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※記事は作成時の公募要領をもとに作成しているため最新の情報と異なることがございます

新事業進出補助金の技術導入費は知的財産権等の導入に要する経費のことですが、「具体的にどのような使い方があるのだろう」と疑問に思った人も多くいるでしょう。この記事では新事業進出補助金の技術導入費の具体的な活用方法を、注意点とともに解説していきます。

監修者
松山市の税理士 越智聖税理士事務所代表。株式会社聖会計代表取締役社長。税理士。
経済産業省認定経営革新等支援機関
越智聖税理士事務所は平成27年4月に松山で開業した、主に中四国全域の中小企業の皆様をご支援している会計事務所である。会計・税務はもちろんのこと、お客様のお悩み事を解決する総合的なコンサルティング、緻密な経営診断にもとづく経営コンサルティングなどを得意としている。前職において関与先の上場支援、多くの業種の税務経営支援、相続税、事業承継対策に従事し、12年の実務経験を経て独立開業。現在、職員6名の体制でお客様を支援。
事業再構築補助金の書類確認など多岐にわたる業務に対応ができる。圧倒的な実績を持つ認定経営革新等支援機関として多くの事業者を支援。愛媛県内で事業再構築補助金の採択率が税理士、会計士、中小企業診断士などの中で5位になる。四国税理士会松山支部所属。
高齢化社会の要請である介護事業経営支援にも取り組み、新規事業立ち上げから財務体質改善、集客アドバイスなど、さまざまなサービスを提供。また、様々な業種に対応し、建設業、飲食業、不動産業、社会福祉法人、酪農業、さらには漫画家、芸能関係などの珍しい業種にも対応している。仕事のほとんどがお客様や他士業の先生からの紹介となっている。現状では80%が紹介で、それ以外は直接の依頼や、ネットでの集客である。税理士業務以外の仕事(保険、法人設立、建設業許可など)は、提携している専門家の方に積極的に依頼し、お客様へのサポート体制の拡充を図っている。顧問先が黒字になるように、出来上がった試算表を基に徹底的に分析して改善すべき点を指摘。また、多くの業種を取り扱っていて、周りの業界のヒアリング調査も実施。これにより、一般的には7割が赤字企業といわれるなか、当事務所の顧問先の黒字率は6割を超える。
【他媒体での監修事例】
・UPSIDERお役立ち記事にて記事監修
新事業進出補助金の技術導入費とは何かを確認していきましょう。
新事業進出補助金の技術導入費とは?
新事業進出補助金の技術導入費は公募要領で以下のように定義されています。
技術導入費
補助事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費
これは、新事業進出補助金を活用して行う新規事業の遂行において、必要となる知的財産権を他者から取得する際にかかる費用を指しています。
技術導入費の定義をみたところで疑問となってくるのが、知的財産権にはどのようなものがあるかという点です。知的財産権には幅広い項目がありますが、特許庁が所管している以下の四つの産業財産権が新事業進出補助金の主な対象となると考えられます。
特許権
自然法則を利用した、新規かつ高度で産業上利用可能な発明を保護
例:通信の高速化、携帯電話の通信方式に関する発明実用新案権
物品の形状、構造、組合せに関する考案を保護
例:携帯性を向上させたベルトに取付け可能なスマートフォンカバーの形状に関する考案意匠権
独創的で美感を有する物品の形状、模様、色彩等のデザインを保護
例:美しく握りやすい曲面が施されたスマートフォンのデザイン商標権
商品・サービスを区別するために使用するマーク(文字、図形など)を保護
特許庁「スッキリわかる知的財産権」
例:電話機メーカーが自社製品を他社製品と区別するために製品などに表示するマーク
これらの知的財産権を他者から取得する際の費用が、技術導入費として補助対象経費となります。
新事業進出補助金の技術導入費の具体的な事例として考えられるケースをピックアップしてみました。
新事業進出補助金の技術導入費の具体例
新事業進出補助金を活用して行う新製品の開発のために特許権で保護されている技術の利用が必要な場合は、その費用を技術導入費として計上することができます。
例えば、製造業の企業が新たな市場に進出するために、既存の特許技術を活用した新製品を開発する場合、その特許権の使用料やライセンス料を技術導入費として申請できます。
新規事業で使用する製品の構造や形状について、実用新案権で保護されている考案を活用する必要がある場合、その利用権を取得する費用を技術導入費として計上できます。
新事業進出補助金を活用して行う新製品に商標権で保護されたロゴマークを活用したい場合には、その費用を技術導入費として計上することができます。
ブランド価値の高い商標を自社の新製品に使用することで、市場での認知度を高め、新たな顧客層へのアプローチが可能になります。
新規事業で提供するサービスや製品のデザインに関して、意匠権で保護されているデザインを活用する場合、その利用権を取得する費用も技術導入費として計上できます。
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技術導入費を新事業進出補助金の経費として計上する際の注意点について解説していきます。
新事業進出補助金で技術導入費を計上する際の注意点
知的財産権を所有する他者から取得する場合には書面による契約の締結が必要です。口頭での合意だけでは補助対象として認められません。
また、技術導入費の支払いは補助事業実施期間中に支払う必要がある点にも注意しましょう。補助事業実施期間は交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内)となっていますので、この期間内に契約締結と支払いを完了させる必要があります。
技術導入費支出先には専門家経費と外注費を合わせて支払えない点に注意が必要です。専門家経費と外注費は以下のような経費であるので、技術導入費を新事業進出補助金に計上する際には一度確認しておくと良いでしょう。
専門家経費
補助事業遂行のために必要な専門家に支払われる経費(補助上限額:100万円)
外注費
補助事業遂行のために必要な検査等・加工や設計等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費(補助上限額:補助金額全体の10%)
同じ支出先に対して、技術導入費と専門家経費や外注費を重複して支払うことはできません。それぞれの経費の性質を理解し、適切に区分して計上する必要があります。


技術導入費を計上する際は、導入する技術が新事業進出要件を満たす事業に必要なものであることを明確にする必要があります。
新事業進出補助金では、製品等の新規性要件、市場の新規性要件、新事業売上高要件を満たす必要があります。導入する技術が、これらの要件を満たす新規事業の実現に不可欠であることを事業計画書で説明することが重要です。
技術導入費として認められるのは、補助事業実施期間中に契約し、支払いを完了した経費のみです。補助事業実施期間外の契約や支払いは補助対象となりませんので、スケジュール管理には十分注意しましょう。
特に、知的財産権の取得には交渉や契約手続きに時間がかかる場合があるため、早めに準備を始めることをおすすめします。
新事業進出補助金には、技術導入費のほかに「知的財産権等関連経費」という補助対象経費もあります。
知的財産権等関連経費
補助事業の開発成果の事業化にあたり必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用や外国特許出願のための翻訳料など知的財産権等取得に関連する経費
技術導入費は「他者から知的財産権を導入する」費用であるのに対し、知的財産権等関連経費は「自社で知的財産権を取得する」費用です。この違いを理解して、適切に区分して計上しましょう。
この記事では、新事業進出補助金の技術導入費について具体的な活用事例を交えながら解説してきました。
技術導入費は、新規事業の展開に必要な知的財産権を他者から取得する際の費用を補助対象とするものです。特許権、実用新案権、意匠権、商標権などの産業財産権の導入に活用できます。
技術導入費は知的財産権という法律上の問題が絡んでくることから早めの準備が必要です。書面による契約締結が必須であること、専門家経費や外注費との重複計上ができないこと、補助事業実施期間内に契約・支払いを完了する必要があることなど、この記事で解説した注意点も参考にしながら新事業進出補助金の有効活用を進めてくださいね。
新事業進出補助金の第2回公募期間は令和7年12月19日(金)18:00までです。申請を検討されている方は、早めに準備を始めることをおすすめします。
