【2025.8】薬局もものづくり補助金を申請できる?薬関連の事業を行う会社が採択された事例も紹介

「薬局を運営しているけど、ものづくり補助金を申請できる?」
「薬局はものづくり補助金の対象になるの?」
薬局を運営していて、ものづくり補助金を利用したいと考えているけれど、申請が可能なのか悩んでいる方もいるでしょう。
結論から言うと、薬局でも申請が可能なケースはあります。ただし、保険診療との重複を避ける必要があるため、事業の内容によっては対象外となる場合があります。そのため、薬局がものづくり補助金に申請する際は保険診療と重複した事業にならないように注意が必要なのです。
この記事では、薬局がものづくり補助金を活用する際のポイントと、実際に採択された事例を紹介します。
- 薬局が活用できるものづくり補助金の対象経費がわかる
- 薬局がものづくり補助金に採択された事例を理解できる
- 薬局がものづくり補助金に採択されるためのポイントがわかる

ものづくり補助金について|薬局は活用できる?
では、ものづくり補助金とはどんな補助金なのでしょうか。以下で詳しく確認しましょう。
ものづくり補助金について|薬局は活用できる?
ものづくり補助金の概要
ものづくり補助金とは中小企業等に交付される補助金の一つで、正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といいます。
ものづくり補助金は、中小企業の総合的な経営力向上を目的としており、生産性向上に資する革新的なサービスや試作品の開発、生産製造のプロセス改善を行うための設備投資等の事業経費を国が支援する制度です。
交付された補助金は原則として返済する必要はなく、銀行融資のように担保・保証人が求められることもありません。よってものづくり補助金は申請に審査がありますが、応募件数の多い人気の補助金です。
ものづくり補助金の対象となる事業者
ものづくり補助金の対象事業者は、中小企業・個人事業主含む小規模事業者です。そのため、大企業を除いた多くの事業者が対象になるでしょう。
ただし、薬局と関連して以下のような事業は対象外と公募要領に明記されています。
⚫ 国庫及び公的制度からの二重受給となる事業。
・間接直接を問わず国(独立行政法人等を含む)が目的を指定して支出する過去又は現在の他の補助金、助成金、委託費等と同一の補助対象経費を含む事業。
・公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買い取り制度等との重複を含む事業、及び同一又は類似した内容の事業。
引用:ものづくり補助金 公募要領
薬局における調剤業務は、すでに公的医療保険からの調剤報酬を受け取っています。そのため、その業務に直結するような設備投資(例:調剤ソフトの導入など)は、保険診療と重複する事業とみなされ、対象外になるでしょう。
ただし、新規性や付加価値のある事業であれば採択される可能性はあります。補助金の対象になるかどうかは、事業内容次第と言えるでしょう。薬局がものづくり補助金の対象になるためには、保険診療と重複しない新規性のある取り組みであることが大切です。

ものづくり補助金の補助率と最大金額
ものづくり補助金の補助上限額と補助率は、従業員数別に以下のように設定されています。
製品・サービス高付加価値化枠
| 従業員数 | 補助上限金額 (補助下限額100 万円) | 補助率 |
| 5人以下 | 750 万円 | 中小企業 :1/2 小規模企業・小規模事業者及び再生事業者:2/3 |
| 6~20人 | 1,000 万円 | |
| 21~50 人 | 1,500 万円 | |
| 51 人以上 | 2,500 万円 |
グローバル枠
| 補助上限金額 (補助下限額100 万円) | 補助率 |
| 3,000万円 | 中小企業 :1/2 小規模企業・小規模事業者及び再生事業者:2/3 |
ものづくり補助金は企業規模で補助上限額と補助率が異なってきます。ものづくり補助金の補助上限額と補助率は従業員数で決まりますので一度確認しておいた方が良いでしょう。

薬局は小規模事業者にあてはまる場合が多いので、補助率2/3に適合する可能性が高いです。 例えば新しい調剤機械の導入に300万円の経費がかかったとしたら、そのうち200万円はものづくり補助金の対象になることになります。
無菌調剤室や散薬自動分包機など薬局の設備はどれも高額なので、これから新規事業で設備導入を検討する際は、ものづくり補助金を活用するのがおすすめです。
<補助率2/3となる小規模事業者の定義>
| 製造業・そのほか | 常時使用する従業員の数が 20 人以下の会社又は個人 |
| 商業・サービス業 | 常時使用する従業員の数が 5 人以下の会社又は個人 |
| 宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数が 20 人以下の会社又は個人 |
薬局が活用できるものづくり補助金の対象経費の例
ものづくり補助金の対象経費は多岐にわたりますが、薬局が主に活用しやすい対象経費は、「機械装置・システム構築費」、「専門家経費」、「原材料費」の3つだと考えられます。ただし、先述したように、普段の調剤業務のための経費で申請すると、保険診療と重複する業務とみなされ、対象にはならないので注意しましょう。
以下で、対象経費についてそれぞれ説明します。
薬局が活用できるものづくり補助金の対象経費の例
機械装置・システム構築費
機械装置・システム構築費は、補助事業のために使用される機械・装置、工具や器具の購入にかかる経費のことです。
これまでにものづくり補助金の機械装置・システム構築費として採択された例をあげると、
①無菌調剤室
②自動分包機
③監査支援システム
④薬品在庫管理システム
などがあげられます。
システム構築や調剤設備にかかる投資は高額なため、中小規模での薬局では資金の捻出が難しい場合がありますが、ものづくり補助金を活用するとかかった費用の最大で1/2~2/3も国から支援されるので、薬局が新規事業を始めるにあたり、ものづくり補助金を活用するのは大変メリットがあります。
専門家経費
ものづくり補助金における専門家経費は、実施する補助事業に関して、助言や技術指導を頼んだ専門家に支払う謝礼や旅費が対象です。薬局に関していえば医師や大学教授に調剤技術の助言を求めることや、中小企業診断士やITコーディネータにシステム関係のコンサルティングを依頼することに活用できます。
専門家経費は補助対象の上限額が公募要項に定められています。
<専門家経費謝金単価について>
| 大学教授、弁護士、弁理士、公認会計士、医師 | 1日5万円以下 |
| 大学准教授、技術士、中小企業診断士、ITコーディネータ | 1日4万円以下 |
*ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 (14次締切分)参照
また国内旅費に関しても全国中小企業団体中央会が定めた規定があるので詳細の確認が必要です。
原材料費
原材料費では、試作品の開発のために必要な原材料及び副資材の購入にあてた経費を計上できます。薬局の場合、例えば新しい健康食品や調剤補助製剤の施策開発に必要な現在長日などが該当します。
原材料費は補助事業期間内で使い切ることを原則としているため、試作品の開発に購入する原材料等の数量は必要最小限にとどめておかなければなりません。また補助事業終了時点での未使用残存品は補助対象とならないので注意が必要です。
薬局がものづくり補助金に採択された事例

以下では、過去にものづくり補助金で薬局が採択された事例を紹介します。
過去には、薬局がものづくり補助金に採択された事例も報告されています。ただし、ここで紹介するのはあくまで一部の事例であり、すべての薬局が同様に採択されるとは限りません。あくまでも、公募要領に記載されている「保険診療と重複する事業は対象外である」との規定に注意する必要があります。
薬局がものづくり補助金に採択された事例
①調剤×介護のデータベースシステム開発
| 事業者名 | 有限会社フジ薬局 |
| 事業計画 | ITを活用した高齢者に対する薬局・介護連携サービス事業計画 |
| 事業計画概要 | 調剤薬局と介護事業所をつなぐ医療データベースシステムを開発。高齢者のかかりつけ調剤薬局部門と、デイサービス部門をオンラインで結ぶことで、高齢者一人一人の健康・服薬管理、介護情報をリアルタイムで共有することを可能にしました。 |
②自動調剤分包機と調剤監査システムの導入
| 事業者名 | 株式会社 大平 |
| 事業計画 | 「AAA調剤監査システム」確立による“エラー率ゼロ”と人材育成戦略 |
| 事業計画概要 | 大型の自動調剤分包機と一包化監査システムを導入し、業務過多な薬剤師の負担軽減とヒューマンエラーを0にする調剤監査システムを確立。 |
本事例は、監査システムと分包機を組み合わせてエラーゼロ体制を確率する、という点が業務品質の向上、新しい仕組みとして評価されたと予想されます。
上記のように、薬局であっても「保険診療と重複せず、新規制や付加価値がある」と認められる取り組みであれば採択の対象になっています。

薬局がものづくり補助金に採択されるためのポイント
ものづくり補助金を利用するためには申請と審査通過が必要です。下記では、薬局がものづくり補助金に採択されるポイントを紹介します。
薬局がものづくり補助金に採択されるためのポイント
保険診療との重複に注意する
先述した通り、薬局の場合、調剤業務の多くは公的医療保険の調剤報酬によってカバーされています。そのため、通常の調剤業務に直結する設備投資(例:レセプトコンピュータの更新や調剤ソフト導入など)は、「保険診療と重複する事業」とみなされ、補助対象外となる可能性が高い点に注意が必要です。
採択を目指すには、あくまで「保険診療の延長線上ではなく、新しい付加価値を生む取り組み」であることが重要です。たとえば、地域包括ケアへの参入や、健康相談・予防サービスの強化、介護・在宅分野との連携など、薬局が地域の拠点として役割を広げる方向性が望まれます。
新サービスの提供を開始する場合はシナジーを記載する
ものづくり補助金を活用する補助事業を検討する際に、既存事業とのシナジーを考えることはより良い事業を行う上で重要です。シナジーとは”相乗”という意味で、既存事業と新規補助事業の「シナジー効果(相乗効果)」を見込んだ事業は採択事例でよくみられます。
<シナジー効果を狙うポイント>
・自社調剤薬局の強みを伸ばす補助事業
・自社調剤薬局の弱みをフォローする補助事業
ものづくり補助金に採択された薬局事業をみてみると、既存事業を補完するシステム開発や調剤知識を活かした漢方薬作成への業界進出、作業の効率化と時間短縮のための調剤設備を導入するなど既存事業とのシナジー効果をあげているという成果をみることができます。
自社薬局のSWOT分析を行い、ものづくり補助金を活用しながら既存事業とのシナジー効果を高くあげられる補助事業内容を検討していきましょう。
生産性を向上させるためにデジタル技術を活用する
経済産業省・中小企業庁ではデジタル技術を活用した生産性の向上(DX=デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。ものづくり補助金でも、2022年の第10次公募より「デジタル枠」が新規公募枠として新設されています。
またものづくり補助金申請の「通常枠」でも、デジタル技術の活用は審査項目・加点項目にあたります。(下記参照)
| 先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、環境に配慮した事業の実施、経済社 会にとって特に重要な技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、我が国のイ ノベーションを牽引し得るか。 *ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 (14次締切分)参照 |
薬局では会計システム(条件によっては対象外)や自動分包機などデジタル技術を活用することで、患者への薬剤処方のカウンセリングや健康相談の時間が確保できます。
デジタル技術による生産性の向上は、事業の拡大に繋がり、地域に根ざしたかかりつけ薬局として差別化と売り上げ増を見込めるでしょう。
株式会社補助金プラスではものづくり補助金申請支援をしています
株式会社補助金プラスは、ものづくり補助金に申請する事業者様の支援を行っています。もちろん薬局の支援も可能です。これまでの採択率は90%の高水準で、しっかりとヒアリングを行い事業者様の強みを反映した事業計画書の作成をお手伝いします。
株式会社補助金プラスはシステム関連にも強く、設備導入にとどまらないシステム開発やシステム導入という目的での申請もお手伝い可能です。無料の相談も受け付けていますので、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
薬局でもものづくり補助金を活用して採択された事例は存在します。ただし、保険診療に直結する業務に関連した設備投資は対象外となる場合があるため、新規性や付加価値のある取り組みであることが重要です。
自社の強みや地域ニーズを踏まえた新サービスやシステム導入、業務効率化に向けた設備投資などは、補助金を活用することで高額な経費の負担を軽減し、事業拡大や差別化に役立てることができます。
まずは自社の現状を分析し、保険診療と重複しない形で補助事業の計画を練ることが、採択への第一歩となるでしょう。




