【2024.10】飲食店は事業再構築補助金に申請できる?どんな事業に活用できるか解説
コロナ禍に注目を集めた補助金が事業再構築補助金です。事業再構築補助金は非常に大きな金額が受け取れる上、対象となる事業者の条件もそこまで厳しくなく、様々な経費に利用することが可能なため人気があります。
そんな事業再構築補助金の活用を検討している飲食店事業者も多くいると思いますが、「具体的にどんな事業に事業再構築補助金を使えるのだろう」とお悩みではありませんか?
この記事では、事業再構築補助金の概要を説明するとともに、飲食店での具体的な活用の方向性を実際の採択事例も合わせて紹介していきます。
- 事業再構築補助金とは何かがわかる
- 飲食店が事業再構築補助金を活用して行う新規事業のアイデアを得ることができる
- 飲食店が事業再構築補助金に採択されるためのポイントがわかる
監修者
松山市の税理士 越智聖税理士事務所代表。株式会社聖会計代表取締役社長。税理士。
経済産業省認定経営革新等支援機関
越智聖税理士事務所は平成27年4月に松山で開業した、主に中四国全域の中小企業の皆様をご支援している会計事務所である。会計・税務はもちろんのこと、お客様のお悩み事を解決する総合的なコンサルティング、緻密な経営診断にもとづく経営コンサルティングなどを得意としている。前職において関与先の上場支援、多くの業種の税務経営支援、相続税、事業承継対策に従事し、12年の実務経験を経て独立開業。現在、職員6名の体制でお客様を支援。
事業再構築補助金の書類確認など多岐にわたる業務に対応ができる。圧倒的な実績を持つ認定経営革新等支援機関として多くの事業者を支援。愛媛県内で事業再構築補助金の採択率が税理士、会計士、中小企業診断士などの中で5位になる。四国税理士会松山支部所属。
高齢化社会の要請である介護事業経営支援にも取り組み、新規事業立ち上げから財務体質改善、集客アドバイスなど、さまざまなサービスを提供。また、様々な業種に対応し、建設業、飲食業、不動産業、社会福祉法人、酪農業、さらには漫画家、芸能関係などの珍しい業種にも対応している。仕事のほとんどがお客様や他士業の先生からの紹介となっている。現状では80%が紹介で、それ以外は直接の依頼や、ネットでの集客である。税理士業務以外の仕事(保険、法人設立、建設業許可など)は、提携している専門家の方に積極的に依頼し、お客様へのサポート体制の拡充を図っている。顧問先が黒字になるように、出来上がった試算表を基に徹底的に分析して改善すべき点を指摘。また、多くの業種を取り扱っていて、周りの業界のヒアリング調査も実施。これにより、一般的には7割が赤字企業といわれるなか、当事務所の顧問先の黒字率は6割を超える。
【他媒体での監修事例】
・UPSIDERお役立ち記事にて記事監修
事業再構築補助金について
事業再構築補助金は中小企業等のコロナからの回復を目的として作られた補助金です。近年は円安や原油高、ウクライナ情勢の影響を受けている事業者に対する支援策も追加されています。
以下で、事業再構築補助金の概要について解説します。
事業再構築補助金について
対象となる事業者
事業再構築補助金は、中小企業、中堅企業を対象とした補助金で、個人事業主も申請することができます。基本的に資本金10億円未満の事業者が対象になります。大企業やみなし大企業は対象にならないので注意してください。
また、申請に必要な必須要件というものも設定されています。以下は、全枠必須の要件です。
- 事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること
- 事業計画を金融機関等や認定経営革新等支援機関と策定し、確認を受けていること
- 付加価値額を向上させること
他にも、申請枠や類型ごとに個別の要件が設定されています。それらを確認し、申請時に不足がないようにしましょう。
要件を満たす飲食店であれば、事業再構築補助金に申請することができます。
事業再構築補助金で行える新規事業の要件
事業再構築補助金を活用して行う新規事業は、以下の6つの類型のいずれかを満たす必要があります。この要件は事業再構築要件と呼ばれます。
例として飲食店が新規事業としてテイクアウト・デリバリーやキッチンカーによる販売を行う場合は、商品の提供方法の変更であるため業態転換にあたります。
各類型ごとに満たすべき要件が詳細に定められているので事業計画書を作成する際は、事業再構築指針の手引きを参照すると良いでしょう。要件を満たすための考え方の具体例が説明されています。
以下の記事でも5つの類型について詳しく解説しているので合わせて参考にしてみてくださいね。
事業再構築補助金で受け取れる金額
事業再構築補助金で受け取れる金額は、補助対象経費×補助率できまります。
補助率は中小企業等か中堅企業等か、また応募枠によっても変わります。
以下の表に、第12回公募で設定されていた補助率と補助上限金額を一覧としてまとめているので参考にしてみてください。多くの飲食店は中小企業等に該当すると考えられるため、中小企業の補助率等を参考にするのがおすすめです。
成長分野進出枠(通常類型)
従業員数 | 補助上限金額 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の金額 | 補助率 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の補助率 |
20人以下 | 1,500万円(2,000万円) | 中小企業:1/2 (2/3) 中堅企業:1/3 (1/2) |
21~50人 | 3,000万円(4,000万円) | |
51~100人 | 4,000万円(5,000万円) | |
101人以上 | 6,000万円(7,000万円) |
成長分野進出枠(GX進出類型)
企業の種類 | 従業員数 | 補助上限金額 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の金額 | 補助率 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合の補助率 |
中小企業 | 20人以下 | 3,000万円(4,000万円) | 1/2 (2/3) |
21~50人 | 5,000万円(6,000万円) | ||
51~100人 | 7,000万円(8,000万円) | ||
101人以上 | 8,000万円(1億円) | ||
中堅企業 | – | 1億円(1.5億円) | 1/3(1/2) |
コロナ回復加速化枠(通常類型)
従業員数 | 補助上限金額 | 補助率 |
5人以下 | 1,000万円 | 中小企業:2/3 (従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは 3/4) 中堅企業:1/2 (従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは 2/3) |
6~20人 | 1,500万円 | |
21人~50人 | 2,000万円 | |
51人以上 | 3,000万円 |
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)
従業員数 | 補助上限金額 | 補助率 |
5人以下 | 500万円 | 中小企業:3/4(一部 2/3) 中堅企業:2/3(一部 1/2) ※「コロナ借換保証等で既往債務を借り換えていること」という任意要件を満たさない場合、補助率は()内の数字になる |
6~20人 | 1,000万円 | |
21人以上 | 1,500万円 |
サプライチェーン強靱化枠
従業員数 | 補助上限金額 | 補助率 |
– | 5億円 (建物費がない場合は3億円) | 中小企業:1/2 中堅企業:1/3 |
飲食店は事業再構築補助金に採択されやすい?
飲食店は事業再構築補助金に採択されやすいと言われることがあります。それは本当のことなのか、以下で詳しく解説します。
飲食店は事業再構築補助金に採択されやすい?
飲食店の採択率は平均より高かった
参考に、過去の事業再構築補助金第5回締切の応募件数と採択件数を確認してみましょう。宿泊業、飲食サービス業は応募件数が16.3%に対し採択件数が18.4%となっていることがわかります。
採択件数の割合が応募件数の割合よりも高いということは、全体平均よりも採択されやすい傾向にあることを示しています。第5回まではこのように飲食店の採択率が高い傾向にあったのは事実のようです。
直近の結果では飲食店の採択率は平均より低い
一番直近で結果が発表された第11回締切では、宿泊業、飲食サービス業について
採択件数の割合<応募件数の割合
となりました。
このことは飲食店の採択率が全体の採択率よりも低いことを示しています。以前よりも飲食店事業は採択されにくくなったと考えることができます。
飲食店の事業再構築補助金の採択率が落ちたと考える理由
飲食店の採択率が若干下がった理由としては以下の二つの理由が想定されます。
①事業再構築補助金の目的のシフト
事業再構築補助金はコロナからの回復を支援することを目的としてスタートしました。ただ近年は円安や原油高、ウクライナ情勢等による新たな事業者への脅威が出現し、これらの支援に重きを置くようになりました。
飲食店はコロナの影響を大きく受けた事業者で当初は優遇されていたものの、目的のシフトに伴いコロナの影響という要因の重みが以前より減少したのではないでしょうか。
※第12回公募からは、再度コロナによる影響の大きかった事業者を基本的には対象としています。
②新規性のある事業の減少
事業再構築補助金は革新的なビジネスモデルの構築など新規性のある事業が高く評価されます。コロナ直後は、テイクアウトやデリバリーといった形態が飲食店の新たな形態として注目されていましたが、徐々に一般化して以前ほどの新規性が認められなくなったのではないでしょうか。
①に対してはコロナの影響に加えて、円安やその他の要因の経営への影響を説明する、②に対しては単なるテイクアウトやデリバリーではなく革新性のあるビジネスプランを考えることによって採択率を上げることが可能でしょう。
おすすめの記事も合わせてチェック
・事業再構築補助金をグループホーム事業に活用する方法
・事業再構築補助金をグランピング事業に活用する方法
・事業再構築補助金をワーケーション事業に活用する方法
・事業再構築補助金をゴルフ関連事業に活用する方法
・事業再構築補助金の事業計画書の書き方
飲食店の事業再構築補助金を活用した新規事業の方向性
飲食店は、既存事業を活かした上でどのような新規事業を始めれば良いのでしょうか。以下では考えられる方向性の例をいくつか紹介します。
飲食店の事業再構築補助金を活用した新規事業の方向性
冷凍食品の製造・販売をする事業
飲食店が冷凍食品を開発して、自動販売機やECサイトで販売するという事業です。
事業再構築補助金の対象経費としては、
- 急速冷凍機の購入費
- 自動販売機の購入費
- ECサイトの構築費
などが想定されます。冷凍食品の製造・販売事業は事業再構築補助金で多くの採択事例があります。
株式会社補助金プラスでは飲食店が冷凍食品の製造・販売事業を行うという想定の元で作成した事業計画書の具体例と採択のポイントを解説した事業計画書作成マニュアルを配布しているので、参考にしてみてくださいね。
事業者名:株式会社シゲキッチン
事業計画名:『焼肉店』から『冷凍食肉加工卸・通信販売業等』に新分野展開
事業内容:焼肉店から、地元ニーズのある冷凍食肉加工商品(和牛やソーセージ等)を、スーパーや飲食店等に真空パック卸販売を行うと同時に、コロナ禍で需要の高まるEC販売という新分野でV字回復を行う事業
キッチンカーによる販売をする事業
飲食店がキッチンカーでテイクアウト用の料理を販売するという事業です。
事業再構築補助金の対象経費としては、キッチンカーの架装費などが想定されます。
事業再構築補助金を活用してキッチンカー事業を始める時の注意点は、車両本体の購入費用は補助対象経費とならない点です。
以下の記事で事業再構築補助金のキッチンカー事業への活用方法は詳しく解説しているのでぜひ参考にしてみてくださいね。
事業者名:鈴木 裕介
事業計画名:茨城県食材を活用した「動くレストラン事業」への挑戦
事業内容:元々茨城県内で創作料理店を営んでいた当方はコロナ過で売上が激減。既存事業を縮小しウィズコロナに適応する為、新たに茨城県食材を活用したキッチンカースタイルの「動くレストラン事業」に挑戦します。
テイクアウト専門店を出店する事業
飲食店がテイクアウト専門店を出店している事例です。
事業再構築補助金の対象経費としては
- テナントの改修費
- 厨房機器の購入費
- ビラやチラシの作成費
などが想定されます。テイクアウト専門店はコロナ禍に対応した形態として注目を集めました。
事業者名:株式会社ディグワークス
事業計画名:コーヒー&ジェラートのテイクアウト専門店出店による事業再構築
事業内容:既存事業である居酒屋業態が、コロナ禍により大打撃を受けている。そこで、新たにコーヒー・ジェラートのテイクアウト専門店をオープンさせ、売上・利益の増加を図るとともに、出店地の地域活性化に取り組む。
既存とは異なる飲食店を出店する事業
飲食店が既存の料理とは異なる料理を提供する飲食店を出店する事例です。
事業再構築補助金の対象経費としては
- テナントの改修費
- 厨房機器の購入費
- ビラやチラシの作成費
が想定されます。このパターンでよくあるのが、居酒屋など夜間の酒類の提供がメインだった店が焼肉店に転換する事例です。
焼肉店は、換気が効いているためコロナ禍でも安心して楽しめる形態として人気です。
事業者名:神田大人の沖縄料理店ぐしけん(沖縄ダイニングきじむなー)
事業計画名:アフターコロナで勝ち抜けるホルモンメインの焼肉店へ事業転換
事業内容:沖縄料理店の経営を行っておりましたが、コロナ禍において宴会キャンセルや、沖縄ライブ等の人が集まるイベント等を中止せざるを得なくなり、今後も需要が高い焼肉業態への転換を行い売上をV字回復させる再構築計画。
宿泊業を展開する事業
飲食店がグランピングなどの宿泊業に展開する事例です。
事業再構築補助金の対象経費としては、宿泊施設の建設費などが想定されます。
宿泊業で既存事業の強みである飲食店の料理を提供するといった方法によってシナジー効果を発揮することができます。
事業者名:CSBジャパン株式会社
事業計画名:世界的有名店のレシピとサウナで整う古民家再生型グランピング
事業内容:都内でカフェ・焼肉店を経営する当社は、コロナウィルス感染拡大による既存店の売上減少と、物価高騰による利益率低下に陥っています。そこで当社の最大の強みである「世界的有名店のレシピ」を活用、更に「グランピング界」と「サウナ界」の第一人者と組み、ウィズコロナ時代のアウトドアニーズやワーケーションニーズに対応した、古民家活用型のグランピング施設にチャレンジすることで事業再構築を果たします。
飲食店が事業再構築補助金に採択されるためのポイント
飲食店が事業再構築補助金に採択されるためのポイントを3つ紹介します。
飲食店が事業再構築補助金に採択されるためのポイント
加点を取得する
事業再構築補助金では加点を取得することで採択率を上げることができます。加点とは特定の条件を満たした事業者に与えられる得点で、加点を取得することで審査の際にプラスの評価を受けることができます。
「大きく売上が減少しており業況が厳しい事業者に対する加点」や「足許で原油価格・物価高騰の経済環境の変化の影響を受けている事業者に対する加点」は飲食店が利用できる可能性が高い加点です。
事業再構築補助金の加点については以下の記事で紹介しているので、申請を検討している飲食店の事業者の皆様は合わせて参考にしてみてくださいね。
回復・再生応援枠に応募する
事業再構築補助金では売上が大きく減少した事業者向けの応募枠で回復・再生応援枠という応募枠があります。この応募枠は採択率が通常枠よりも高く、補助率も通常枠よりも高いため要件を満たしている飲食店は回復・再生応援枠への応募を検討してみると良いでしょう。
既存事業とのシナジー効果を考える
事業再構築補助金で重要な審査項目の一つに既存事業とのシナジー効果があります。飲食店の既存事業の強みを活用して、新規事業でどのように差別化を図ることができるかを考えるようにしましょう。
採択事例で紹介したように、飲食店が飲食とは異なる事業を行う際も料理の提供を組み合わせるなどして既存事業を活用した差別化を図りましょう。
株式会社補助金プラスは事業再構築補助金に申請する飲食店を支援します
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まとめ
この記事では飲食店が事業再構築補助金を活用する方法や、採択されるためのポイントを解説してきました。飲食店は採択率がやや減少しているという傾向はあるものの、依然として事業再構築補助金の採択された事業者として大きな割合を占めています。
今回紹介したような採択事例や、採択されるためのポイントを参考にしながら事業再構築補助金の活用をひ検討してみてくださいね。
株式会社補助金プラスでは多くの飲食店の事業者様の採択事例があります。事業再構築補助金を活用した新規事業を行う際はぜひお気軽にご相談ください。