これから始まる中小企業新事業進出補助金(以下、新事業進出補助金)に申請したいと考える方は多いでしょう。事業再構築補助金の後継補助金と言われており、多額の補助金額を受け取れる補助金制度であることも発表されました。
基本的に、政府が運営している補助金は返済不要です。そのため、新事業進出補助金も返済不要の補助金になるでしょう。
しかし、新事業進出補助金で返済を要求される場合はあるのでしょうか?また、返済しなくてはならないのはどのような場合でしょうか。
今回は新事業進出補助金で返済が必要になってしまう事例や収益納付が必要な場合などについてを解説していきます。
この記事の目次
新事業進出補助金とはどのようなものか、以下で解説します。
新事業進出補助金とは、現在国会で審議されている補正予算案の中で、中小企業や小規模事業者への支援策の一つとされている補助金制度です。事業再構築補助金の後継補助金と言われています。
現在まだ具体的な補助金額や募集要項は発表されていませんが、既存基金を活用して1,500億円規模の補助金になる予定と記載されているので、かなり大きな金額を受け取ることができる補助金になると予想されています。
上記で記載した通り、新事業進出補助金でもらえる金額は発表されていません。しかし、事業再構築補助金の後継補助金なので、補助金額も同じような金額になるのではないかと予想できます。
以下は、事業再構築補助金の第12回公募で設定されていた補助上限金額と補助率です。新事業進出補助金で受け取れる金額を考える際の参考にしてみてください。
従業員数 | 補助上限金額 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合 | 補助率 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合 |
20人以下 | 1,500万円(2,000万円) | 中小企業:1/2 (2/3) 中堅企業:1/3 (1/2) |
21~50人 | 3,000万円(4,000万円) |
51~100人 | 4,000万円(5,000万円) |
101人以上 | 6,000万円(7,000万円) |
参照:事業再構築補助金 必須申請要件
企業の種類 | 従業員数 | 補助上限金額 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合 | 補助率 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合 |
中小企業 | 20人以下 | 3,000万円(4,000万円) | 1/2 (2/3) |
21~50人 | 5,000万円(6,000万円) |
51~100人 | 7,000万円(8,000万円) |
101人以上 | 8,000万円(1億円) |
中堅企業 | – | 1億円(1.5億円) | 1/3(1/2) |
参照:事業再構築補助金 必須申請要件
従業員数 | 補助上限金額
| 補助率 |
5人以下 | 1,000万円 | 中小企業:2/3 (従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは 3/4)
中堅企業:1/2 (従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは 2/3) |
6~20人 | 1,500万円 |
21人~50人 | 2,000万円 |
51人以上 | 3,000万円 |
参照:事業再構築補助金 必須申請要件
従業員数 | 補助上限金額
| 補助率 |
5人以下 | 500万円 | 中小企業:3/4(一部 2/3) 中堅企業:2/3(一部 1/2)
※「コロナ借換保証等で既往債務を借り換えていること」という任意要件を満たさない場合、補助率は()内の数字になる |
6~20人 | 1,000万円 |
21人以上 | 1,500万円 |
参照:事業再構築補助金 必須申請要件
従業員数 | 補助上限金額
| 補助率 |
– | 5億円 (建物費がない場合は3億円) | 中小企業:1/2 中堅企業:1/3 |
参照:事業再構築補助金 必須申請要件
新事業進出補助金に申請した場合、最大でどのくらいの補助金を受け取ることができるのか、上記を参考にシュミレーションしてみましょう。
新事業進出補助金の対象経費について、令和6年度補正予算案 中小企業・小規模事業者等関連ポイントには以下のように記載されています。
建物費、機械装置費、システム構築費、技術導入費、専門家経費等
新事業進出補助金は上記の経費を中心に、さまざまなものに使うことができると予想されます。
また、、事業再構築補助金の対象経費は以下の通りでした。
建物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費、廃業費
新事業進出補助金も事業再構築補助金のように、他の対象経費が増える可能性もあります。ぜひ最新情報を随時チェックしておきましょう。
新事業進出補助金は、基本的に返済不要な補助金だと予想されています。
しかし、場合によっては異例として給付された後に返済を求められてしまうケースもあるかもしれません。以下では、事業再構築補助金を参考に返済を要求されてしまう場合について予想していきます。
新事業進出補助金は返済不要?返済が求められる場合は?
事業再構築補助金やものづくり補助金、持続化補助金などの補助金は基本的に返済不要です。新事業進出補助金も同じく返済不要の補助金になるでしょう。補助金とは、国がある目的の達成を促すために、企業に対し設備投資等を促すためのものです。
事業再構築補助金では、企業がポストコロナへの対応を契機にして付加価値の高い産業へシフトすることを促していました。そのため、返済不要にすることで積極的な投資を促していました。
新事業進出補助金も事業再構築補助金と同じように、中小企業が新事業に進出することを促すものなので、返済不要になるでしょう。
基本的に新事業進出補助金は返済不要の補助金になると言われていますが、場合によっては補助金の趣旨に合わないと事務局から事業再構築補助金の返済を求められることがあるかもしれません。
例えば、給付後に会社が廃業や倒産した場合や、利益を出すと返済を求められてしまう収益納付の場合などが考えられるでしょう。
返済を求められるのは異例のケースですが、必ずしも会社は倒産等をしないとも言えません。補助金申請前に自社の状況を確認し、返済を求められてしまうことのないように準備しましょう。
第12回公募対応「採択率を上げるポイントがわかる事業再構築補助金事業計画書作成マニュアル」
以下では、新事業進出補助金で返済を求められてしまうかもしれない具体例をいくつか解説します。政府が運営する他の補助金制度で返済が求められてしまった過去の事例もあわせて紹介します。
新事業進出補助金の返済を求められてしまう7つの具体例
元々補助金を活用して行うと予定して事業計画書にも記載していた事業とは別の事業を行った場合、返済を求められることがあります。
ものづくり補助金では、過去に減塩明太子を製造するために補助金を活用して導入された機械が、実際には普通の明太子を製造するために使われていたことを理由に870万円の返済を求められています。
このような軽微な変更では補助金は返済不要と思うかもしれませんが、場合によっては返還命令が出ることがあります。事業計画書を作成する際は、必ず実現可能な事業を考え、記載しましょう。
収益納付といって、補助金を活用して事業を行い、その結果利益が出た場合、その一部または全部を国に返済する必要があります。収益納付の場合は、補助金は法律上国庫(政府の会計のこと)に返納することが決まっています。
当然、新事業進出補助金も収益納付による返済義務が生じるでしょう。収益納付の場合の返済金額の計算方法は補助金の交付規定などに記載されているので、よく確認してみてください。
以下は、事業再構築補助金の収益納付に関する記述です。参考にしてみてください。
○収益納付
事業化状況等報告の内容から、本事業の成果の事業化又は知的財産権の譲渡又は実施権設定及びその他当該事業の実施結果の他への供与により収益が得られたと認められる場合には、受領した補助金の額を上限として、収益納付をしなければなりません。ただし、事業化状況報告の該当年度における決算時の会社全体の経常利益が赤字の場合は免除されます。なお、事業化状況報告における経常利益には、営業外収益を含めません。そのため、決算書の数値と異なる場合があります。
事業再構築補助金 補助事業の手引き
例として、事業再構築補助金で収益納付を行い、補助金の一部を返済しなければいけない事例は以下の通りでした。いずれも、収益との直接の因果関係が明確な場合です。
- 機械装置を事業再構築補助金で導入し、それらを活用して商品の生産をした
- ECサイトを事業再構築補助金で作成し、サイトを使って商品やサービスの販売をした
- 展示会などの出店費用を事業再構築補助金で申請し、商品やサービスを売り上げた
逆に、収益との因果関係がわからないケースは収益納付の対象にはなっていませんでした。以下のような場合は収益納付は不要です。
- 自社紹介サイトを事業再構築補助金を活用して作成した
- 建物の改装費用や建設費用を事業再構築補助金の対象とした
- チラシやパンフレット、フライヤーの作成や配布費用を事業再構築補助金で申請した
補助金にもよりますが、補助金の給付を受けた後、数年間にわたり自社の利益を政府に報告しなければいけないと規定されている補助金もあります。その場合、給付後の報告は義務なので、報告を怠ると事務局から催促を受け、最悪の場合補助金の返済を求められる可能性があります。
申請時に外部のコンサルに申請サポートを依頼している場合、年次報告のサポートも行ってくれるかどうかしっかり確認しておきましょう。
補助金の給付を受けた後に、事務局もしくは政府の予算についての監査を行なっている会計検査院が、補助金が正しく使われているかを調査、場合によっては事務所に訪問する場合があります。
会計検査院の調査は厳しく、領収書などを細かくチェックされます。そのため、会計検査院への対応が悪いと、嫌疑がかけられさらに厳しく調査されます。最悪の場合、返済不要だと思っていた補助金でも返済を求められることがあります。そのため、会計検査院の調査は誤魔化さず真摯に対応しましょう。
補助金制度によりますが、申請時に要件がある補助金制度もあります。その要件を達成できなかった場合は補助金の返済を求められる場合があります。
例として、事業再構築補助金では成果目標未達の場合に関する対応について以下のように記されていました。
○成果目標未達の場合の補助金返還
大規模賃金引上枠の補助事業者が事業計画終了時点を含む決算年度までの間、事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引上げることが達成できなかった場合、及び事業計画終了時点を含む決算年度までの間に常勤従業員数の増加率を年平均 1.5%以上(初年度(補助事業終了年度)は 1.0%以上)にすることが達成できなかった場合は、通常枠の(従業員規模ごとの)補助上限額との差額分について補助金の返還を求めます。
事業再構築補助金 補助事業の手引き
成果目標の未達成の場合について説明しましたが、廃業や倒産による目標未達成の場合についても、補助金の返済が必要になってしまいます。
事業者の存続を応援するための補助事業なので、廃業や倒産にならないで済むような事業計画を考えましょう。
補助金において申請経費を不当に吊り上げた場合、事業再構築補助金の採択後や給付後であっても補助金の返還命令が出る可能性があります。不正受給をしてしまうと後から苦労することになります。絶対にやめましょう。
新事業進出補助金にせっかく採択されても、返済要請が来てしまっては後から苦労してしまいます。返済不要にする方法を以下で解説します。
当たり前ですが、事務局や会計検査院に嘘をつくのはやめましょう。虚偽の経費申告などは言うまでもないですが、立入検査の際に嘘をつくことも行わないようにしましょう。
補助金の返済はもちろんのこと、最悪不正受給など悪質認定されてしまうと詐欺罪で刑事告訴される可能性があります。
新事業進出補助金の規定次第ですが、利益を出すと一部返済を行わなければならなくなる場合があります。故意に経費を圧縮するのは良くありませんが、次年度利益を出すために更なる投資を行う必要がある場合など、先行投資で経費をかける方が長期的なメリットがあるケースが多いです。
そのため、返済不要になるようにしっかり利益を計算した上で事業を行いましょう。
先ほども述べましたが、新事業進出補助金の制度次第では給付後に自社状況についての報告義務が発生するので、年次報告は絶対に行うようにしましょう。
補助金の申請支援をコンサルタントや専門家に依頼した場合、事務処理等をコンサルに依頼したままになっていて報告対応をしてもらえず、結果的に立入検査等になってしまう場合があります。年次報告まで対応してもらえるかは各コンサルタントに事前に聞いておくようにしましょう。
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・交付申請の方法
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・個人事業主の申請方法
・事業計画書の作成方法
株式会社補助金プラスでは、事業再構築補助金給付後の年次報告まで5年間しっかりとサポート致します。この報告を忘れてしまうと、調査が行われてしまい、最悪の場合返済を求められることもあります。返済不要のままにするためにも、これらの対応はしっかりと行うようにしましょう。
株式会社補助金プラスでは、新事業進出補助金を活用したい事業者様に向けて、申請支援を行なっています。
新事業進出補助金はおそらく返済不要で多額の補助金を受け取ることができる便利な制度になりますが、審査は厳しくなると予想されています。また、申請準備も煩雑で難しくなり、悩んでしまう事業者様も多くなるでしょう。株式会社補助金プラスでは、お悩みを抱える事業者様をさまざまな面でサポートすることができます。
しっかり事業者様の状況をヒアリングし、採択に向けたポイントを押さえた事業計画書の作成や、必要書類の準備、採択後の実績報告までオプションで対応可能です。
これまで利用された事業者様の採択率は90%です。オンラインで対応するので、どこにお住まいの事業者様でもサポートできます。
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今回は新事業進出補助金が返済不要なのかについて解説をしました。補助金が返済が必要になってしまうケースもたくさんありますので、それらに気をつけて事業を進めてみてください。
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