ものづくり補助金の見積依頼書とは?見積のルールまで徹底解説!
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)の交付を受けるには、ものづくり補助金事業のルールに則った見積を業者に依頼した上で、業者を選定しなければなりません。そこで、業者へのルール共有や経理根拠書類として使える、見積依頼書の作成が重要になります。
この記事では、ものづくり補助金における見積依頼書の概要や見積のルールの詳細を徹底解説します。
- ものづくり補助金の見積依頼書の必要性が分かる
- 見積依頼書のルールが把握できる
そもそも、ものづくり補助金とは?
そもそも、ものづくり補助金とは、今後施行予定のさまざまな制度変更への対応に必要な設備投資を予定する、中小企業や小規模事業者を金銭的に支援する補助金事業です。ものづくり補助金に対象となる事業として、次のものが挙げられます。
- 電子帳簿保存法やインボイス制度に対応するため、作業を効率化する新しい会計ソフトや受発注システムを導入する
- 働き方改革における残業削減に対応するため、新設備導入による新製品の提供や生産の効率化を行う
18次締切分の公募要領でのものづくり補助金の補助金額上限は、基本となる省力化枠で上限8,000万円、製品・サービス高付加価値化枠なら上限2,500万円までになります。同じく補助金事業であるIT導入補助金より、高めの上限が設定されています。
ものづくり補助金の採択を受けるには、補助金の対象となる事業(以下、補助事業)の計画内容・必要経費・スケジュールなどをまとめた事業計画書を提出し、事務局による審査に通過しなければなりません。審査で採択を受けた後は事業計画書通りに補助事業を遂行し、実績報告・確定検査を経て、ものづくり補助金が交付されます。
しかしものづくり補助金の交付を受けるには、事業計画書通りに進めるだけでは足りません。導入設備の価格が妥当性であるかを証明するために、一定のルールに則って作成した見積書の作成と提出が必要になります。
詳しいものづくり補助金の補助率や補助上限金額についてはこちら
ものづくり補助金の交付申請には見積書が必須
ものづくり補助金の見積書とは、入手しようとする(入手した)機械装置などの価格が妥当かどうかを、交付申請や各検査のときに証明するために提出する書類です。ものづくり補助金の採択を受けた後で必要になります。
交付申請や各検査に対応できる見積書を入手するには、機械装置等の発注予定先に送る見積依頼書の作成も重要です。
ものづくり補助金の見積依頼書のポイント
見積依頼書の送付は申請後すぐに行うのが望ましい
見積依頼書を業者へ送付するのは、ものづくり補助金を申請した後すぐに行うのが望ましいです。ものづくり補助金の見積書は採択後に提出するものですが、申請後すぐに業者へ見積を依頼しておくと、採択結果が発表されたら即座に交付申請へ移れます。
ものづくり補助金総合サイトの公募スケジュールを見ると、補助金の応募期間の締切日から採択発表までの期間は約2か月です。そのため、見積の取得は応募期間締切日から2か月後までを目処に計画を立てておきましょう。見積の際に業者との打ち合わせが発生したり作成に時間がかかったりなども想定される場合は、余裕あるスケジュールにしておくことが大切です。
見積依頼書は経理証拠資料ともなる
見積依頼書は、実際にかかった経費の証明となる経理証拠資料にもなります。具体的には、補助事業期間中に物品の入手や支払状況などを事務局担当者が直接チェックする「中間検査(中間監査)」や、補助事業終了後に実施する「実績報告」「確定検査」にて必要になります。
ものづくり補助金の交付申請が終わった後も、見積依頼書は大切に保管しておきましょう。
ものづくり補助金における見積ルール
ものづくり補助金における見積は、一般的な見積と異なるルールが設定されています。ルール等の根拠は、ものづくり補助金の交付規程第11条などにて規程されています。ルール通りの見積書として認められなければ、補助金関係の効力を失うので注意しましょう。ここからは、ものづくり補助金における特殊な見積ルールを解説します。
ものづくり補助金における見積ルール
通常の見積とは異なる特殊なルールが存在
通常の見積とは異なるものづくり補助金における特殊ルールとして挙げられるのは、次の通りです。
- 〇〇一式といった複数の項目をまとめた記載ではなく、1つひとつの経費について詳細な内訳が必要になる
- 補助事業の設備投資は、必ず単価50万円(税抜き)以上の機械装置等の取得を行う
- 発注する場合、外注費を計上するときは委託契約書等の締結が必要になる
- 発注時点で有効な見積が必要なので、期限切れにならないようなスケジュールを検討する
見積依頼書には、申請者住所・氏名、件名(令和◯年度ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金にかかる業務や物件の発注件名)、仕様(工事スケジュール・場所・種類など)、要件などを記入します。
見積依頼書の書式がわからないときは、ものづくり補助金公式サイトの「補助事業の手引き」のページより、「補助事業の手引き参考様式・交付規定に定める様式」や「実績報告関連資料」をダウンロードしましょう。見積依頼書の参考様式を入手できます。
出典:ものづくり補助金公式サイト|補助事業の手引き(補助事業の手引き参考様式・交付規定に定める様式)
公式サイトからダウンロードできるものには、見積依頼書以外にも補助事業終了後に提出が必要な書類関係の資料がまとまっています。見積依頼書以外の様式を見たいときは、一度確認してみるのがよいでしょう。
これらの決まりは、海外企業から調達する場合でも同様の対応が必要です。
相見積が必要となる場合も多い
ものづくり補助金事業における経費の見積を行うときは、相見積が必要となる場合も多いです。具体的には、単価50万円(税抜き)以上の機械装置等を発注する場合は、必ず2社以上の相見積書を取らなければなりません。また、機械装置等以外でも単価50万円(税抜き)以上のものを発注するときは、2社以上の相見積書が必要です。
相見積は、必ず同一条件で行いましょう。
さらに中古品を購入する場合は、製造年月日・性能が同程度の中古品の3社以上の相見積書が必要と定められています。
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[2023.10]ものづくり補助金では相見積もりが必要!業者選定理由書が必要となるのは?
見積の代わりに業者選定理由書を提出する場合も
もし合理的な理由によって相見積書を取れないときは、見積の代わりに業者選定理由書を提出するケースもあります。
出典:ものづくり補助金公式サイト|補助事業の手引き(補助事業の手引き参考様式・交付規定に定める様式)
合理的な理由の例としては、選定先の企業が特許権、著作権、商標権、意匠権などの知的財産権や独占販売権を有しているケースです。他に同じ性能や規格の製品・技術が存在せず、相見積が現実的でないからです。逆に言えば、このケース以外だと合理的な理由として認められるものはほとんど存在しないでしょう。
「昔から付き合いがある業者だから優先したい」「購入するとさまざまなサービスが受けられる」などの理由は認められません。合理的な理由関係については、事業再構築補助金といった他の補助金事業においても同様です。
業者選定理由書を作成する際は、業務内容、選定業者名、具体的な選定理由を記入しましょう。なお、中古品に関しては業者選定理由書が認められないので、相見積書が必要です。
業者選定理由書について詳しい内容はこちら
見積依頼書作成時のポイント
見積依頼書作成時は、以下4つのポイントを意識しよう。
- 各要件は詳細に記入
- 設備やシステム構築の使用は別紙で説明
- 見積提出期限の明記
- 税抜価格の表示
順番に解説します。
見積依頼書作成時のポイントを紹介!
各要件は詳細に記入
見積依頼書の各要件は、できる限り詳細に記入しましょう。参考様式にも、詳細に書くようにと要望があります。具体的には、サービスの要件、希望納入時期、納品場所、製品名・技術名、品番、数量・単位、比較条件などが挙げられます。
例えば製造機器の見積を行う場合は、「1時間に〇〇個製造可能」「他製品Bより安価」「寸法は縦◯m横◯m高さ◯m以内」など、数字や条件などを明記しましょう。
設備やシステム構築の仕様は別紙で説明
機械設備やシステム構築の見積を依頼する場合、作成方法、使用資材、寸法、能力、機能などの細かい仕様も詳細に記載しなければなりません。しかし、詳細に書きすぎると分量が増えすぎてしまいます。
そのため機械設備やシステム構築の仕様については、カタログ・商品説明書などの仕様書を別紙として準備し、別紙で説明するのがよいでしょう。見積依頼書の仕様の項目には、「別紙のとおり」と記載します。
見積提出期限の明記
業者からの見積書の返送が遅くなると、こちら側の交付申請が遅れます。そのため見積依頼書には見積提出期限を明記し、こちらのスケジュール通りに見積書が送られてくるようにしましょう。見積提出期限を明記していないと、業者側が「急がなくてもよい」と判断し、採択発表日を過ぎても返送しない可能性があります。
また見積提出期限の他にも、ものづくり補助金の見積依頼書における独自ルールを業者へ共有することも大切です。何度も発行のやり直しが起こらぬよう、「見積価格は一式ではなく詳細な内訳と単価が必要」「仕様書の文言と合わせてほしい」などの補足事項を伝えておくことをおすすめします。
税抜き価格も表示してもらう
価格表示は、原則として税込表示です。しかしものづくり補助金の見積ルールには「税抜き50万円以上」と、税抜価格が基準として設定されています。そのため、見積書を確認する自社や事務局が混乱しないよう、税込価格だけでなく税抜き価格も表示してもらいましょう。
まとめ
ものづくり補助金の交付を受けるには、独自ルールに則った見積依頼書の作成が必要です。見積依頼書は交付申請時の必要書類として使うだけでなく、中間検査・確定検査時の経理根拠書類としても使用します。「50万円(税抜き)以上は2社以上、中古の場合は3社以上の相見積もりが必要」「発注時点で有効なものが必要」などのルールを意識して、見積依頼書を作成してください。
依頼先の業者にものづくり補助金のルールに則った見積をしてもらうには、見積依頼書に必要事項を記載したり、見積時に守ってほしい事項を共有したりなどが大切です。正確な見積依頼書を作成して見積を行い、ものづくり補助金の交付申請や各検査が問題なくパスできるようにしましょう。