【2024.2】中小企業と小規模事業者の違いは?使える補助金まで細かく解説!

中小企業 小規模事業者 違い

日本の全企業数の99%は中小企業です。といっても中小企業を明確に定義できる人の割合は決して多くはありません。中小企業と小規模事業者の定義の違いを詳しく知ることが出来れば、国が行う中小企業への施策を活用するのに役立ちます。この記事では、両者の違いを押さえると同時に利用可能な補助金まで解説していきます。

この記事の目次
IT導入補助金

中小企業の定義

中小企業は中小企業基本法上においては「中小企業者」と位置付けられ、一般的に経営規模が中小規模の企業のことを指します。
中小企業基本法での定義は、「資本金の額又は出資の総額」と「常時使用する従業員の数」を基準として定められています。中小企業と大企業との違いも、上記2つの違いになります。

常時使用する従業員がどの範囲まで適合するのかというと、下記の労働基準法第20条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」として定められています。

(参考)労働基準法(昭和22年法律第49号) (解雇の予告)
  第20条  使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
  2   前項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
  3   前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。

参照:中小企業庁 FAQ

そのため、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、非正規社員及び出向者については常時使用する従業員に当てはまり違いはありません。ただ、会社役員及び個人事業主は予め解雇の予告を必要とする者に該当しないので、中小企業基本法上の「常時使用する従業員」には該当しません。

さて、中小企業の定義では、資本金の額と常時使用する従業員数で判断しますが、業種によって違いがありさらに分類されます。
中小企業基本法上、さらに「製造業、建設業、運輸業その他の業種」、「卸売業」、「サービス業」、「小売業」に分類され、業種によって「資本金の額又は出資の総額」と「常時使用する従業員の数」は中小企業とされる基準が違います。
そこで以下の表に中小企業の定義をまとめました。

業種分類中小企業基本法の定義
製造業その他資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

参照:中小企業庁 中小企業・小規模事業者の定義より

ではどのような場合に中小企業とみなされるか、業種分類別にみていきましょう。

中小企業の定義についてポイント

製造業その他の場合

製造業その他の場合は、資本金の額が3億円以下、または常時使用する従業員数が300人以下であれば中小企業とみなされます。中小企業基本法により、中小企業の定義では、資本金の額か常時使用する従業員数のいずれか一方を満たすことが中小企業であるとされています。両方の基準を満たす必要はありません。
なので、資本金の額が3億円超で、かつ従業員数が300人を超えると製造業その他の場合においては大企業に該当します。
製造業のものづくり補助金の採択事例や詳しい内容はこちら

卸売業の場合

卸売業を営んでいる場合、資本金の額は1億円以下、または常時使用する従業員数が100人以下なら中小企業です。
卸売業のものづくり補助金を活用した採択事例や詳しい内容はこちら

小売業の場合

卸売業を営んでいる場合、資本金の額は5000万円以下、または常時使用する従業員数が50人以下なら中小企業です。
ちなみに、パン屋は製造業とは違い、小売業に該当します。製造した商品をその場で販売する業種だからです。(日本産業分類上大分類Iの中分類58パン小売業(製造小売)に該当しています)

製造した商品を製造場所以外で販売する場合は、工場は製造業、店舗は小売業になるという違いがあり、複数の業種に該当することになります。

パン屋はものづくり補助金を活用可能!はこちら

サービス業の場合

卸売業を営んでいる場合、資本金の額は5000万円以下、または常時使用する従業員数が100人以下なら中小企業です。

このように中小企業は、中小企業基本法上、「製造業その他の業種」、「卸売業」、「サービス業」、「小売業」に分類され、業種によって「資本金の額又は出資の総額」と「常時使用する従業員の数」の基準が異なります。

そのため事業者が、自社の業種がどの分類に当てはまるのか細かな違いで判断に困ることもあるでしょう。自社の業種がどの業種に分類されるのか判断する方法としては、総務省が公開している日本標準産業分類(最新版は第13回)を確認し、分類項目名、説明及び内容例示から自社の業種がどの分類にあてはまるのか確認することができます。

①まずはこちらから分類を探します→総務省|統計基準等|日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)-目次

②次に下記URLの対応表からどの業種に該当するのか確認します。

第13回改定(平成26年4月1日施行)

また、別業種の複数の事業を展開している事業者の場合は、事業の中でも「主たる事業」に該当する業種に分類されます。
業種が異なると、中小企業に該当しなくなる可能性も出てくるため確認を行っておきましょう。

みなし大企業の例外

例外として中小企業の定義を見ていく上で注意しなければならないのが、みなし大企業です。大企業とみなし大企業は違います。
みなし大企業は中小企業基本法によって定められてはいませんが、各種の補助金制度では支援対象から外されている場合があります。

例えばものづくり補助金の公募要領によると、次の規模のような中小企業がみなし大企業として定義されています。

  • 発行済株式の総数又は出資金額の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業
  • 発行済株式の総数又は出資金額の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業
  • 大企業の役員又は職員を兼ねている者が、役員総数の2分の1以上を占めている中小企業

該当する中小企業はみなし大企業とされ、ものづくり補助金等の補助金申請条件の対象外となります。
みなし大企業の定義や詳しい内容はこちら

法人税法等、一部法令では範囲が異なる

中小企業とは、前述の通り、中小企業基本法上において「中小企業者」と位置付けられ、一般的に経営規模が中小規模の企業のことを指しているものであり、資本金の額と常時使用する従業員数が定義され、大企業・小規模事業者と違います。

しかし法人税法や一部の法令では中小企業の範囲が異なってきます。
例えば、中小企業の法人税の軽減税率の適用範囲は、資本金の額が1億円以下の場合と定められています。
つまり中小企業基本法では、製造業その他の業種の場合、資本金の額が3億円以下が中小企業とみなされますが、税法上では違い、大方「資本金1億円以下」が中小企業の判断基準になります。

小規模事業者の定義

では続いて小規模事業者の定義を確認していきましょう。中小企業と違い、小規模事業者は「従業員の人数」によって中小企業基本法に定義されています。つまり中小企業のうち、特に規模が小さい事業者を小規模事業者として位置付けているということです。

小規模事業者の定義をまとめたのが下図です。

業種分類中小企業基本法の定義
製造業その他従業員20人以下
商業・サービス業従業員5人以下

参照:中小企業庁 中小企業・小規模事業者の定義より

小規模事業者の定義についてのポイント

製造業その他の場合

中小企業基本法では、製造業その他の業種は従業員20人以下が小規模事業者とみなされます。

商業・サービス業の場合

「商業」とは、卸売業・小売業のことです。商業・サービス業の場合は従業員5人以下が小規模事業者です。

なお、20人または5人以下であれば小規模事業者の適用範囲なので、個人事業者も小規模事業者に含まれます。

中小企業と小規模事業者の違いまとめ

では、中小企業と小規模事業者の違いを中小企業基本法における定義に沿ってまとめていきます。中小企業庁によって定められている中小企業と小規模事業者についての図を参考に違いをみていきましょう。


業種
中小企業者
(下記のいずれかを満たすこと)
小規模企業者
資本金の額又は出資の総額常時使用する従業員数常時使用する従業員数
①製造業その他3億円以下300人以下20人以下
②卸売業1億円以下100人以下5人以下
③サービス業5,000万円以下100人以下5人以下
④小売業5,000万円以下50人以下5人以下

*図の中小企業者・小規模企業者は中小企業基本法の正式な呼称です。補助金の制度説明では正式名称でなく、便宜上「中小企業」、「小規模事業者」と書かれる場合があります。
上図から中小企業と小規模事業者の違いは、規模そのものの違いであることがよく分かります。

中小企業や小規模事業者への支援制度

国は中小企業や小規模事業者への支援制度を用意しており、経営面や資金面で支援を行っています。中小企業基本法の3つの基本方針である、「経営の革新及び創業の促進」「中小企業の経営基盤の強化」「経済的社会的環境の変化への適応の円滑化」に沿って、中小企業に関する予算に基づく施策が行われています。

中小企業や小規模事業者への支援制度

各種補助金

中小企業向けの補助金として人気の補助金をあげていくと、

  1. 事業再構築補助金
  2. ものづくり補助金
  3. IT導入補助金
  4. 小規模事業者持続化補助金 

等がありますので、それぞれ見ていきましょう。

〈事業再構築補助金〉

中小企業等の新分野展開、業態転換、業種転換等の思い切った「事業再構築」の挑戦をサポートする制度です。
例えば、コロナ渦によって売上が減少した、事業を新分野に展開したい、業態転換や事業・業種転換したい場合に活用できる補助金です。

〈ものづくり補助金〉

ものづくりやサービスの新事業を創出するために、革新的な設備投資やサービスの開発、試作品の開発などをサポートする制度です。
例えば、新事業を開始したい、サービスの質の向上や生産ラインの強化を行いたい場合に活用できる補助金です。

〈IT導入補助金〉

日々の業務の効率化や自動化のためのITツールの導入をサポートする制度です。
例えば、ITを利用した経営状況の見える化、ITを利用した効率化、ITを利用した働き方改革などに活用できる補助金です。

〈小規模事業者持続化補助金〉

中小企業との支援制度の違いで用意されているのが、小規模事業者持続化補助金です。こちらは小規模事業者が作成した経営計画に基づいて行う販路開拓の取組をサポートする制度です。
例えば、Webサイトの作成や販促活動、展示会への出品を行いたい場合に活用できる補助金です。

参照:ミラサポplus

これらの4つの補助金制度は「生産性革命推進事業」として通年での公募が行われている事業者が取り組みやすい制度になっています。他にも、中小企業等の事業承継・引継ぎ後の設備投資等の新たな取組や、事業引継ぎ時の専門家活用費用等を支援する「事業継承・引継ぎ補助金」など様々です。

税制上の優遇等

大企業と違い、中小企業や小規模事業者(資本金の額が1億円以下の場合)の法人税は軽減されています。他にも中小企業に対する様々な税制上の優遇措置が設けられています。

例えば、「中小企業投資促進税制」は、中小企業が機械装置やシステム導入等の設備投資を行った際に取得価額の30%の特別償却ができます。
また中小企業向け「賃上げ促進税制」では、一定の要件を満たした上で前年度より給与等支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度もあります。

参照:中小企業庁HP

まとめ

中小企業と小規模事業者の違いは経営規模にあり、それぞれ定義づけがされています。内容には、分類、業種別など細やかな規定があります。両者とも日本の全企業数の大半であるため、同時に国からの支援制度も厚く、事業者であればぜひ活用したい制度ばかりです。中小企業ならではの優遇制度を活用し経営の安定につなげていきましょう。

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