2024年1月に発生した能登半島地震による被害を受けた小規模事業者等を対象にした、小規模事業者補助金の「災害支援枠」の申請受付が、2024年2月1日よりスタートしました。被災区域4県(石川県、富山県、新潟県、福井県)に所在してる小規模事業者等の事業再建を、返済不要の補助金で支援する制度となっています。
災害支援枠の補助上限金額は200万円です。また売上減少といった間接的な被害を受けた事業者も、最大100万円の補助を受けられる可能性があります。ただし通常の小規模事業者持続化補助金と同じく、正しい手続きを行った上で提出した事業計画が、事務局から採択されなければ補助金が交付されません。事前準備と正確な手続きが必須となります。
本記事では、小規模事業者持続化補助金の災害支援枠の第1公募の概要について解説します。
この記事の目次
小規模事業者持続化補助金とは、インボイス制度や働き方改革など今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更に対応するために取り組む販路開拓等にかかる経費を、一部補助する補助金制度です。
本補助金は、生産性向上や持続的発展を目的としています。しかし今回、能登半島地震の影響で生産設備・販売拠点の流出・損壊や顧客・販路の喪失などの被害にあった事業者を対象にした、「災害支援枠」が急遽新設されました。
能登半島地震の影響を強く受けた被災区域4県(石川県、富山県、新潟県、福井県)に所在する事業者が地震の影響からの事業再建に向けた計画を作成し、作成した事業計画書に基づいて補助事業を実施する場合に、事業再建の取組の経費の一部を補助します。
また災害支援枠は地震の被害を直接受けた事業者だけでなく、間接的に影響を受けた被災区域所在の事業者も対象です。「建物や設備が壊れたわけではないけど、大口の取引先が被害にあって売上が下がってしまった」という小規模事業者等も、災害支援枠への申請を検討してみてください。
「被災区域に所在すること」以外の申請要件は、通常の小規模事業者持続化補助金に準じています。
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠への申請に必要な手続きや注意点
申請内容の詳細や対象事業者は、本記事でも解説しています。
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠は、被災区域に関する独自の要件が設けられています。被災区域である石川県・富山県・福井県・新潟県以外の所在の事業者は、災害支援枠へ申請ができません。
また被災区域の所在について以外にも、さまざまな要件が設けられています。以下では、災害支援枠の補助対象事業や補助対象事業者などをまとめました。
災害支援枠の補助対象事業は、「事業計画に基づいて実施する事業再建のための取組であること」、「商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること」、「特定の事業内容に該当しないこと」の3点をすべてを満たしたものです。それぞれについて解説します。
災害支援枠の対象になる事業は、「早期の事業再建に向けた経営計画に基づいた事業再建の取組」です。たとえば、能登半島地震の被害からの再建とは関連のない復旧・買換は対象外になります。また事業実施期間中に完了できる内容かつ、補助事業が終わった後、事業再建の取組によっておおむね1年位内に売上が見込まれる事業計画であることも要件の1つです。加えて採択審査では、自社分析の妥当性や計画の有効性などもチェックされます。
補助対象になる事業と、ならない事業の簡単な例は次の通りです。
補助対象となる事業
補助対象とならない事業
補助対象事業・補助対象経費については、小規模事業者持続化補助金の「災害支援枠(令和6年能登半島地震)」【公募要領】 にて詳細をご確認ください。
災害支援枠の補助事業は、商工会議所の助言、指導、融資、斡旋などの各種サポートを受けながら実施する必要があります。また、申請時には「補助事業を行おうとする事業所の地域の商工会議所」にて、「支援機関確認書(様式3)」の作成・交付の依頼を行う必要もあります。
災害支援枠へ申請するには、以下に示した特定の事業内容に該当しない必要があります。
災害支援枠の補助対象事業者の要件は、まず「石川県、富山県、新潟県、福井県のいずれかに所在する、令和6年能登半島地震の被害を受けた事業者」です。被害の証明は、被害を証明する公的証明の添付(コピーでも可)が必要になります。
たとえば地震によって事業用資産が損壊するといった直接的な被害を被った場合は、市区町村が発行する「事務所等が罹災したことがわかる公的書類」を提出します。
災害支援枠への申請は、「2024年1月~2月の任意の1か月の売上高が、前年同期と比較して20%以上減少した(関節被害)」という条件に該当する事業者でも可能です。
また災害支援枠への応募は、通常の小規模事業者持続化補助金に設けられた補助対象事業者の条件のクリアも必要です。以下では簡単に解説します。
以下の規模に該当する小規模事業者が、本補助金の災害支援枠へ応募できます。
業種 | 常時使用する従業員の数 |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 |
宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
業種分類の考え方や常時使用する従業員の数の定義などは、公募要領にて詳細が載っています。
もし小規模事業者以外で能登半島地震からの事業再建を目指す中小企業等は、「なりわい再建支援補助金」や「伝統的工芸品産業支援補助金(災害復興事業)」などの補助金制度の活用を検討してみてください(時期によって申請できる補助金の種類に違いあり)。
商工会議所の確認を受けた、早期の事業再建に向けた事業計画書の策定が必要です。
直接または間接的に他企業の完全子会社となっている法人は、災害支援枠を含めた小規模事業者持続化補助金への申請はできません。
小規模事業者で課税所得の年平均15億円超えするのはごく稀だと思われるので、そこまで気にする必要はないと思われます。
商工会議所ではなく商工会地区で事業を営んでいる小規模事業者等は、商工会にて同様の手続きが可能です。
暴力団員である、または暴力団員と関係しているといった事業者は、小規模事業者持続化補助金を始めとする国の補助金を受けられません。
過去に小規模事業者持続化補助金の一般型・コロナ特別対応型・低感染リスク型ビジネス枠を受けたことがある事業者は、一定の要件を満たしていると本補助金へ申請ができません。
補助率 | 上限金額 |
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2/3 | ①自社の事業用資産に損壊等の直接的な被害があった事業者は200万円 ②間接的(売上減少)な被害にあった事業者は100万円 |
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠の補助率は2/3、補助上限金額は「①自社の事業用資産に損壊等の直接的な被害があった事業者は200万円」、「②間接的(売上減少)な被害にあった事業者は100万円」です。
ただし①の申請者のうち以下の要件をすべて満たした場合は、申請し確定した経費金額が定額のままで交付されます(定額申請)。
補助率および補助上限金額は、同時期に公募されている小規模事業者持続化補助金(一般型)第15回公募とほぼ同じです。
第1次の災害支援枠のスケジュールは、次の通りになっています。
公募開始 | 2024年1月25日 |
1次申請受付開始 | 2024年2月1日 |
1次受付締切 | 2024年2月29日(当日消印有効) |
1次の事業実施期間 | 交付決定日~8月30日 |
第2次以降の公募も予定されているので、第1次に申請できなかった事業者は、第2次以降の災害支援枠への申請をご検討ください。
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠用の事業計画の参考として、今回被災区域として認定された石川県、富山県、新潟県、福井県の補助金活用事例をそれぞれ紹介します。
参考:経済産業省 中小企業庁ミラサポPlus事例ナビ「事例を探す」
【北陸】小規模事業者持続化補助金の採択事例を4つ紹介!
町内唯一のタクシー会社であったS社は、小規模事業者持続化補助金によって「能登唯一のストレッチャー移送ができるタクシー会社」をアピールするパンフレット・チラシの作成、ホームページの更新、介護タクシーの利便性向上のための備品整備などを行いました。
本事業によって能登地区の福祉・医療関係者との人脈ネットワーク構築につながり、地元外の医療機関からの転送依頼が1か月平均30件から45件ペースと1.5倍となっています。また、観光客からの問い合わせ件数も増加しています。
富山の日常生活に溢れている魅力を世界中に発信するインバウンドビジネスを手掛けるO社は、小規模事業者持続化補助金によってインバウンド観光客向けのシャワールームを新設しました。
シャワールームによって利便性向上と集客につながり、外国旅行者を始めとする宿泊者数の増加となりました。今後も町全体の課題である宿泊設備・施設の不足面を軽減し、地域全体の活性化につなげる予定です。
地域の農家の共同出資によって設立されたS社は、小規模事業者持続化補助金によって米消費量の少ない女性をターゲットにしたお米の新製品を開発しました。
6種類のパターンを持たせた美容効果のある自社米、米の種類に応じた炊き方のレシピ、インスタ映えを狙った戦略などを実施したことで、百貨店・専門店との商談機械の獲得や地元テレビ局からの密着取材などにつながっています。
酒販店として300年以上の歴史があるM社は、小規模事業者持続化補助金によって、自社製品をお土産やギフトとして利用しやすいよう小瓶化商品の開発・パッケージの統一化を行いました。
顧客満足度が向上し、お土産やギフトとして特約店からの予約も増加しています。短期間ではあるものの、売上が5%程度増加した実績も出ました。
災害支援枠へ申請するには、まず必要書類を作成します。申請時に必要な主な書類は次の通りです。
必要書類が揃ったら、小規模事業者持続化補助金「災害支援枠(令和6年能登半島地震)」補助金事務局宛に郵送で提出します。災害支援枠に関しては持参、宅配便、電子申請での受付に対応していないので注意しましょう。
提出後は事務局の審査が始まり、採択審査に通過すれば交付決定通知が行われます。審査では事業内容に加え、「事業再建として適切な取組か」「どれくらいの被害を受けたのか」なども加点審査項目として設定されています。
補助事業をスタートさせるのは、必ず交付決定日が確定してからにしましょう。補助事業が終了したら事務局へ実績報告書を提出し、実施した事業の審査や経費内容の確認が行われます。そこで交付の最終決定や交付額の確定などが行われ、精算払となります。
なお申請手続きの詳細な決まりごとやその他疑問点がある場合は、公募要領をご確認いただくか、補助金の専門家へ相談するのがよいでしょう。
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小規模事業者持続化補助金の災害支援枠は、能登半島地震で被害を受けた石川県、富山県、新潟県、福井県所在の小規模事業者等を対象にした補助金です。最大200万円の補助金の交付を受けられます。
必要書類を揃えたり被害や売上関係の証明が必要だったりなどの手続きが求められますが、交付されれば返済不要の補助金で事業の立て直しを図れます。
能登半島地震で直接的または間接的に被害を受けた事業者の方は、災害支援枠の活用をぜひ検討してみてください。