【2024.9】漁業に事業再構築補助金を活用する方法とは?具体例や注意点も紹介
「漁業を営んでいる事業者でも事業再構築補助金を活用できるのだろうか?」と疑問に思ったことはありませんか?
漁業は事業再構築補助金の活用が可能です。ただし、漁業で事業再構築補助金を利用するにはいくつか注意点があります。
この記事では、漁業に事業再構築補助金を活用する際の注意点や実際の採択例などを紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
- 事業再構築補助金を漁業に使う方法がわかる
- 漁業で実際に採択された事例がわかる
監修者
松山市の税理士 越智聖税理士事務所代表。株式会社聖会計代表取締役社長。税理士。
経済産業省認定経営革新等支援機関
越智聖税理士事務所は平成27年4月に松山で開業した、主に中四国全域の中小企業の皆様をご支援している会計事務所である。会計・税務はもちろんのこと、お客様のお悩み事を解決する総合的なコンサルティング、緻密な経営診断にもとづく経営コンサルティングなどを得意としている。前職において関与先の上場支援、多くの業種の税務経営支援、相続税、事業承継対策に従事し、12年の実務経験を経て独立開業。現在、職員6名の体制でお客様を支援。
事業再構築補助金の書類確認など多岐にわたる業務に対応ができる。圧倒的な実績を持つ認定経営革新等支援機関として多くの事業者を支援。愛媛県内で事業再構築補助金の採択率が税理士、会計士、中小企業診断士などの中で5位になる。四国税理士会松山支部所属。
高齢化社会の要請である介護事業経営支援にも取り組み、新規事業立ち上げから財務体質改善、集客アドバイスなど、さまざまなサービスを提供。また、様々な業種に対応し、建設業、飲食業、不動産業、社会福祉法人、酪農業、さらには漫画家、芸能関係などの珍しい業種にも対応している。仕事のほとんどがお客様や他士業の先生からの紹介となっている。現状では80%が紹介で、それ以外は直接の依頼や、ネットでの集客である。税理士業務以外の仕事(保険、法人設立、建設業許可など)は、提携している専門家の方に積極的に依頼し、お客様へのサポート体制の拡充を図っている。顧問先が黒字になるように、出来上がった試算表を基に徹底的に分析して改善すべき点を指摘。また、多くの業種を取り扱っていて、周りの業界のヒアリング調査も実施。これにより、一般的には7割が赤字企業といわれるなか、当事務所の顧問先の黒字率は6割を超える。
【他媒体での監修事例】
・UPSIDERお役立ち記事にて記事監修
事業再構築補助金について
漁業に事業再構築補助金を活用する方法について解説する前に、まずは事業再構築補助金そのものについて解説します。
事業再構築補助金とは、新規事業に挑戦したい個人事業主を含む中小企業や中堅企業が活用できる補助金です。大企業は活用することができません。元々はコロナ禍で経営が厳しくなってしまった事業者を対象にしている補助金制度でした。
多額のお金を基本的に返済なしで受け取ることができるので人気があります。補助金を活用するには事業計画書等を作成して提出し、事務局から採択されなくてはなりません。
基本的にいくつかの申請枠、類型に分かれて募集されていて、新規事業の内容等に応じて適切な枠に応募する必要があります。
事業再構築補助金について
事業再構築補助金で受け取れる金額と補助率
以下は、事業再構築補助金の第12回公募で設定されていた補助率と補助上限金額です。それぞれの枠や類型別に補助率と補助上限金額は異なります。また、会社規模や従業員数でも異なるので注意しましょう。
成長分野進出枠(通常類型)
従業員数 | 補助上限金額 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の金額 | 補助率 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の補助率 |
20人以下 | 1,500万円(2,000万円) | 中小企業:1/2 (2/3) 中堅企業:1/3 (1/2) |
21~50人 | 3,000万円(4,000万円) | |
51~100人 | 4,000万円(5,000万円) | |
101人以上 | 6,000万円(7,000万円) |
成長分野進出枠(GX進出類型)
企業の種類 | 従業員数 | 補助上限金額 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の金額 | 補助率 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の補助率 |
中小企業 | 20人以下 | 3,000万円(4,000万円) | 1/2 (2/3) |
21~50人 | 5,000万円(6,000万円) | ||
51~100人 | 7,000万円(8,000万円) | ||
101人以上 | 8,000万円(1億円) | ||
中堅企業 | – | 1億円(1.5億円) | 1/3(1/2) |
コロナ回復加速化枠(通常類型)
従業員数 | 補助上限金額 | 補助率 |
5人以下 | 1,000万円 | 中小企業:2/3 (従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは 3/4) 中堅企業:1/2 (従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは 2/3) |
6~20人 | 1,500万円 | |
21人~50人 | 2,000万円 | |
51人以上 | 3,000万円 |
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)
従業員数 | 補助上限金額 | 補助率 |
5人以下 | 500万円 | 中小企業:3/4(一部 2/3) 中堅企業:2/3(一部 1/2) ※「コロナ借換保証等で既往債務を借り換えていること」という任意要件を満たさない場合、補助率は()内の数字になる |
6~20人 | 1,000万円 | |
21人以上 | 1,500万円 |
サプライチェーン強靱化枠
従業員数 | 補助上限金額 | 補助率 |
– | 5億円 (建物費がない場合は3億円) | 中小企業:1/2 中堅企業:1/3 |
上記から、事業再構築補助金はかなり高額の補助金を受け取ることができる制度だとわかるでしょう。新たな事業にチャレンジしたい方はぜひ事業再構築補助金に申請するのがおすすめです。
事業再構築補助金の採択率
事業再構築補助金は事務局から採択されなければ活用することができないと先述しましたが、その採択率はどのくらいなのでしょうか。以下は第11回公募までの採択率をまとめた表です。
公募 | 応募件数 | 採択件数 | 採択率 |
第1回公募 | 22,229件 | 8,015件 | 36.0% |
第2回公募 | 20,800件 | 9,336件 | 44.9% |
第3回公募 | 20,307件 | 9,021件 | 44.4% |
第4回公募 | 19,673件 | 8,810件 | 44.8% |
第5回公募 | 21,035件 | 9,707件 | 46.1% |
第6回公募 | 15,340件 | 7,669件 | 49.9% |
第7回公募 | 15,132件 | 7,745件 | 51.1% |
第8回公募 | 12,591件 | 6,456件 | 51.3% |
第9回公募 | 9,368件 | 4,259件 | 45.4% |
第10回公募 | 10,821件 | 5,205件 | 48.1% |
第11回公募 | 9,207件 | 2,437件 | 26.5% |
おおよそ50%前後で推移していることがわかるかと思いますが、第11回公募の採択率は大きく下がり、30%を下回る結果になっています。
事業再構築補助金は人気があり、今後も審査にはAIが導入されるなどさらに採択難易度は増していくと予想されます。しっかり事業計画書などを綿密に正確に作り込んで申請することが大切です。
漁業は事業再構築補助金を使える
漁業は基本的に事業再構築補助金の対象です。以下で詳しく解説します。
漁業は事業再構築補助金の対象となる
漁業も基本的に事業再構築補助金の対象です。また、条件を満たしていれば個人事業主も事業再構築補助金を受け取ることが可能です。事業再構築補助金を受け取るために満たさなければいけない条件、要件は以下の内容です。
- 事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること
- 事業計画を金融機関等や認定経営革新等支援機関と策定し、確認を受けていること
- 付加価値額を向上させること
上記に当てはまれば、漁業を営む方も事業再構築補助金に申請することができます。また、各応募枠によって別の要件も設定されているため、事前によく確認しましょう。
新規事業として一次産業の漁業を行うことはできない
事業再構築補助金で行う事業は既存事業とは異なる新規事業でなくてはなりません。しかし、新規事業として漁業等の一次産業を行うことはできないので注意しましょう。
漁業を行なっている事業者が、従来とは異なる漁業の事業を行うことはできませんし、これまでに漁業をやっていなかった事業者が新規事業として漁業や農業といった事業を行うこともできません。
漁業の事業再構築補助金の採択事例
では、漁業に事業再構築補助金を使う場合はどのように活用すれば良いのでしょうか。漁業で事業再構築補助金に採択された事例をいくつか紹介します。
漁業の事業再構築補助金の採択事例
飲食店を開業した事例
事業者名:有限会社協和漁業部
事業計画名:漁師による飲食店及び水産加工施設の開業で知床地域を活性化
事業内容:漁師として培ってきた魚に対する知見を活かして飲食店兼水産加工場を建設し新規市場に参入。飲食店は地魚定食のほか肴料理を提供して夜の営業も行う。加工品はスモーク調理などオリジナルの逸品が揃う。
漁業が事業再構築補助金を活用して行う事例の1つが飲食店を開業する事例です。飲食店の開業は、漁業でとった魚をそのまま提供できるといった既存事業とのシナジー効果が発揮されるでしょう。
加工食品の生産を始めた事例
事業者名:株式会社丸寿海産
事業計画名:当社自慢の養殖魚を用いた加工食品分野に新分野展開し、取引先・消費者のニーズに対応する!
事業内容:当社はこれまで養殖した活魚・鮮魚を卸売業者へ提供してきたが、昨今は簡便に食卓へ取り入れられる加工食品へのニーズが高まっており、取引先から加工食品製造の要請が多く寄せられるようになった。それらのニーズに応えることで新たな収益の柱を構築し経営の安定を図るとともに、消費者に水産加工食品の魅力を伝えていく計画である。
漁業をやっていた事業者が、事業再構築補助金を活用して加工食品の生産を行なった事例です。水産加工食品は様々な種類があるため、多くの事業者の方々が取っている魚介類を活用することができるのではないでしょうか。
加工食品の生産とECサイトでの販売を始めた事例
事業者名:義丸水産冷蔵株式会社
事業計画名:急速冷凍機導入による未利用魚(イワシ)の商品化&D2C商流構築に挑戦!
事業内容:コロナ感染症の影響で飲食店等の休業が相次いだことで水産市場での鮮魚価格が下落。当社売上も大きく減少している。そこで新事業では、従来は廃棄となっていた未利用魚を加工した新商品「イワシの開き」を開発。急速冷凍技術を活用し、全国の消費者向けに直接冷凍EC販売する新たな商流を構築する。
加工食品の開発に加え、その加工食品をECサイトで販売した事例です。ECサイト等デジタル技術の活用は、事業再構築補助金の審査項目にもなっているので高い評価を得ることができるでしょう。
なお、株式会社補助金プラスでは冷凍食品を開発してECサイトで販売するという具体例とともに事業計画書の書き方を解説したマニュアルを配布しているのでぜひ参考にしてみてくださいね。
第12回公募対応「採択率を上げるポイントがわかる事業再構築補助金事業計画書作成マニュアル」
直売所を作った事例
事業者名:浦山海苔
事業計画名:業界初、海苔生産者による海苔直売所運営事業
事業内容:当社は有明海にて海苔養殖を行う事業者である。現状の販路は主に地域の漁協であるが、2015年よりSNSや「ポケットマルシェ」などの通販システムを用いて自社商品販売を行なっている。本事業では、当社商品を当社直売所にて販売できるようにするための環境整備及び販促を行うものである。
事業再構築補助金を活用して自社の商品を販売する直売所を作った事例です。
事業再構築補助金はこの事例のように建物費や機械設備・システム構築費をメインの経費とすると良いでしょう。
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漁業に事業再構築補助金を活用する際のポイント
漁業に事業再構築補助金を活用する際のポイントについて解説していきます。
漁業に事業再構築補助金を活用する際のポイント
加工などの新規事業への転換がおすすめ
事業再構築補助金を活用して行う事業は、水産加工食品の開発等がおすすめです。漁業に事業再構築補助金を活用した採択事例では、多くの場合水産加工食品の開発を行なっていました。
事業再構築補助金に採択されるためには、既存事業の強みを生かした事業を立案することが必要不可欠です。しかし、漁業が強みを生かせる分野は限られているので、強みを明確に生かせる水産加工食品の開発などがおすすめです。
困ったら専門家に相談する
漁業事業者の方々は、新規事業の立案に慣れていない方もいるかもしれません。事業再構築補助金を活用して新規事業を行う場合、事業再構築補助金に詳しい専門家への相談を行うことをおすすめします。事業計画書の作成支援や新規事業の内容に関するアドバイスまで、しっかりサポートしてくれるでしょう。
漁業が活用できる支援策について
漁業が活用できる支援策は、主に農林水産省から行われています。漁業を行なっている事業者への支援も多くあるため、こちらも合わせて確認すると良いでしょう。
単に既存事業の支援を受けるのではなく、新規事業を行いたい場合は事業再構築補助金が一番良い選択肢です。ぜひ活用してみてください。
株式会社補助金プラスは事業再構築補助金を使いたい漁業の方をサポートします
株式会社補助金プラスは、事業再構築補助金などの補助金に申請したいという方向けに申請支援サポートを行っています。
初めて事業再構築補助金に申請する場合、事業計画書の作成や新規事業の立案でわからないことも多いでしょう。
そんな時、多くの士業が在籍している株式会社補助金プラスは様々な面から事業者様をサポートすることができます。補助金から採択されることを目指し、しっかり事業者様に寄り添った事業計画書作成のサポート等が可能です。
これまでに申請支援をしてきた事業者様の採択率は90%を超えています。オンラインで、場所を選ばず様々な事業者様をサポート可能です。
初回は無料相談も受け付けています。事業再構築補助金に申請したい方は、ぜひ株式会社補助金プラスにお問い合わせください。
まとめ
この記事では漁業が事業再構築補助金を活用する方法について、具体的な採択事例とともに解説してきました。
漁業の採択事例はそこまで多くないものの、水産加工食品の開発をはじめとする新規事業に事業再構築補助金を活用することは十分に可能です。
今回紹介したような事例も参考にしながら、漁業に事業再構築補助金を活用するのをぜひ検討してみてくださいね。