「漁業を営んでいる事業者でも中小企業新事業進出補助金(以下、新事業進出補助金)を活用できるのだろうか?」と疑問に思ったことはありませんか?
漁業経営者も新事業進出補助金の活用が可能です。ただし、漁業で新事業進出補助金を利用するにはいくつか注意点があります。
この記事では、漁業に新事業進出補助金を活用する際の注意点や実際の補助金採択例などを紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
漁業に新事業進出補助金を活用する方法について解説する前に、まずは新事業進出補助金そのものについて解説します。
新事業進出補助金とは、新規事業に挑戦したい個人事業主を含む中小企業や中堅企業が活用できる補助金です。大企業は活用することができません。事業再構築補助金の後継補助金であり、事業再構築補助金は元々はコロナ禍で経営が厳しくなってしまった事業者を対象にしている補助金制度でした。
新事業進出補助金も事業再構築補助金と同じく、多額のお金を基本的に返済なしで受け取ることができるので人気の補助金になるでしょう。補助金を活用するには事業計画書等を作成して提出し、事務局から採択されなくてはなりません。
新事業進出補助金では、以下のように補助上限金額と補助率が設定されています。
従業員数 | 補助上限金額 | 補助率 |
従業員数20人以下 | 2,500万円(3,000万円) | 1/2 |
従業員数21~50人 | 4,000万円(5,000万円) |
従業員数51~100人 | 5,500万円(7,000万円) |
従業員数101人以上 | 7,000万円(9,000万円) |
※補助下限750万円
※大幅賃上げ特例適用事業者(事業終了時点で①事業場内最低賃金+50円、②給与支給総額+
6%を達成)の場合、補助上限額を上乗せ。(上記カッコ内の金額は特例適用後の上限額。)
参照:中小企業新事業進出補助金
あくまでも上記は補助上限金額ですが、かなり大きな金額が設定されていることがわかるでしょう。そのため、漁業を営んでいる事業者も場合によっては9,000万円もの補助金を受け取れる可能性があります。
新事業進出補助金は第一回の公募が開始したばかりなので、採択率は出ていません。参考までに、事業再構築補助金の採択率を以下に掲載します。
おそらく新事業進出補助金も事業再構築補助金と同じような人気の補助金制度になると考えられているので、採択率はあまり高くはならないと予想されています。
公募 |
応募件数 |
採択件数 |
採択率 |
第1回公募 |
22,229件 |
8,015件 |
36.0% |
第2回公募 |
20,800件 |
9,336件 |
44.9% |
第3回公募 |
20,307件 |
9,021件 |
44.4% |
第4回公募 |
19,673件 |
8,810件 |
44.8% |
第5回公募 |
21,035件 |
9,707件 |
46.1% |
第6回公募 |
15,340件 |
7,669件 |
49.9% |
第7回公募 |
15,132件 |
7,745件 |
51.1% |
第8回公募 |
12,591件 |
6,456件 |
51.3% |
第9回公募 |
9,368件 |
4,259件 |
45.4% |
第10回公募 |
10,821件 |
5,205件 |
48.1% |
第11回公募 |
9,207件 |
2,437件 |
26.5% |
第12回公募 |
7,664件 |
2,031件 |
26.5% |
おおよそ50%前後で推移していることがわかるかと思いますが、第11回公募の採択率は大きく下がり、30%を下回る結果になっています。
新事業進出補助金で採択されるには、しっかり事業計画書などを綿密に正確に作り込んで申請することが大切です。
漁業を営んでいる事業者も新事業進出補助金を受け取れるのでしょうか。以下で詳しく解説します。
これから漁業を始める場合は新事業進出補助金の対象にはならない
もし、これから新たな事業として漁業を始めたい場合は、新事業進出補助金の対象にはなりません。新事業進出補助金の対象外事業として、以下のように公募要領に明記されています。
⑦ 1次産業(農業、林業、漁業)に取り組む事業
※ 主として自家栽培・自家取得した原材料を使用して製造、加工を行っている場合は 1 次産業に該当します。ただし、同一構内に工場、作業所とみられるものがあり、その製造活動に専従の常用従業者がいる場合に限り、2 次又は 3 次産業に該当する場合があります。
※ 例えば、農業に取り組む事業者が、同一構内の工場において専従の常用従業員を用いて、農作物の加工や農作物を用いた料理の提供を行う場合など、2 次又は 3 次産業分野に取り組む場合に必要な経費は、補助対象となります。2 次又は 3 次産業に取り組む場合であっても、加工や料理提供の材料である農作物の生産自体に必要な経費は、補助対象外となります。
引用:中小企業新事業進出補助金 公募要領
上記のように、1次産業に新たに取り組む場合は補助対象事業として認められません。ただし、既存事業として漁業を営む事業者が新たに別の事業を始める場合は新事業進出補助金の対象事業になり得ます。
例えば、漁業で獲れた魚の加工食品を売ったり、料理を提供したり、漁業で出た廃棄物をもとに新たなビジネスを始めたり等が当てはまります。その場合は新事業進出補助金を活用することもできるので、ぜひ申請してみましょう。
では、漁業で新事業進出補助金を使う場合はどのように活用すれば良いのでしょうか。これまでに、漁業を営む事業者が補助金に採択された事例をいくつか紹介します。新事業進出補助金に申請する際の参考にしてみてください。
事業者名:有限会社協和漁業部
事業計画名:漁師による飲食店及び水産加工施設の開業で知床地域を活性化
事業内容:漁師として培ってきた魚に対する知見を活かして飲食店兼水産加工場を建設し新規市場に参入。飲食店は地魚定食のほか肴料理を提供して夜の営業も行う。加工品はスモーク調理などオリジナルの逸品が揃う。
漁業が事業再構築補助金を活用して行う事例の1つが飲食店を開業する事例です。飲食店の開業は、漁業でとった魚をそのまま提供できるといった既存事業とのシナジー効果が発揮されるでしょう。
事業者名:株式会社丸寿海産
事業計画名:当社自慢の養殖魚を用いた加工食品分野に新分野展開し、取引先・消費者のニーズに対応する!
事業内容:当社はこれまで養殖した活魚・鮮魚を卸売業者へ提供してきたが、昨今は簡便に食卓へ取り入れられる加工食品へのニーズが高まっており、取引先から加工食品製造の要請が多く寄せられるようになった。それらのニーズに応えることで新たな収益の柱を構築し経営の安定を図るとともに、消費者に水産加工食品の魅力を伝えていく計画である。
漁業をやっていた事業者が、事業再構築補助金を活用して加工食品の生産を行なった事例です。水産加工食品は様々な種類があるため、多くの事業者の方々が取っている魚介類を活用することができるのではないでしょうか。
事業者名:義丸水産冷蔵株式会社
事業計画名:急速冷凍機導入による未利用魚(イワシ)の商品化&D2C商流構築に挑戦!
事業内容:コロナ感染症の影響で飲食店等の休業が相次いだことで水産市場での鮮魚価格が下落。当社売上も大きく減少している。そこで新事業では、従来は廃棄となっていた未利用魚を加工した新商品「イワシの開き」を開発。急速冷凍技術を活用し、全国の消費者向けに直接冷凍EC販売する新たな商流を構築する。
加工食品の開発に加え、その加工食品をECサイトで販売した事例です。ECサイト等デジタル技術の活用は、事業再構築補助金の審査項目にもなっているので高い評価を得ることができたのでしょう。
なお、株式会社補助金プラスでは冷凍食品を開発してECサイトで販売するという具体例とともに事業計画書の書き方を解説したマニュアルを配布しているのでぜひ参考にしてみてくださいね。
第12回公募対応「採択率を上げるポイントがわかる事業再構築補助金事業計画書作成マニュアル」
事業者名:浦山海苔
事業計画名:業界初、海苔生産者による海苔直売所運営事業
事業内容:当社は有明海にて海苔養殖を行う事業者である。現状の販路は主に地域の漁協であるが、2015年よりSNSや「ポケットマルシェ」などの通販システムを用いて自社商品販売を行なっている。本事業では、当社商品を当社直売所にて販売できるようにするための環境整備及び販促を行うものである。
事業再構築補助金を活用して自社の商品を販売する直売所を作った事例です。
補助金申請時はこの事例のように建物費や機械設備・システム構築費をメインの経費とすると良いでしょう。
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・事業再構築補助金をゴルフ関連事業に活用する方法
・事業再構築補助金の事業計画書の書き方
漁業に新事業進出補助金を活用する際のポイントについて解説していきます。
新事業進出補助金を活用して行う事業は、水産加工食品の開発等がおすすめです。これまでの補助金採択事例では、多くの漁業事業者が水産加工食品の開発を行なっていました。
補助金に採択されるためには、既存事業の強みを生かした事業を立案することが必要不可欠です。しかし、漁業が強みを生かせる分野は限られているので、強みを明確に生かせる水産加工食品の開発などがおすすめです。
漁業事業者の方々は、新規事業の立案に慣れていない方もいるかもしれません。新事業進出補助金を活用して新規事業を行う場合、新事業進出補助金に詳しい専門家への相談を行うことをおすすめします。事業計画書の作成支援や新規事業の内容に関するアドバイスまで、しっかりサポートしてくれるでしょう。
漁業が活用できる支援策は、主に農林水産省から行われています。漁業を行なっている事業者への支援も多くあるため、こちらも合わせて確認すると良いでしょう。
単に既存事業の支援を受けるのではなく、新規事業を行いたい場合は新事業進出補助金が一番良い選択肢です。ぜひ活用してみてください。
株式会社補助金プラスは、新事業進出補助金などの補助金に申請したいという方向けに申請支援サポートを行っています。
初めて補助金に申請する場合、事業計画書の作成や新規事業の立案でわからないことも多いでしょう。
そんな時、多くの士業が在籍している株式会社補助金プラスは様々な面から事業者様をサポートすることができます。補助金から採択されることを目指し、しっかり事業者様に寄り添った事業計画書作成のサポート等が可能です。
これまでに申請支援をしてきた事業者様の採択率は90%を超えています。オンラインで、場所を選ばず様々な事業者様をサポート可能です。
初回は無料相談も受け付けています。新事業進出補助金に申請したい方は、ぜひ株式会社補助金プラスにお問い合わせください。
この記事では漁業が新事業進出補助金を活用する方法について、具体的な採択事例とともに解説してきました。
漁業の採択事例はそこまで多くないものの、水産加工食品の開発をはじめとする新規事業に新事業進出補助金を活用することは十分に可能です。
今回紹介したような事例も参考にしながら、漁業に新事業進出補助金を活用するのをぜひ検討してみてくださいね。