「農業関連の事業にも新事業進出補助金は活用できるのだろうか?」と疑問に思ったことはありませんか?新事業進出補助金は、農業者の方々も利用することが可能です。
今回は農業者の方々が新事業進出補助金を活用してどのような事業を行えば良いのかについて解説します。農業関連に新事業進出補助金を使いたいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
新事業進出補助金についてまだよく知らない方のために、この章では新事業進出補助金そのものについて解説していこうと思います。
新事業進出補助金は、中小企業や小規模事業者が既存事業とは異なる新たな事業に挑戦する際、かかる資金を補助してくれる制度のことです。2025年4月から第一回公募が開始しています。主に建設費や設備投資がメインですが、製造業、サービス業、飲食業から農業まで幅広く利用されると予想されています。
実際に新事業進出補助金はどれくらいの金額を受け取ることができるのでしょうか。
以下の表は、第1回公募で設定されている補助率と補助上限金額です。
従業員数 | 補助上限金額 | 補助率 |
従業員数20人以下 | 2,500万円(3,000万円) | 1/2 |
従業員数21~50人 | 4,000万円(5,000万円) |
従業員数51~100人 | 5,500万円(7,000万円) |
従業員数101人以上 | 7,000万円(9,000万円) |
※補助下限750万円
※大幅賃上げ特例適用事業者(事業終了時点で①事業場内最低賃金+50円、②給与支給総額+
6%を達成)の場合、補助上限額を上乗せ。(上記カッコ内の金額は特例適用後の上限額。)
参照:中小企業新事業進出補助金
従業員数によって補助上限金額に違いがあることが分かりますね。ぜひ自社の状況と照らし合わせ、どれくらいもらうことができそうかをシュミレーションしてみてください。
新事業進出補助金は誰でも活用できる補助金というわけではなく、申請後に事務局から採択されなければ受け取ることができません。どれくらいの事業者が採択されるのか、気になる方も多いでしょう。
新事業進出補助金はまだ第一回公募が開始したばかりなので、採択率が出ていません。そのため、新事業進出補助金の前身補助金である事業再構築補助金の過去の採択率を見ていきましょう。
公募 |
応募件数 |
採択件数 |
採択率 |
第1回公募 |
22,229件 |
8,015件 |
36.0% |
第2回公募 |
20,800件 |
9,336件 |
44.9% |
第3回公募 |
20,307件 |
9,021件 |
44.4% |
第4回公募 |
19,673件 |
8,810件 |
44.8% |
第5回公募 |
21,035件 |
9,707件 |
46.1% |
第6回公募 |
15,340件 |
7,669件 |
49.9% |
第7回公募 |
15,132件 |
7,745件 |
51.1% |
第8回公募 |
12,591件 |
6,456件 |
51.3% |
第9回公募 |
9,368件 |
4,259件 |
45.4% |
第10回公募 |
10,821件 |
5,205件 |
48.1% |
第11回公募 |
9,207件 |
2,437件 |
26.5% |
第12回公募 |
7,664件 |
2,031件 |
26.5% |
事業再構築補助金の直近の採択率をみると、第10回まではおおよそ低くても40%後半程度が多いようです。しかし、第11回公募で採択率がガクンと下がり、30%を切りました。
新事業進出補助金についても同じく採択難易度が高い補助金になると予想されています。しかし、しっかりとした事業計画書を作成し、準備をすれば問題ありません。
さて、新事業進出補助金についての概要は理解できたかと思います。ここからは、農業に新事業進出補助金を活用するために知っておくべきことを解説していきます。
まずは、農業が新事業進出補助金の対象になるのかについて確認しましょう。
新事業進出補助金には様々な要件があり、それらを満たしていれば農業者も対象になります。
以下が基本要件です。
要件 | 内容 |
(1)新事業進出要件 | 「新事業進出指針」に示す「新事業進出」の定義に該当する事業であること ※新事業進出の定義は、「新事業進出指針」にて定めていますので必ずご確認ください
|
(2) 付加価値額要件 | 補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、付加価値額(又は従業員一人当たり付加価値額)の年平均成長率が4.0%(以下「付加価値額基準値」という。)以上増加する見込みの事業計画を策定すること |
(3) 賃上げ要件【目標値未達の場合、補助金返還義務あり】 | 補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、以下のいずれかの水準以上の賃上げを行うこと ①補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、一人当たり給与支給総額の年平均成長率を、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間(令和元年度を基準とし、令和2年度~令和6年度の5年間をいう。)の年平均成長率(以下 「一人当たり給与支給総額基準値」という。)以上増加させること ②補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、給与支給総額の年平均成長率を2.5%(以下 「給与支給総額基準値」という。)以上増加させること |
(4) 事業場内最賃水準要件【目標値未達の場合、補助金返還義務あり】 | 補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、毎年、事業所内最低賃金が補助事業実施場所都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準であること |
(5) ワークライフバランス要件 | 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表していること |
(6) 金融機関要件 | 補助事業の実施にあたって金融機関等から資金提供を受ける場合は、資金提供元の金融機関等から事業計画の確認を受けていること |
<賃上げ特例の適用を受ける場合の追加要件> (7) 賃上げ特例要件【要件未達の場合、補助金返還義務あり】 | 補助事業実施期間内に、以下の要件をいずれも満たすこと ①補助事業実施期間内に、給与支給総額を年平均6.0%以上増加させること ②補助事業実施期間内に、事業場内最低賃金を年額50円以上引き上げること |
引用:中小企業新事業進出補助金 公式サイト
これらの要件さえ満たしていれば、農業関連事業に新事業進出補助金を活用することは十分可能です。
新事業進出補助金は新規事業を行うことを補助する補助金ですが、事業再構築補助金を使って新規事業として農業や漁業などの一次産業を始めることはできません。そのため、既存事業が農業ではない事業者が、新規事業として作物を作るという事業は新事業進出補助金では認められないので注意しましょう。
また、農業者が新事業進出補助金を活用して別の作物を作るという活用方法も認められていません。新事業進出補助金の公募要領に以下のように説明されているので、合わせて確認しておきましょう。
1次産業(農業、林業、漁業)に取り組む事業
※ 主として自家栽培・自家取得した原材料を使用して製造、加工を行っている場合は 1 次業に該当します。ただし、同一構内に工場、作業所とみられるものがあり、その製造活動に専従の常用従業者がいる
場合に限り、2 次又は 3 次産業に該当する場合があります。
※ 例えば、農業に取り組む事業者が、同一構内の工場において専従の常用従業員を用いて、農作物の加工や農作物を用いた料理の提供を行う場合など、2 次又は 3 次産業分野に取り組む場合に必要な経費は、
補助対象となります。2 次又は 3 次産業に取り組む場合であっても、加工や料理提供の材料ある農作物の生産自体に必要な経費は、補助対象外となります。
引用:中小企業新事業進出補助金 公式サイト
農業が補助金に採択された事例についてみていきましょう。過去の採択事例が新規事業のアイデア出しに役立つかもしれません。
事業者名:フルーツ相山農園
事業計画名:老舗ぶどう農家が手掛けるワイン特区韮崎市初となる農園カフェ事業
事業内容:ワイン特区韮崎市内に初となる農園カフェをオープンし、イートインだけでなくテイクアウトや通販用の商品開発を行い、ワイナリー(契約栽培)とのワインイベントの開催など販路開拓にむけた取り組みをSNSで発信する。
ぶどう農園が栽培しているぶどうを生かしてカフェを開業した事例です。
この事例に代表されるような農業からカフェへと展開する事業再構築補助金におけるメリットは以下の通りです。
事業者名:株式会社本原農園
事業計画名:広大な農地を管理する若い農業従事者が、自らが栽培管理したお米を精米し、白米の量産小売販売に挑戦する
事業内容:福井県坂井市で、今まで法人向けに玄米を出荷していた事業者が、新たに玄米保管設備と精米室を導入し、自ら白米の量産小売販売に挑戦する。平均年齢44歳という若さと約40haの広大な農地を武器に、栽培から生産物の直接販売までを手掛けることで他の商品との差別化をアピールし、収益向上を図る
お米の農家が玄米加工に展開している事例です。多くのお米農家にとって参考となる事例ではないでしょうか。垂直展開を行うことで、付加価値額を増加させることができます。
事業者名:株式会社農創会
事業計画名:耕作放棄地の復興による有機農業の展開と有機農産物の販路拡大
事業内容:耕作放棄地の再利用により、有機大豆・麦を生産するとともに、自給率が低い国産有機ごまを栽培し、インターネットモールを活用しながら、全国の有機愛好家や健康志向が高い子育て世代に脱炭素の輪を広げていきます。
ECサイトを活用して農作物の販売を行なった事例です。生産している農作物がインターネットで販売できるものであれば、ECサイトを構築して直接消費者に届けるのは収益性を増大させる良い事業となるかもしれません。
事業者名:メルシーファーム
事業計画名:農家自らが育てた野菜を使った新鮮ファーストキッチン事業
事業内容:人間にとって必要な食。農業経営をする中で、野菜を出荷するだけではなく、毎日収穫した新鮮な野菜を使用し、コロナ禍による影響で減少傾向にある飲食業に目を向け、消費者に直接提供できるフードトラック。またテイクアウト専門店舗で農業の豊かさを守ります。
農業者が事業再構築補助金を活用してキッチンカーを開業した事例です。カフェや飲食店と比較してキッチンカーは
といった点で始めやすい事業と言えるでしょう。
事業再構築補助金を活用してキッチンカー事業を始める方法と注意点については以下の記事で説明しているので参考にしてみてくださいね。
事業者名:湯原ふぁーむ
事業計画名:「6次産業化」により地方の農業を守る。“干し芋”加工による付加価値の向上
事業内容:コロナ禍によって、販路である百貨店やスーパーへの減販を余儀なくされたが、需要の高まっている干し芋に目を付け、加工まで行う第六次産業に転換し、コロナ禍によって変化した需要を捕捉できる事業に取り組む。
農業者が事業再構築補助金を活用して干し芋の加工を行なった事例です。
事業内容で説明されているように、コロナ禍で百貨店やスーパー、飲食店等への出荷量の減少が生じた干し芋に目をつけました。地域の農家を守るために加工事業を展開した点が、この事業が事業再構築補助金に採択されたポイントであると考えられます。
農業が新事業進出補助金を活用する際の注意点をいくつか紹介していきます。
農業者が自分の農地を利用して飲食店を行いたいとしても、無断で農地に飲食店を建設してはいけません。農地を農地以外のものにする農地転用を行うには、行政の許認可が必要となります。新事業進出補助金に採択されたとしても農地転用が認められない場合は事業を行えなくなってしまうので注意が必要です。
なお、新事業進出補助金で店舗等を設立したい時は基本的に新築ではなく既存物件を改修して設立するようにしましょう。詳しくは以下の記事で解説しているので参考にしてみてくださいね。
新事業進出補助金に申請する際、自社で事業計画を作成して必要書類を集める必要がありますが、その作業は複雑で膨大な時間がかかると言われています。せっかく新事業に集中したくても、補助金の申請作業で時間を取られてしまっては意味がないでしょう。
そんなときおすすめなのが申請支援を受けることです。これまでに多くの補助金申請支援を行ってきた機関なら、申請時にしっかりサポートしてくれるので、申請にかかる時間を大幅に減らせるでしょう。
株式会社補助金プラスでは自身で事業計画書を作成できるように、事業計画書の具体例を合わせて紹介している事業計画書作成マニュアルを配布しています。自身で事業計画書を作成するのは難しそうだと感じる場合は、株式会社補助金プラスにお気軽にご相談くださいね。
新事業進出補助金は採択されればすぐに受け取れるというものではなく、設備投資などの支払いが全て完了し、事業実施が完了した後に初めて受け取ることができます。
新事業進出補助金を使った事業は基本的に投資金額がかなり大きくなることから、補助金が交付されるまでのつなぎ融資の計画も合わせて立案しておく必要があります。
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・事業再構築補助金をグランピング事業に活用する方法
・事業再構築補助金をワーケーション事業に活用する方法
・事業再構築補助金をゴルフ関連事業に活用する方法
・事業再構築補助金の事業計画書の書き方
先述したように、株式会社補助金プラスでは事業計画書の作成サポートを含めた新事業進出補助金の申請支援が可能です。どんな新規事業を行うべきかのアドバイスもできます。さまざまな士業が在籍しているので、多方面から事業者様を支援することができます。
晴れて採択された後、実績報告などの支援もオプションになりますが可能です。申請や実績報告は大変手間がかかるため、初めて新事業進出補助金に申請する方は苦戦することが多いでしょう。しかし、株式会社補助金プラスが支援すれば事業者様は適切な申請を行った上で新規事業の準備に専念することが可能になります。
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この記事では、農業が新事業進出補助金を活用する方法について解説してきました。農業に関する事業でこれまでに補助金に採択された事例は豊富にあり、必須要件などを満たせば農業者でも十分に補助金を利用することができます。
本記事を参考に、ぜひ新規事業に新事業進出補助金を役立ててみてください。