体的な補助金額が決定します。交付申請では、実際に見積書や明細表等を確認しながら、事業者が行う補助事業内容の経費が補助金額として適切かどうか、ものづくり補助金の趣旨に沿っているかを細かく判断され「交付決定」となりようやく補助事業が実施できるのです。
*注意 交付決定が示される前の機材の発注や支払いにかかった経費は補助金の対象とならない点に留意しましょう。
<補助事業実施期間中>
補助事業実施期間中は、「遂行状況報告書の提出や中間監査」が行われます。
<補助事業完了後>
補助事業が完了した後は、「実績報告書」及び見積書・請求書等などの経費出納帳関連書類・機材の納品場所写真等の提出です。注意点として、第17次公募の分は令和6年12月10日までに実績報告まで完了する必要があります。延長はできません。電子システムから返送される書類の不備修正を行うとともに、事務局側からの「確定監査」を受け全ての書類が受理されると「補助金受給」となり、指定の口座に振り込まれます。
ものづくり補助金の採択率は?
ものづくり補助金の採択率は、直近のデータからみると一般型で約5割です。
ものづくり補助金はM&A後の設備投資に有効
ものづくり補助金はM&Aにて事業承継を行った後、会社の設備投資支援としてとても有効です。なぜM&A後にものづくり補助金を活用するのがおすすめなのか以下に解説していきます。
ものづくり補助金はM&A後の設備投資に有効
承継した事業の生産性向上を目指すなら最適
そもそも、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金) は中小企業・小規模事業者等が、革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス等の省力化のための設備投資・システム構築を支援する内容です。
M&Aにものづくり補助金が有効な理由は、M&A後に更なる事業拡大を進める際、 新たな機械設備導入の検討や異業種に参入する際の機械システムの構築費用など、新事業の生産性向上という目的がものづくり補助金の意義ととてもマッチするからです。
ものづくり補助金で要求される「革新性」を満たしやすい
ものづくり補助金を活用するには、申請の際に提出する事業計画書において、展開する補助事業の成長性や革新性など事業の有用性を客観的に盛り込みアピールする必要があります。
その点M&Aにて事業承継を行った企業は、2つ以上の会社が1つになる(合併)・会社が他の会社を買う(買収)という新たな可能性を持っていることになります。結果、ものづくり補助金採択においてのポイントである「革新性」の条件を満たしやすいといえます。
また、ものづくり補助金では加点項目があり、採択を目指すには加点項目にはできる限り対応することが必要です。加点項目の中の1つ、成長性加点もM&Aで事業承継した企業には強みといえるでしょう。
ものづくり補助金の加点項目と取得方法についてはこちら
承継した事業を詳細に分析する機会にもなる
M&Aにて事業承継を行った企業がものづくり補助金を活用することが有効なのは、承継した事業を詳細に分析する良い機会になるからです。
ものづくり補助金を申請するにあたって最も重要なのが事業計画書の作成です。事業者は、事業計画を策定することで、承継した事業の現状を客観的に把握することができるので経営課題を発見し且つ明確にすることができます。ものづくり補助金を活用することで、事業分析を行える時間が確保でき、経営する事業の目標・目標達成までの流れをはっきりさせることで売り上げの増加やコスト削減、人手不足を解消するための省力化についての施策などの経営改善に繋げられます。
M&Aで承継した事業に関する採択事例
では実際にM&Aで承継した事業に関してものづくり補助金を活用し採択された事例をみていきましょう。
M&Aで承継した事業に関する採択事例
後継者不足を機にM&A
①M&Aによる統合効果を発揮し、補助金を活用し生産性向上を果たす
事業者名 | MH精工株式会社 |
事業計画 | 最新鋭工作機械導入による異形精密難削材部品の高品質化と生産性向上による低コスト化 |
事業計画概要 | 同社は後継者不足を契機に、M&Aを行った。M&Aを実現させた企業同士は、創業当初より取引関係があり買収後は社名を変更し、現社名となる。M&A後はものづくり補助金を活用し高まる需要に向け生産性を向上させる最新のマシニングセンター等機械設備を導入した。両企業が元々持っていた技術を活かし、補いあうことで顧客に新たなサービスを提供できる統合効果を表している。 |
新規事業のためのM&A
②新事業展開のためM&Aを実施、補助金を活用し商品開発に取り組む
事業者名 | 株式会社西澤電機計器製作所 |
事業計画 | ロービジョン(弱視)患者の“視”生活を快適にする拡大読書器の開発 |
事業計画概要 | 明確なビジョンを掲げ、積極的にM&Aを行ってきた同社。医療・福祉機器分野への参入のため、眼科医療機器メーカーから拡大読書器の事業を承継した後、子会社化した。その後ものづくり補助金を活用し目の不自由な方向けの支援機器である拡大読書器の開発に取り組む。同製品は2014年にグッドデザイン賞を受賞。同社は更なる商品開発を続けている。 |
まとめ
M&Aで事業承継しその後の会社経営をハイスピードで行う支援として、ものづくり補助金を活用することはオススメです。M&Aを行った結果得られる革新性や新規性・成長性は、ものづくり補助金の加点項目に該当することもあり申請の上で相性が良いと考えられます。M&Aを実施or検討している事業者は、ぜひものづくり補助金活用を検討してみてください。