中小企業新事業進出補助金(以下、新事業進出補助金)は、運送業を新たに始める事業者も活用することができます。運送業において、新事業進出補助金はどのように活用することができるのかについて、本記事で解説します。
実際に運送業が新事業進出補助金に採択された事例の解説や、新事業進出補助金を活用して行う新規事業のアイデア提案もしますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
運送業に関して確認する前に、まずは新事業進出補助金の概要を解説します。
新事業進出補助金は中小企業、小規模事業者が対象の補助金制度です。個人事業主も含まれると予想されています。基本的に、資本金が10億円以上の大企業は事業再構築補助金に申請できないでしょう。
また、その他に基本要件として以下を満たす必要があります。
中小企業等が、企業の成長・拡大に向けた新規事業(※)への挑戦を行い、(※事業者にとって新製品(又は新サービス)を新規顧客に提供する新たな挑戦であること)
①付加価値額の年平均成長率が+4.0%以上増加
②1人あたり給与支給総額の年平均成長率が、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、又は給与支給総額の年平均成長率+2.5%以上増加
③事業所内最低賃金が事業実施都道府県における地域別最低賃金+30円以上の水準
④次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等の基本要件を全て満たす3~5年の事業計画に取り組むこと。
引用:中小企業新事業進出補助金
上記を満たす中小企業や小規模事業者は新事業進出補助金の対象になるでしょう。
また、今後応募枠等が設置された場合、枠別に別途要件が設けられる可能性もあります。その場合、必ず自社が当てはまるかどうか事前に確認しておきましょう。
運送業が新事業進出補助金に応募した場合に受け取れる金額は、従業員数によって変わります。
現在、以下のように補助率、補助上限金額が定められています。
従業員数 | 補助上限金額 | 補助率 |
従業員数20人以下 | 2,500万円(3,000万円) | 1/2 |
従業員数21~50人 | 4,000万円(5,000万円) |
従業員数51~100人 | 5,500万円(7,000万円) |
従業員数101人以上 | 7,000万円(9,000万円) |
※補助下限750万円
※大幅賃上げ特例適用事業者(事業終了時点で①事業場内最低賃金+50円、②給与支給総額+
6%を達成)の場合、補助上限額を上乗せ。(上記カッコ内の金額は特例適用後の上限額。)
参照:中小企業新事業進出補助金
かなり高い補助上限金額が設定されているので、もし採択されればかなり高額な補助金を受け取れるかもしれません。
運送業が新事業進出補助金を活用して行う事業にはいくつかの要件があります。つまり新事業進出補助金を活用してどんな事業でも行えるわけではありません。
新事業進出補助金を活用して行う事業は、これまでに提供したことのない新商品や新サービスを提供するものであると覚えておきましょう。今までやってきた事業をそのまま継続するためには新事業進出補助金を使うことはできません。また新事業進出補助金で採択されるには、他社がやっていないような、新しく今後の成長が見込まれる事業を始める必要があります。
新事業進出補助金の新規事業の細かい要件について気になるという運送業の方々は、ぜひ以下の記事を参考にしてみてくださいね。
新事業進出補助金は、運送業と相性が良い補助金です。その理由について解説します。
コロナ禍によるネットショッピングの普及などによってECが拡大したことを受けて、運送業の需要が拡大していることが一つめの理由として挙げられます。
新事業進出補助金は事業再構築補助金の後継補助金であり、事業再構築補助金は運送業を含む事業者がコロナ禍による経営悪化からの回復を目的としたものです。事業再構築補助金は市場が拡大しているなど収益性が見込まれる事業が高い評価を受け、採択されやすい傾向にありました。
新事業進出補助金はコロナとの関連性が強いわけではありませんが、コロナ禍等の非常事態でも対応できる事業であることはアピールした方が良いでしょう。
運送業の需要が拡大している一方で、運送業では慢性的な人手不足が生じています。運送業の人手不足を解消するにはDX化等による効率化が求められ、新事業進出補助金の審査でもデジタル技術の活用が高く評価される場合があります。
新事業進出補助金を活用して運送業界の課題にDX化等でアプローチできるような事業を実施できると良いでしょう。
運送業が実際に補助金を活用した事例を紹介します。どの事例も優れた事業を展開しているので、ぜひ参考にしてみてください。
事業者名:山桜商事有限会社
事業内容:物流業界の課題であった復路の空き車両を有効活用。荷主と運送業者を結びつけ、運送業界の収益向上につなげるシステムを構築します。
運送業が事業再構築補助金を活用して、荷主と運送業者のマッチングを行うプラットフォームの開発を行なった事例です。
事業再構築補助金はシステム開発を主な投資とする事業と相性が良いため、このようなシステム開発は一つの典型的な例と言えます。自社が運送業を営んでいることから、運送業者の課題感を把握していたことがシステム開発の強みになったでしょう。
事業者名:光和産業株式会社
事業計画名:倉庫取得で輸入・通関・保管・運送・納品のワンストップ体制強化
事業内容:倉庫を事業譲渡で取得することにより、従来の業務である輸入・通関・運送・納品に「保管」を加え、ワンストップ体制を強化する。
運送業が倉庫を新たに取得し、保管業務を展開した事例です。既存事業との親和性が高く、売上増加の相乗効果が見込める点で高く評価されたと考えられます。
事業者名:テラテクニカル株式会社
事業計画名:既存倉庫を活用した大型ドローン練習施設運営による事業再構築
事業内容:当社の保有する空き倉庫を改装し各種のドローンの練習施設を始めます。大型ドローンも飛ばせることやレース用コースの設置、夜間営業など近隣施設との差別化で集客し、売上利益の向上と雇用の維持に努めます。
運送業が運送業とは異なる事業を事業再構築補助金を用いて新たに始めた事例です。事業再構築補助金では、このような既存事業とは大きく異なる事業への転換も行うことが可能です。
この事例が優れている点としては、以下の点を上げることができます。
ぜひこの事例を参考に、資産の活用や社会問題の解決に資する事業を考えてみてください。
事業者名:株式会社しんけん
事業計画名:EV等次世代型車両に対応した自動車整備事業
事業内容:当社の事業環境や既存事業で培った強みをフルに活用し、一般自動車・貨物自動車共にEV化へシフトしていくといった現況を踏まえ、当社が埼玉県内で先陣を切り、貨物車向け自動車整備事業に加え、“次世代型自動車(電動自動車等)整備事業”を開始する。
運送業が自動車整備事業に展開した事例です。運送業者の中には、自社で整備点検までも行なっているという方も多くいるでしょう。この場合、整備点検ができるという強みを活用した新規事業を行うことが可能です。
この事例はEVにも対応することで、政府が推進するカーボンニュートラルの取り組みにも貢献している点が優れています。
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最後に、運送業が新事業進出補助金を活用する際の注意点について紹介します。
運送業で特に注意したい点は、車両の購入費用は新事業進出補助金の対象にはならないと考えられている点です。
ほぼ例外なく車両購入費は補助対象外になるでしょう。新たに車両を購入する事業を行う場合は、管理システムの構築費といったその他の経費を新事業進出補助金で申請するのがおすすめです。
新事業進出補助金では、人件費は対象になりません。一過性の支出ではなく、会社の資産を形成するような機械設備やシステム開発を主な経費として計上するようにしましょう。
新事業進出補助金はあらゆる事業の実施に活用することが可能ですが、既存事業と何の関わりもない事業が採択される可能性は低いと予想されています。既存事業の知見やノウハウ、人員体制などが有効に活用できるような新規事業を選択しましょう。
他にも注意する点として、新たな制度であるインボイス制度があります。詳しい内容については以下の記事を参考にしてください。インボイス制度の対応策や注意するべきポイントを解説しています。
参考:運送業界向けオンラインマガジン|トラッカーズマガジン
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この記事では運送業が新事業進出補助金を活用する方法について解説してきました。運送業は新事業進出補助金との相性も良く、現状の課題を解決できるような事業であれば採択率も上がるでしょう。
ぜひ、新規事業として運送業を考えている方は、新事業進出補助金を活用してみてください!