【2024.11】事業再構築補助金の中小企業・中堅企業の定義は?自社は当てはまるのか確認しよう
中小企業や中堅企業は事業再構築補助金の対象です。必須要件を満たした上で申請し、審査で採択されれば、事業再構築補助金を受給することができます。しかし、そもそも自社が中小企業や中堅企業に当てはまるかどうか不安な方もいるでしょう。
本記事では、そもそも中小企業等や中堅企業等の定義が何なのか、会社規模によって受給できる事業再構築補助金の額はどれくらい変わるのかについて紹介します。
- 事業再構築補助金における中堅企業、中小企業の定義がわかる
- 会社規模によって受け取れる事業再構築補助金の額がどのくらい変わるかわかる
監修者
松山市の税理士 越智聖税理士事務所代表。株式会社聖会計代表取締役社長。税理士。
経済産業省認定経営革新等支援機関
越智聖税理士事務所は平成27年4月に松山で開業した、主に中四国全域の中小企業の皆様をご支援している会計事務所である。会計・税務はもちろんのこと、お客様のお悩み事を解決する総合的なコンサルティング、緻密な経営診断にもとづく経営コンサルティングなどを得意としている。前職において関与先の上場支援、多くの業種の税務経営支援、相続税、事業承継対策に従事し、12年の実務経験を経て独立開業。現在、職員6名の体制でお客様を支援。
事業再構築補助金の書類確認など多岐にわたる業務に対応ができる。圧倒的な実績を持つ認定経営革新等支援機関として多くの事業者を支援。愛媛県内で事業再構築補助金の採択率が税理士、会計士、中小企業診断士などの中で5位になる。四国税理士会松山支部所属。
高齢化社会の要請である介護事業経営支援にも取り組み、新規事業立ち上げから財務体質改善、集客アドバイスなど、さまざまなサービスを提供。また、様々な業種に対応し、建設業、飲食業、不動産業、社会福祉法人、酪農業、さらには漫画家、芸能関係などの珍しい業種にも対応している。仕事のほとんどがお客様や他士業の先生からの紹介となっている。現状では80%が紹介で、それ以外は直接の依頼や、ネットでの集客である。税理士業務以外の仕事(保険、法人設立、建設業許可など)は、提携している専門家の方に積極的に依頼し、お客様へのサポート体制の拡充を図っている。顧問先が黒字になるように、出来上がった試算表を基に徹底的に分析して改善すべき点を指摘。また、多くの業種を取り扱っていて、周りの業界のヒアリング調査も実施。これにより、一般的には7割が赤字企業といわれるなか、当事務所の顧問先の黒字率は6割を超える。
【他媒体での監修事例】
・UPSIDERお役立ち記事にて記事監修
中堅企業が使える事業再構築補助金とは
事業再構築補助金は、個人事業主を含む中小企業、中堅企業を対象にした補助金制度です。コロナ禍で経営が厳しくなった事業者が新たに新規事業に挑戦する際にかかる経費を補助してくれるものです。
申請すれば誰もが利用できる補助金というわけではなく、申請後は事務局の審査を受けなくてはなりません。事務局の審査に通過し、採択された事業者のみが補助事業実施後に補助金を受け取ることができます。
事業再構築補助金における中小企業等の定義
では、事業再構築補助金の対象である中小企業や中堅企業とは具体的にどのような企業のことを指すのでしょうか。以下でそれぞれ解説します。
事業再構築補助金における中小企業、中堅企業の定義
中小企業とは
この章では、まず中小企業について説明します。
中小企業の条件はいくつかありますが、ここではその1つを紹介します。まずは、以下の表に示す通り資本金や従業員数が一定数以下であるということが条件です。それぞれ業種に応じて上限が定められており、以下の数値以下であれば、中小企業と認められます。
中小企業等に入る中小企業以外の法人とは?
また、「中小企業等」という分類もあります。中小企業等、というのは中小企業を包含する分類です。中小企業とその他、ということです。つまり中小企業は、中小企業等という大きな括りの中の一部です。
では、中小企業等の中で、中小企業に該当しない法人はどんなものがあるでしょう。公募要領には次のように記載されています。
中小企業等経営強化法第2条第1項第6号~第8号に定める法人または法人税法別表第二に該当する法人、農業協同組合法に基づき設立された農事組合法人もしくは法人税法以外の法律により公益法人等とみなされる法人
参照:補助対象者となる法人格の一覧
上記の内容を簡単にまとめると、次の4つの法人が中小企業等に含まれます。
- いわゆる企業組合や協業組合などのように、中小企業等経営強化法という法律の第2条第1項第6号〜第8号に記載された法人
- 法人税法別表第二に当てはまる法人(社会医療法人や学校法人などがこれに含まれます)
- 農業協同組合法に基づき設立された農事組合法人
- 法人税法以外の法律により公益法人等とみなされる法人(ただし従業員数300人以下に限る)
自社が上記に当てはまれば中小企業等のうちとしてみなされます。しっかり確認しましょう。
大企業と見なされる例に注意
先ほど表に示した中小企業の定義を満たしていても、大企業として扱われる、つまり事業再構築補助金を受け取れない中小企業もいます。このような中小企業を「みなし大企業」といい、以下の①〜⑤の定義に当てはまれば、たとえ資本金と従業員数において中小企業の定義を満たしていても、大企業と見なされてしまいます。
①発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業
②発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業
③大企業の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている中小企業
④発行済株式の総数又は出資価格の総額を①~③に該当する中小企業者が所有している中小企業
⑤①~③に該当する中小企業者の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている中小企業
上記に該当する中小企業は、事業再構築補助金の対象外です。中小企業の条件を満たしていても、事業再構築補助金を受け取ることができないので注意しましょう。
事業再構築補助金における中堅企業等の定義
中小企業等について理解したところで、次は中堅企業等の定義について確認してみましょう。
事業再構築補助金における中堅企業等の定義
中堅企業とは
中堅企業とは、中小企業の条件を超えてしまった企業のことです。事業再構築補助金において、中堅企業等は資本金が10億円以下でかつ中小企業等の定義に該当しない企業等と定義されています。
大企業ではないので、基本的に事業再構築補助金を受け取れます。しかし中堅企業と定義されている以上、中小企業とは受給の仕組みが異なります。受給の詳細については以下で説明します。
中堅企業等に当てはまる法人とは?
中堅企業等に当てはまる法人についてですが、中堅企業等は以下のように定義されています。
まず、「会社若しくは個人又は法人税法別表第二に該当する法人、農業協同組合法に基づき設立された農事組合法人若しくは法人税法以外の法律により公益法人等とみなされる法人である」ことを満たした上で
- 中小企業等に該当しないこと
- 資本金の額又は出資の総額が定められていない場合は、従業員数(常勤)が2,000 人以下であること
を満たすのが中堅企業等です。
また、中小企業等経営強化法第2条第5項に定めるもののうち、以下①~④のいずれかに 該当するものであって、上記に示した、「中小企業等のうち、中小企業以外の法人」に該当しないものを指します。
- 生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会の構成員の3分の2以上が、常時300人以下の従業員を使用する者であって10億円未満の金額をその資本金の額又は出資の総額とするものであるもの。
- 酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会の構成員である酒類製造業者の3分の2以上が、常時500人以下の従業員を使用する者であるものであって10億円未満の金額をその資本金の額又は出資の総額とするものであるもの。その構成員である酒類販売業者の3分の2以上が、常時300人以下の従業員を使用する者であって10億円未満の金額をその資本金の額又は出資の総額とするものであるもの。
- 内航海運組合、内航海運組合連合会 その構成員である内航海運事業を営む者の3分の2以上が常時500人以下の従業員を使用する者であって10億円未満の金額をその資本金の額又は出資の総額とするものであるもの。
- 技術研究組合の構成員の3分の2以上が以下の事業者のいずれかであるもの。 中小企業等経営強化法第2条第5項第1号~第4号に規定するもの 、企業組合、協同組合
①から③は要するに、組合や会の構成員が雇っている労働者数および資本金の総額の上限に関する話です。簡単に言えば、構成員の3分の2以上がその上限値を守っていれば、中堅企業とみなされます。
個人事業主も事業再構築補助金の対象となる
中小企業や中堅企業に合わせて、個人事業主も事業再構築補助金の対象です。提出書類がやや異なりますが事業再構築補助金を受け取る上での要件や事業再構築補助金の金額などは同じです。
しかし、財務状況や実施体制が十分でない場合は事業再構築補助金の受給対象として採択されないこともあるので注意してください。
個人事業主の分類方法も中小・中堅企業と同じ
個人事業主は中小企業等と中堅企業等の分類の方法もこれまで解説してきた分類の方法と同じです。自身が中小企業と中堅企業のどちらに当てはまるのか把握するために、従業員数を確認しておきましょう。多くの個人事業主は中小企業に該当することが多いです。
中小企業等・中堅企業等の事業再構築補助金の補助率、補助金額は?
中小企業、中堅企業はそれぞれいくらくらいの事業再構築補助金を受け取ることができるのでしょうか。補助率や補助上限金額について、以下で解説します。
中小企業等・中堅企業等の事業再構築補助金の補助率、補助金額は?
補助率は会社規模で異なる
まずは事業再構築補助金の補助率について説明します。
事業再構築補助金の補助率は、対象となる法人が中小企業等か中堅企業等かで決まります。また、応募する枠によっても異なります。
以下は、直近で募集があった第12回公募時の枠、類型ごとに補助率をまとめた表です。
※現在、第12回公募は募集終了しています。
中小企業 | 中堅企業 | |
成長分野進出枠(通常類型) | 1/2 (2/3) ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合 | 1/3 (1/2) ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合 |
成長分野進出枠(GX進出類型) | 1/2(2/3) ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合 | 1/3(1/2) ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合 |
コロナ回復加速化枠(通常類型) | 2/3 ※従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは 3/4 | 1/2 ※従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは 2/3 |
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型) | 3/4 ※コロナ借換保証等で既往債務を借り換えていることという要件を満たさない場合は2/3 | 2/3 ※コロナ借換保証等で既往債務を借り換えていることという要件を満たさない場合は 1/2 |
サプライチェーン強靱化枠 | 1/2 | 1/3 |
多くの事業者が応募する事業再構築補助金の成長分野進出枠は、中小企業等の補助率は1/2、中堅企業等の補助率は1/3です。コロナ回復加速化枠等は、成長分野進出枠よりも基本的に補助率が高くなっています。
上記のように、応募枠や類型でも補助率は変わりますが、会社規模でも補助率は大きく変わるのです。
補助金額は従業員数で異なる
次に、受け取ることができる事業再構築補助金の最大補助金額について説明します。
補助金額は中小企業か中堅企業かによって異なる枠もありますが、基本的には従業員数で決まります。
具体的な最大補助金額は以下の通りです。
成長分野進出枠(通常類型)
従業員数 | 補助上限金額 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の金額 |
20人以下 | 1,500万円(2,000万円) |
21~50人 | 3,000万円(4,000万円) |
51~100人 | 4,000万円(5,000万円) |
101人以上 | 6,000万円(7,000万円) |
成長分野進出枠(GX進出類型)
企業規模 | 従業員数 | 補助上限金額 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の金額 |
中小企業 | 20人以下 | 3,000万円(4,000万円) |
21~50人 | 5,000万円(6,000万円) | |
51~100人 | 7,000万円(8,000万円) | |
101人以上 | 8,000万円(1億円) | |
中堅企業 | – | 1億円(1.5億円) |
コロナ回復加速化枠(通常類型)
従業員数 | 補助上限金額 |
5人以下 | 1,000万円 |
6~20人 | 1,500万円 |
21人~50人 | 2,000万円 |
51人以上 | 3,000万円 |
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)
従業員数 | 補助上限金額 |
5人以下 | 500万円 |
6~20人 | 1,000万円 |
21人以上 | 1,500万円 |
サプライチェーン強靱化枠
従業員数 | 補助上限金額 |
– | 5億円 (建物費がない場合は3億円) |
上記はあくまでも補助上限金額であり、必ずしも満額受け取れるわけではない点に注意しましょう。
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まとめ
この記事では、事業再構築補助金について、中小企業等、中堅企業等の定義や条件を交えながら説明しました。
企業規模や従業員数によって補助率や補助金額が変わる点にはよく注意しておきましょう。自社の会社規模をしっかり確かめて、便利な事業再構築補助金にぜひ申請してみてください!