事業再構築補助金の加点は、事業計画書と並んで採択の可否を決定する要因となるのでとても重要です。しかし「どんな加点項目があるのかわからない」「どのように加点を取れるのかわからない」という方も多くいるでしょう。
この記事では、事業再構築補助金の加点項目をその具体的な取得方法とともに解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
加点項目に関して説明する前に、まずは事業再構築補助金の概要について解説します。
事業再構築補助金は、コロナ禍で経営が難しくなった中小企業・中堅企業が新たな事業を始める際、かかる費用を補助してくれる制度です。かなり大きな金額を受け取れる可能性があるので、人気のある補助金制度です。中小企業の中には個人事業主も含まれます。
事業再構築補助金では、申請枠にもよりますが最大5億円もの補助金を受け取ることが可能です。
以下は、第12回公募で設定されていた申請枠や類型別に設定された補助率、補助上限金額の表です。
成長分野進出枠(通常類型)
従業員数 | 補助上限金額 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の金額 | 補助率 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の補助率 |
20人以下 | 1,500万円(2,000万円) | 中小企業:1/2 (2/3) 中堅企業:1/3 (1/2) |
21~50人 | 3,000万円(4,000万円) |
51~100人 | 4,000万円(5,000万円) |
101人以上 | 6,000万円(7,000万円) |
参照:事業再構築補助金 必須申請要件
成長分野進出枠(GX進出類型)
企業の種類 | 従業員数 | 補助上限金額 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の金額 | 補助率 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の補助率 |
中小企業 | 20人以下 | 3,000万円(4,000万円) | 1/2 (2/3) |
21~50人 | 5,000万円(6,000万円) |
51~100人 | 7,000万円(8,000万円) |
101人以上 | 8,000万円(1億円) |
中堅企業 | – | 1億円(1.5億円) | 1/3(1/2) |
参照:事業再構築補助金 必須申請要件
コロナ回復加速化枠(通常類型)
従業員数 | 補助上限金額
| 補助率 |
5人以下 | 1,000万円 | 中小企業:2/3 (従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは 3/4)
中堅企業:1/2 (従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは 2/3) |
6~20人 | 1,500万円 |
21人~50人 | 2,000万円 |
51人以上 | 3,000万円 |
参照:事業再構築補助金 必須申請要件
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)
従業員数 | 補助上限金額
| 補助率 |
5人以下 | 500万円 | 中小企業:3/4(一部 2/3) 中堅企業:2/3(一部 1/2)
※「コロナ借換保証等で既往債務を借り換えていること」という任意要件を満たさない場合、補助率は()内の数字になる |
6~20人 | 1,000万円 |
21人以上 | 1,500万円 |
参照:事業再構築補助金 必須申請要件
サプライチェーン強靱化枠
従業員数 | 補助上限金額
| 補助率 |
– | 5億円 (建物費がない場合は3億円) | 中小企業:1/2 中堅企業:1/3 |
参照:事業再構築補助金 必須申請要件
以下は、第12回公募で定められていた事業再構築補助金の対象経費です。
事業再構築補助金は何にでも使えるわけではなく、上記の経費に当てはまるもののみに活用できます。また、それぞれの経費ごとに個別でルールが場合もあるので注意しましょう。
事業構築補助金における加点の概要について説明します。
事業再構築補助金の加点とは、採択を決める審査の際に審査に有利となる要因のことです。この記事で説明するような特定の条件を満たした事業者に加点が与えられます。
事業再構築補助金の採択の可否は事業計画書に基づいて審査されますが、加点があることによって採択の可能性が高まります。
事業再構築補助金に関して加点がどの程度採択率に影響を与えるかを示したデータはありません。しかし、参考としてものづくり補助金では加点項目が増えるほど採択率が顕著に増加しているというデータが公表されています。
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第12回公募対応「採択率を上げるポイントがわかる事業再構築補助金事業計画書作成マニュアル」
事業再構築補助金における各加点項目とその取得方法について解説します。事業再構築補助金における加点項目は全部で12個あります(第12回公募時点)。
応募申請時において、コロナ借換保証等で既往債務を借り換えていること。
※コロナ借換保証等とは、下記の制度を指す。
(1)伴走支援型特別保証(コロナ借換保証)
※ 各自治体が実施している制度においては、国の全国統一制度である「伴走支援型特別保証」
に対応した制度であれば対象とします。
(2)コロナ経営改善サポート保証
(3)新型コロナウイルス感染症特別貸付
(4)生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付
(5)新型コロナ対策資本性劣後ローン
(6)生活衛生新型コロナ対策資本性劣後ローン
(7)[新型コロナ関連]マル経融資
(8)[新型コロナ関連]生活衛生改善貸付
(9)[新型コロナ関連]沖縄雇用・経営基盤強化資金 等
※応募申請時において、既往債務を借り換えていることが必要です。過去に上記の制度を
利用した実績があっても、完済している場合は対象になりませんのでご注意ください。
事業再構築補助金公募要領(第12回)
コロナ借換加点は第12回公募から新たに設定された加点項目です。コロナによる借換で債務を抱えていると加点になります。そもそも事業再構築補助金は、コロナ禍の影響を強く受けた事業者の救済を目的としているので、しっかり自社がコロナ禍でどのような影響を受けているか確認しておきましょう。
借換先の金融機関等に「コロナ借換要件・加点確認書」を用意してもらい、申請時に提出してください。
指定の要件を満たし、コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)に申請すること。
事業再構築補助金公募要領(第12回)
2つ目の加点が「事業類型(D)申請事業者に対する加点」です。この加点は、コロナ回復加速化枠の要件を満たして申請するだけで取得することができます。
データに基づく政策効果検証・事業改善を進める観点から、経済産業省が行う EBPM の取
組に対して、採否に関わらず、継続的な情報提供が見込まれるものであるか。
事業再構築補助金公募要領(第12回)
EBPMとは、エビデンス・ペースト・ポリシー・メイキングすなわち証拠に基づく政策立案の略で、政策の立案をエビデンスに基づいて行うという考え方のことです。
事業再構築補助金の効果を事業者の財務状況等のエビデンスに基づいて評価しようという目的のもとこの加点項目が作られたと考えられます。
EBPMへの取組の協力が具体的に何をさすのかは公表されていませんが、ミラサポplus等で事業財務状況を入力することなどが求められるでしょう。
この加点を取得するには、電子申請時にチェックマークを入れるだけです。申請時に書類等を作成・提出する必要はありません。
「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトに おいて宣言を公表している事業者。(応募締切日時点)
事業再構築補助金公募要領(第12回)
4つ目の加点項目はパートナーシップ構築宣言を公表している事業者が加点になるというものです。
パートナーシップ構築宣言とは次の内容を目的としたものです。
1.サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列等を越えた新たな連携
2.親事業者と下請事業者との望ましい取引慣行(下請中小企業振興法に基づく「振興基準」)の遵守を宣言し、本ポータルサイトに掲載することで、各企業の取組の「見える化」を行います。
パートナーシップ構築宣言ポータルサイト
パートナーシップ構築宣言は、パートナーシップ構築宣言ポータルサイトより宣言を行います。本サイトの登録方法に従って宣言を行いましょう。
加点を獲得するには事業再構築補助金の締切日までに宣言が完了している必要があり、宣言が認められるまでには数日かかることもあるので早めの宣言をおすすめします。
中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)等から支援を受けており(※1)、応募申請時において以下のいずれかに該当していること。
(1) 再生計画等を「策定中」の者※2
(2) 再生計画等を「策定済」かつ応募締切日から遡って3年以内(令和2年7月1日以 降)に再生計画等が成立等した者
事業再構築補助金公募要領(第12回)
中小企業活性化協議会等からの支援を受けており、事業再生を行っている再生事業者は加点を受けることができます。
再生事業者に対する加点は、次の書類を提出することによって取得することができます。
中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)等から支援を受けており、応募申請時において以下のいずれかに該当することを証明する書類
(1) 再生計画等を「策定中」の者
(2) 再生計画等を「策定済」かつ公募終了日から遡って3年以内に再生計画等が 成立等した者
事業再構築補助金公募要領(第12回)
以下のいずれかに該当し、2.補助対象者に記載のある【中小企業者】及び【「中小企業者等」に含まれる「中小企業者」以外の法人】に該当しないこと。
事業再構築補助金公募要領(第12回)
この要件は、①ある程度規模の大きい事業者または②組合に対する加点です。ここでは①について解説します。
「以下のいずれかに該当し」の要件は従業員数が以下の表の数字以下となるかつ、資本金額が10億円以下の事業者のことです。
中小企業者とは以下の図の定義を満たす事業者のことです。
よって、この加点を得るためには以下の二つの条件を満たす必要があります。
・資本金額が「中小企業者」の資本金額より大きい
・従業員数が「中小企業者」より多く要件の数値以下となる
例えば製造業の場合、次の要件を満たすことによって加点を得ることができます。
・資本金額が3億円より大きい
・従業員数が301〜500人
複数の事業者が連携して事業に取り組む場合であって、同じサプライチェーンに属する事業者が、以下を満たし、連携して申請すること。
事業再構築補助金公募要領(第12回)
この加点項目は複数の事業者が連携して事業再構築補助金に申請する場合に受け取ることができる加点で、事業者単体で申請する際に取得することはできません。
以下の説明のように、同じサプライチェーンに属することを証明する書類を提出するとともに、電子申請時にチェックマークを入れることで取得することができます。
・直近 1 年間の連携体の取引関係(受注金額又は発注金額)が分かる書類(※)につい て、決算書や売上台帳などの証憑とともに提出すること。 ・電子申請の際、該当箇所にチェックをすること。
事業再構築補助金公募要領(第10回)
令和 5年度に健康経営優良法人に認定されていること。
※健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト
事業再構築補助金公募要領(第12回)
この加点は、健康経営度の高い事業者に認定されていることで評価される加点です。
この加点を取得するには健康経営優良法人認定事務局ポータルサイトよりご確認ください。
事業実施期間終了後3~5 年で以下の基準以上の賃上げを実施すること(賃上げ幅が
大きいほど追加で加点)。
事業再構築補助金公募要領(第12回)
この加点は、賃上げ幅が大きいほど追加で加点されます。
- 給与支給総額年率平均3%
- 給与支給総額年率平均4%
- 給与支給総額年率平均5%
※事業類型(D)が対象。
事業計画期間終了までの間、事業場内最低賃金を以下の水準とすること(水準が高いほど
追加で加点)。
1.地域別最低賃金より+30 円以上
2.地域別最低賃金より+50 円以上
事業再構築補助金公募要領(第12回)
最低賃金の引き上げをする場合に取得できる加点項目です。
応募申請時点で、以下のいずれかに該当すること。
- 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく認定
(えるぼし1段階目~3段階目又はプラチナえるぼしのいずれかの認定)を受けて
いる者又は従業員数 100 人以下であって、「女性の活躍推進データベース」に女性
活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を公表している者
※厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」
(https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/)
- 次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく認定(くるみん、トライくるみん
又はプラチナくるみんのいずれかの認定)を受けた者又は従業員数 100 人以下であ
って、「一般事業主行動計画公表サイト(両立支援のひろば)」に次世代法に基づ
く一般事業主行動計画を公表している者
※厚生労働省「一般事業主行動計画公表サイト(両立支援のひろば)」
(https://ryouritsu.mhlw.go.jp/hiroba/search_int.php)
事業再構築補助金公募要領(第12回)
ワーク・ライフ・バランスへの配慮がどこまでされているか等によって加点される項目です。上記にある「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく認定」または「次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく認定」に該当するかどうか、それぞれご確認ください。
※事業類型(A)(B)が対象。
⑫ 技術情報管理認証制度の認証を取得していること。
※経済産業省「技術情報管理認証制度」
事業再構築補助金公募要領(第12回)
技術情報管理認証制度の認証を取得している場合に得られる加点です。
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この記事では事業再構築補助金第10 回公募における加点項目について説明してきました。
加点項目は公募回ごとに変わることが多いため、常に最新のものをチェックすると良いでしょう。加点項目を満たすことでより採択率を上げることが可能なので、申請前は必ず加点要件を満たしているか確認するのがおすすめです。