2025年の4月から第一回公募が開始した中小企業新事業進出補助金(以下、新事業進出補助金)は、新規事業にかかる経費が補助され、かなり幅広く活用できます。しかし、新事業進出補助金に採択され、実際に補助金が給付されるまでには、交付申請や補助事業の実施、実績報告などのプロセスを経るため1年以上かかるでしょう。
今回は、採択後に行わなければいけない交付申請について解説をします。「見積依頼書は必要?」「いつまでに何を用意すれば良い?」などの不安もあるでしょう。交付申請を行う際はぜひ本記事を参考にしてみてくださいね。
この記事の目次
交付申請について解説する前に、新事業進出補助金とは何かについて説明します。
新事業進出補助金は、2025年から募集が開始した補助金です。新たに新設された補助金で、事業再構築補助金の後継補助金と言われています。
内容は事業再構築補助金と同じく、中小企業や小規模事業者が新事業を始める際にかかる経費を支援してくれる制度です。活用するには審査を通過しなくてはならず、事業計画書等をもとに審査が行われます。
現在、第一回公募は以下のようなスケジュールが発表されています。
引用:中小企業新事業進出補助金
新事業進出補助金は多額の金額を受け取れるということが発表されています。いくら受け取ることができるのかは事業者ごとに異なりますが、補助上限金額と補助率を確認すると、自社が大体いくら受け取ることができるのかのシュミレーションができるでしょう。
以下は新事業進出補助金の補助上限金額と補助率を表したものです。
従業員数 | 補助上限金額 | 補助率 |
従業員数20人以下 | 2,500万円(3,000万円) | 1/2 |
従業員数21~50人 | 4,000万円(5,000万円) |
従業員数51~100人 | 5,500万円(7,000万円) |
従業員数101人以上 | 7,000万円(9,000万円) |
※補助下限750万円
※大幅賃上げ特例適用事業者(事業終了時点で①事業場内最低賃金+50円、②給与支給総額+
6%を達成)の場合、補助上限額を上乗せ。(上記カッコ内の金額は特例適用後の上限額。)
参照:中小企業新事業進出補助金
上記はあくまでも補助上限金額なので、全ての事業者が満額を受け取れるわけではありません。自社の事業内容を確認しながら、おおよそいくら受け取ることができるのか確認してみましょう。
新事業進出補助金に申請する上で、交付申請は欠かせません。採択が決定したら2ヶ月以内に行わなくてはならないのが交付申請です。どのような事業でどのような経費に補助金を活用したいかを明確化し、交付申請書等の必要書類を事務局に提出することをいいます。この交付申請を期限以内に行わないと、採択取り消しになる場合もあるので注意しましょう。
しかし、交付申請を行ったらそれで終わりではありません。採択され、交付申請をしたらすぐに補助金を受け取れると考える方も多いでしょう。
給付金や融資と異なり、新事業進出補助金は採択後にすぐ給付されるわけではありません。新事業進出補助金に採択された後に交付申請を行い、その後に実際に事業を開始し、終了後に事業についての報告をしなければ、補助金の給付はされません。実績報告後、ようやく補助金を受け取ることができます。
実際に新事業進出補助金の全体のスケジュールは以下の通りです。
引用:中小企業新事業進出補助金
補助金の給付は、報告が完了した後です。採択直後に受け取れるわけではない点に注意しましょう。
新事業進出補助金の交付申請の方法や概要について、以下で詳しく解説していきます。
まず、交付申請とは何かを説明していきます。
交付申請とは、経費の審査のことです。新事業進出補助金に申請して採択されても、それはあくまでも新事業進出補助金の事業計画が審査通過しただけにすぎません。そのため、新事業進出補助金で採択された後に改めて交付申請を行い、経費の審査を受けなくてはなりません。交付申請の段階で一部経費が認められないこともあり得ます。
新事業進出補助金に申請する際は、事業にかかる経費の見積書や見積依頼書が必要だと耳にする方も多いでしょう。
新事業進出補助金の申請の際には特段見積書・見積依頼書などは不要ですが、交付申請の際は見積書・見積依頼書など価格の妥当性がわかる書類が数多く必要になります。
また各経費によって交付申請に必要な書類が全く異なり、事務局の案内に記載がない書類も場合によっては交付申請で必要になるので、不備なく1回で交付決定されるケースは少ないでしょう。可能であれば、早い段階で見積書・見積依頼書の準備をしておくのがおすすめです。
交付申請は書類を準備しJグランツで申請を行います。書類は数多く必要なため、補助事業の手引きを読み込みながら行うのがおすすめです。以下で新事業進出補助金の交付申請に必要な書類も解説しますので、参考にしてください。
交付申請は採択から2ヶ月が期限となっています。それを過ぎると採択取り消しになる可能性もあります。
申請枠によって異なりますが、事業実施期間が定められています。例えば交付決定日から12カ月以内に着手しなければならない等定められています。交付決定をしなければ事業を始めることはできませんので、交付決定が遅れれば遅れるほど事業実施期間が短くなってしまいます。そのため、交付申請はなるべく早めに行うのがおすすめです。
それでは、新事業進出補助金で交付申請を行う際に必要な書類について以下で解説します。まだ新事業進出補助金の交付申請で必要な書類については情報がないので、事業再構築補助金の交付申請を例に挙げて解説します。
以下は、事業再構築補助金において交付申請する際に全ての事業者が共通して用意しなければならない書類として設定されていたものです。
交付申請書別紙1というのは、事業再構築補助金で申請した内容がエクセルファイルになっている書類のことです。経費割合の変更や事業実施場所の変更は別紙1を編集して再度提出をすれば大丈夫でした。
また、50万円以上(税抜き)の経費を交付申請する際は、2社以上の会社から見積書を同条件で取得する必要があります。見積書の内訳の項目が異なると、交付申請で不備とみなされる可能性があるので注意しましょう。
新事業進出補助金においても、おそらく似たような書類の提出が求められると予想されます。
交付申請書別紙1は、事業再構築補助金の結果が記載されているJグランツの画面からダウンロードできました。
以下は、法人が交付申請を行う際に必要な書類です。
法人は直近の決算書類が必要になりますが、応募時点で提出をしていた場合は、交付申請では再度添付する必要はありません。
しかし、申請から交付申請までの間に決算期を跨いでいて、新たに決算書を申告している場合は最新の決算書が必要でした。また、3ヶ月以内に発行された履歴事項全部証明書も併せて提出する必要がありました。
じぎょうさいこうちく補助金において、個人事業主が交付申請時に必要な書類は以下でした。
個人事業主の場合、2期分の確定申告書第一表と青色申告決算書(または白色申告書)が必要でした。こちらも応募時点で提出をしていた場合は、交付申請で再度添付する必要はありません。しかし、申請から交付申請までの間に確定申告を行った場合は、最新の書類が必要でした。
事業再構築補助金の交付申請では、各経費の証明書類の提出が必要でした。必要な書類は対象経費の項目ごとに異なっており、以下のように設定されていました。
新事業進出補助金もほとんど同じ対象経費が設定されているので、必要書類も同じようなものが求められるでしょう。以下では、事業再構築補助金の例をもとに必要書類について説明します。
建物費を使って建物の改修を行う場合、交付申請時に以下の書類が必要でした。
建物費で改修を行う場合は、見積書と見積依頼書、建物の改装箇所がわかるような見取図の提出が必要です。見取図に関しては事業計画書に記載をしているケースもあると思いますが、交付申請でも矢印を引っ張り改装箇所が分かるような書類が必要になります。
また、補助対象経費により改修する建物に係る宣誓・同意書は建物費を計上している事業者は提出が必要です。第3回以降の採択事業者は、交付申請書別紙1に含まれています。
建物費を使って建物を建設する場合、以下の書類が必要でした。
新しく建物を建設する場合、見積書・見積依頼書のほかに設計書が必要です。交付申請では建築確認申請で使うような必要な細かい設計図までは不要ですが、建築士が作成した概算の設計図程度のものは必要です。そのため、事業再構築補助金が採択された時点で建築士に簡単な設計図の作成は依頼しておいた方がよいでしょう。
また、建設を行う場合も補助対象経費により取得する建物に係る宣誓・同意書が必要です。第3回以降の採択事業者は、交付申請書別紙1に含まれています。建物費に関しては以下の記事でも解説していますのでぜひご覧下さい。
機械装置・システム構築費を経費にする場合、以下の書類が必要でした。
交付申請に必要な見積書と見積依頼書は他の経費項目と同様ですが、パンフレットや仕様書が別途必要です。パンフレットや仕様書には、機械装置やシステム構築の費用が記載されていなくてはなりません。パンフレットには複数の機械が掲載されている場合もありますが、交付申請を行う際はパンフレットに購入する物品を赤線などでわかりやすくしておきましょう。
じぎょうさいこうちく補助金においては、何らかのケースに当てはまる場合、交付申請で別途必要になる書類もありました。新事業進出補助金の参考として紹介します。
多くの事業者は事業再構築補助金を申請する際に50万円以上(税抜き)の補助対象経費を申請していました。そのため、多くの事業者が交付申請で相見積もりが必要でした。
また相見積もりは単価なので、仮に単価10万円の商品を10個購入する場合などは相見積もりは不要です。先述しましたが、相見積もりは3社同条件でとなっているので、3社で見積書の経費項目まで交付申請時には合わせておく必要があります。
発注する業者以外その機械を販売していないなど、2社で見積が取れない場合もあると思います。その際は、選定理由を明らかにした理由書、業者選定理由書を交付申請時に提出しなくてはなりませんでした。
また、2社で見積もりを取って高い方を発注する場合も高い方を発注する理由を書き、交付申請時に理由書を提出すれば問題ありません。しかし、相見積もりを出してくれる企業がない、昔から取引を行っているなどの理由で見積書を出してもらえないといったケースは合理的な理由としては認められませんでした。
中古品を購入する場合、交付申請時に見積もりは3社以上に行わなければいけませんでした。
注意しなければいけないのは、製造年月日や性能が同程度である必要がある点です。さらに、交付申請に必要な見積書は型式や年式が記載されていなくてはなりません。そのため、項目が少しでも見積書同士で異なってしまうと交付申請で不備として戻ってくる可能性が高いでしょう。
事業再構築補助金で申請した物品をAmazonや楽天などのECサイトで購入することもできます。見積書が出せない場合は補助対象経費として交付申請できないと誤解してしまう方も多かったのですが、実は問題ありませんでした。事務局は交付申請に関して多くのケースを想定していて、事業者に合わせて柔軟に審査を行っていたのです。
AmazonなどのECの場合も、購入先が他社よりも値段が安いことをスクリーンショットなどで示すことができれば問題ありません。ただし、状況が変わっている可能性もあるため、個別の案件は事務局に電話をして確認をした方が良いでしょう。
事業計画書に経費の詳細が記載されている場合、経費項目を変更した際には交付申請書別紙1だけでなく、事業計画の修正も必要でした。
交付申請で提出する事業計画書は、変更した部分を赤文字で修正して変更した旨も冒頭に記載するなど、できるだけ審査員にわかりやすく伝えるようにしましょう。交付申請は他の提出書類も多く、意外と見落としがちな部分なので気をつけてください。
また、事業再構築補助金においては以下の補助対象経費を計上する場合は交付申請時に提出が必要になりました。
交付申請書別紙2には、各補助対象経費の発注先と業務内容や指導内容を記述します。業務内容に関しては専門家などの発注先に確認をして交付申請をしましょう。
新事業進出補助金の交付申請で活用する見積書の書き方、作成ポイントについて、以下で解説します。
事業再構築補助金では、事業実施にかかる振込手数料は対象外です。そのため、交付申請を行う際に必要な見積書でも振り込み手数料に関しては合計金額に含まないようにしましょう。
また、割引分も記載しない方が無難です。約数百円という細かい数字にはなりますが、振り込み手数料が記載されていたことにより交付申請が不備になったケースもあるので注意しましょう。
また、特に建物費を交付申請する際に発生することが多いのですが、建物の管理手数料などの項目の詳細がよく分からない経費に関しては対象外です。そのため、交付申請の見積書に記載されている経費項目は補助対象経費であることが審査員に分かりやすい形で記載しましょう。
中小企業庁が運営しているものづくり補助金や事業再構築補助金、持続化補助金など全て共通なのですが、交付申請に必要な見積書は全て発注先の押印が必要です。
特段印鑑の指定はされていませんので、デジタル印でも問題ありません。押印がされていない場合も交付申請の不備対象になってしまうため、見積書の作成を依頼する際は注意しましょう。
ようやく交付申請が終わっても、差し戻しされてしまうケースもあります。差し戻しは基本されるものととらえておいたほうが良いですが、なるべく差し戻し回数を減らすために、どのようなケースで差し戻しが発生するのかを確認しておきましょう。
交付申請で提出しなければいけない書類はかなり多いです。そのため、新事業進出補助金事務局のコールセンターが必要書類を誤っているケースや支援機関が間違えている可能性もあります。そのため、補助事業の手引きで必要書類をしっかりと確認するようにしましょう。
事業再構築補助金の交付申請では、相見積もりが50万円以上の経費には合計で3社の見積が必要でした。また、中古品の場合も3社以上の見積もりも必要でした。新事業進出補助金もおそらく同じく要求されるのではないかと予想されます。
もし必要な見積書の数がわからない場合は、相見積もりを取れるだけ取って提出しましょう。多い分には特段何も言われないでしょう。
一番発生するケースなのですが、事業再構築補助金の交付申請の期間は長く平均で3ヶ月ほど交付決定までかかっていました。そのため、見積書も交付決定の期間有効でなくてはなりません。新事業進出補助金の交付決定にも同じく時間がかかるでしょう。
見積書の有効期間が2週間や1ヶ月など短い場合、交付申請の間に見積書の有効期間が切れてしまうので、最低でも3ヶ月、長くて半年ほどの有効期限がある見積書にしましょう。
いざ新事業進出補助金の交付申請が差し戻しになってしまった時どうすべきでしょうか。以下で解説します。
新事業進出補助金の事務局は、申請者や採択者の情報を保有しています。そのため、申請者番号を事務局に伝えることで、交付申請が差し戻しされている理由も回答をくれるでしょう。その際、担当者の名前と時刻をメモしておくのがおすすめです。
また事務局がわからないケースは後日折り返しの電話をしてもらうようお願いできるので、複雑な場合はそのような形にしましょう。
新事業進出補助金の申請をサポートしてくれた専門家に相談することも一つの手です。その理由として、事務局はあくまでも補助事業の手引きに記載されている内容以外に回答しないケースがほとんどであるため、過去交付申請を数多くサポートしているコンサルタントに質問をするのが有効な場合もあるからです。
ただし、コンサルタントによっては採択までのサポートで交付申請からは有料の場合もあります。あらかじめ、コンサルタントにどこまでサポートしてくれるか聞いておくと良いでしょう。
株式会社補助金プラスでは、新事業進出補助金をはじめとした様々な補助金の申請支援サービスをしています。採択後の交付申請もオプションですがサポートが可能です。
新事業進出補助金の交付申請は見積書や見積依頼書など必要な書類が多岐に渡ります。また、交付申請の書類を案内している補助事業の手引きに記載されていない書類が必要になるケースもあります。
現に、新事業進出補助金を活用してECサイトで物品を購入する際に他製品のキャプチャーが必要であることなどは一言も述べられていませんでした。柔軟に運用しているとはいえ、必要書類が何かわからなければ交付申請することすらできません。
そんな時、株式会社補助金プラスでは必要なものを判断してサポートすることができます。オンラインで対応するので全国各地どこにいる事業者様にでも対応可能です。
現在無料の相談も受け付けていますので、この機会にぜひご連絡ください。
今回は新事業進出補助金の交付申請に関して、いつまでに何が必要なのかなどについて解説をしました。新事業進出補助金の申請を考えている方、またはもうすでに通った方など、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
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