【2025.8】ものづくり補助金の賃上げに関する要件とは?賃金引き上げ計画の誓約書についても解説!

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※記事は作成時の公募要領をもとに作成しているため最新の情報と異なることがございます

ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)を申請する際には、賃上げ誓約書を記載して添付する必要がありました。しかし最新の公募では、賃上げ誓約書関係の手続きは簡略化されています。

本記事では、最新の21次公募時点でのものづくり補助金の賃上げ誓約書や、賃上げ要件について徹底解説します。

この記事を読むと
  • 賃上げとは何かが分かる
  • ものづくり補助金における賃上げの要件が分かる
  • 基本要件に関する注意点が分かる
この記事の目次

賃上げが必要?ものづくり補助金とは

ものづくり補助金とは、インボイス制度や働き方改革、被用者保険の適用拡大などの制度変更への対応を控える、中小企業や小規模事業者を対象にした補助金です。今後行われる制度変更に対応するために行う革新的サービス開発、試作品開発、生産プロセスによって、生産性を向上させる目的で実施する設備投資の経費を補助します。

2025年7月現在では21次公募が予定されています。

ものづくり補助金は、比較的資金に余裕がない小さな事業者でも申請しやすいのがメリットです。また、返済不要の資金調達手段としても活用できます。

ただし、ものづくり補助金が交付されるのは、補助事業遂行後の確定検査(補助事業の最終確認のこと)に合格してからになります。申請から交付まで1年以上のスパンがある後払い方式なので注意しましょう。申請時には、賃上げ誓約書による賃上げの表明や、詳細な経費の内訳2社以上の見積などが必要になります。

賃上げが必要?ものづくり補助金とは

ものづくり補助金の対象事業者

ものづくり補助金の対象事業者は、中小企業等経営強化法第2条第1項に規程されたものです。具体的には、資本金または常勤従業員数が一定以下の数字になる会社または個人です。業種ごとの資本金と常勤従業員数の基準を見ていきましょう。

引用:ものづくり補助金 公募要領

中小企業の他、特定事業者の一部や特定非営利活動法人、社会福祉法人も申請が認められています。ただし、上記表とは異なる基準が設けられているので注意しましょう。また、みなし大企業は対象外になる、申請時に虚偽の内容を故意に提出すると次回以降の公募の申請ができない、などのルールが定められています。詳細は公募要領をご覧ください。

ものづくり補助金ではいくら貰える?

ものづくり補助金は、「申請した経費の金額×補助率」で交付金額が決まります。例えば経費600万円で申請して補助率が2/3だと、交付金額は400万円です。

補助上限額は、申請するものづくり補助金の枠によって変わります。第21回公募で募集される製品・サービス高付加価値化枠、グローバル枠のそれぞれの補助率と補助上限金額は以下の通りです。

製品・サービス高付加価値化枠

従業員数補助上限金額
(補助下限額100 万円)
補助率
5人以下750 万円中小企業 :1/2
小規模企業・小規模事業者及び再生事業者:2/3
6~20人1,000 万円
21~50 人1,500 万円
51 人以上2,500 万円

グローバル枠

補助上限金額
(補助下限額100 万円)
補助率
3,000万円中小企業 :1/2
小規模企業・小規模事業者及び再生事業者:2/3

また、「大幅な賃上げに係る補助上限額引上げの特例」や「最低賃金引上げに係る補助率引上げの特例」を適用すれば、従業員数に応じて補助金上限額を引上げられます。

大幅な賃上げに係る補助上限額引上げの特例

従業員数各申請枠の補助上限額の引上げ額
5人以下各補助対象事業枠の補助上限額から最大 100 万円
6~20人各補助対象事業枠の補助上限額から最大 250 万円
21~50 人各補助対象事業枠の補助上限額から最大 1,000 万円
51 人以上各補助対象事業枠の補助上限額から最大 1,000 万円

最低賃金引上げに係る補助率引上げの特例

引上げ後補助率
2/3

引用:ものづくり補助金 公募要領

ものづくり補助金の申請枠

前述の通り、ものづくり補助金はいくつかの申請枠別に分けられています。それぞれの概要は以下の通りです。

各申請枠の名称概要
製品・サービス高付加価値化枠革新的な新製品・新サービス開発の取り組みに必要な設備・システム投資等を支援
グローバル枠海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みに必要な設備・システム投資等を支援
引用:ものづくり補助金 公募要領

ものづくり補助金の申請要件

ものづくり補助金に申請するには、「基本要件」を満たした事業計画書を策定する必要があります。

通常枠の申請条件となる、事業計画期間3~5年の間に達成すべき基本要件は次の通りです。

基本要件

基本要件①:付加価値額の増加要件
⚫ 補助事業終了後 3~5 年の事業計画期間において、事業者全体の付加価値額の年平均成長率(CAGR。以下同じ。)を 3.0%(以下「付加価値額基準値」という。)以上増加させること。
⚫ 具体的には、申請者自身で付加価値額基準値以上の目標値(以下「付加価値額目標値」という。)を設定し、事業計画期間最終年度において当該付加価値額目標値を達成することが必要です。
⚫ 付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものをいいます。

基本要件②:賃金の増加要件 【目標値未達の場合、補助金返還義務あり】
⚫ 補助事業終了後 3~5 年の事業計画期間において、従業員(非常勤を含む。以下同じ。)及び役員それぞれの給与支給総額の年平均成長率を 2.0%(以下「給与支給総額基準値」という。)以上増加させること。
又は従業員及び役員それぞれの 1 人あたり給与支給総額の年平均成長率を事業実施都道府県における最低賃金の直近 5 年間(2019 年度を基準とし、2020 年度~2024 年度の 5 年間をいう。)の年平均成長率(以下「1 人あたり給与支給総額基準値」という。)以上増加させること。
⚫ 具体的には、申請者自身で給与支給総額基準値以上の目標値(以下「給与支給総額目標値」という。)及び 1 人あたり給与支給総額基準値以上の目標値(以下「1 人あたり給与支給総額目標値」という。)をそれぞれ設定し※1※2、交付申請時までに全ての従業員又は従業員代表者、役員(以下「従業員等」という。)に対して表明のうえ、事業計画期間最終年度において当該給与支給総額目標値及び 1 人あたり給与
支給総額目標値を達成することが必要です。
⚫ 事業計画期間最終年度において、少なくともいずれか一方の目標値を達成する必要があります。いずれも達成できなかった場合、達成度合いの高い目標値の未達成率に応じて補助金返還を求めます。また、従業員等に対して設定した目標値の表明がされていなかった場合、交付決定取消し、補助金返還を求めます。
⚫ 給与支給総額とは、従業員及び役員に支払った給与等(給料、賃金、賞与及び役員報酬等は含み、福利厚生費や法定福利費、退職金は除く)をいいます。また、1 人あたり給与支給総額とは、給与支給総額を従業員数及び役員数で除したものをいいます。

基本要件③:事業所※内最低賃金水準要件【目標値未達の場合、補助金返還義務あり】
⚫ 補助事業終了後 3~5 年の事業計画期間において、事業所内最低賃金(補助事業の主たる実施場所で最も低い賃金)を、毎年、事業実施都道府県における最低賃金より 30 円(以下「事業所内最低賃金基準値」という。)以上高い水準にすること。
⚫ 具体的には、申請者自身で事業所内最低賃金基準値以上の目標値(以下「事業所内最低賃金目標値」という。)を設定し、交付申請時までに従業員等に対して表明のうえ、毎年、当該事業所内最低賃金目標値を達成することが必要です。
⚫ 達成できなかった場合、補助金返還を求めます。また、従業員等に対して設定した目標値の表明がされていなかった場合、交付決定取消し、補助金返還を求めます。
※ ここでいう「事業所」とは、「補助事業の主たる実施場所」を指します。P7 に記載されている補助事業の主たる実施場所の考え方にしたがって目標値を設定し、申請・報告してください。なお、主たる実施場所における従業員の最低賃金を、本要件の達成状況として事業化状況報告において報告してください。

基本要件④:従業員の仕事・子育て両立要件(従業員数 21 名以上の場合のみ)

⚫ 「次世代育成支援対策推進法」(平成 15 年法律第 120 号。以下「次世代法」という。)第 12 条に規定する一般事業主行動計画の策定・公表を行うこと。
⚫ 具体的には、申請時までに、次世代法に基づき一般事業主行動計画を策定し、仕事と家庭の両立の取組を支援する情報サイト「両立支援のひろば」に策定した、申請締切日時点で有効※な一般事業主行動計画を公表することが必要です。
※ 「申請締切日時点で有効」とは、申請締切日が一般事業主行動計画の計画期間内に入っている必要があります。
⚫ 一般事業主行動計画を「両立支援のひろば」に掲載するにあたっては、1~2 週間程度の期間を要しますので、該当事業者はお早めに一般事業主行動計画の策定・公表に向けた準備等を行ってください。また、策定・公表した一般事業主行動計画は、可能な限り管轄の都道府県労働局へ届出ください。



引用:ものづくり補助金 公募要領

このように、基本要件をクリアするには賃上げを含む生産性向上や従業員の給与引上げを行います。補助事業完了後の年度で各増加目標が達成できなかったときは、ものづくり補助金のすべてまたは一部を返還しなければなりません。

また、基本要件に加えて「枠ごとの追加要件」も満たす必要があります。例えば21次公募時点だと、グローバル枠に申請する場合や特例を活用する場合に満たすべき要件があります。詳細は公募要領をチェックしてください。

申請方法・スケジュール

ものづくり補助金の申請は、「Gビズプライムアカウント」を取得して専用の電子申請システムから行います。郵送や窓口での申請は受け付けていません。電子申請が終わったら、事務局が提出した事業計画書の内容を審査し、採択の有無を決定します。

採択を受けた後は、提出した事業計画書通りに補助事業を遂行します。補助事業が終わったら実績報告・確定検査にて交付金額を確定させ、ものづくり補助金が振り込まれるというスケジュールです。補助金の交付を受けた後も、5年間にわたっての計6回の報告作業が必要です。

ものづくり補助金の賃上げ要件について

ものづくり補助金へ申請するには、従業員の賃上げに関する要件をクリアする必要があります。ものづくり補助金の賃上げ要件について、詳細を見ていきましょう。

ものづくり補助金の賃上げ要件について

給与支給総額に関する要件

給与支給総額とは、従業員や役員への労働に対する支払いのことです。具体的には次の経費を合計したものを意味します。

  • 給料・賃金・賞与
  • 残業手当・休日出勤手当・職務手当・地域手当・家族手当・住宅手当などの各種手当

一方で、退職手当といった給与所得に含まれない支払いや福利厚生費は、給与支給総額には含まれません。また、以下に挙げた人件費も給与支給総額からは除外します。

  • 売上原価に含まれる労務費
  • 一般管理費に含まれる役員給与、従業員給与・賞与および賞与引当金繰入額など
  • 派遣労働者、短時間労働者の給与を外注費で処理した場合のその費用

ものづくり補助金の基本要件の中には、給与総支給額の年平均成長率を 2.0%上げることがあります。

例えば従業員10人で1人あたりの年収が400万円、役員1人で役員報酬が500万円、従業員賞与が500万円だとすると、給与支給総額は「(400万円×10人)+500万円+500万円=5,000万円」となります。この5,000万円を基準として毎年2.0%増加させる場合、5年間だと次の通りです。

1年後2年後3年後4年後5年後
給与支給総額5,100万円5,200万円5,300万円5,400万円5,500万円
伸び率2.0%4.0%6.0%8.0%10.0%

事業所内最低賃金に関する要件

ものづくり補助金における事業場内最低賃金とは、補助事業実施場所で働く従業員の中で、もっとも低い時給額(月給の場合は時給換算した金額)のことです。次に地域別最低賃金とは、補助事業実施場所が属する都道府県に適用される最低賃金を意味します。

厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧

ものづくり補助金の賃上げ要件の1つに、事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上にして維持するというものがあります。例えば地域別最低賃金が1,001円だった場合、事業計画期間中は毎年1,031円以上の時給を達成しなければなりません。

なお、事業場内最低賃金および給与支給総額を基本要件より高い水準である「賃上げ加点等」まで引上げる計画だと、事業計画書の採択時に加点を貰えます。

賃上げの期限

賃上げの期限は、ものづくり補助金申請時に設定した補助事業計画の期間内です。5年で設定したときは、5年間目標を達成し続ける必要があります。未達だとものづくり補助金のすべてまたは一部返還になるので注意しましょう。

ものづくり補助金の基本要件に関する注意点

基本要件を満たしていないには要注意です。もし基本要件を満たしていない場合は、補助金の返還が求められる可能性があります。それは、先述した基本要件それぞれに関して返還すべき金額は異なってきますのでそれぞれ解説していきます。

給与総支給額の年2.0%以上の増加が達成できなかった場合

給与総支給額の年2.0%以上の増加ができなかった場合、補助金の返還が要求される場合があると公募要領に明記されています。

しかし、想定よりも売り上げが伸びない場合は、給与総支給額の増加が困難とされるため、給与支給総額の年率増加率平均が「付加価値額の年率増加率平均÷2」を越えている場合や、天災などのような事業者の責任ではないと判断される場合は、返還を要求されないでしょう。

事業場内最低賃金の増加目標が達成できなかった場合

事業年度の補助事業完了後、毎年の事業計画期間中、具体的には3月末時点において、事業場内の最低賃金の引き上げ目標が未達成の場合、補助金の一部を返還しなければなりません。

ただし、年間の付加価値額増加率が平均で2.0%に達しない場合や、天災など事業者に非がない理由がある場合には、上記の補助金一部返還の要請は免れます。

ものづくり補助金では賃金引き上げ計画の誓約書の提出が必要

賃金引き上げ計画の誓約書とは、ものづくり補助金の賃上げ要件における約束を記載する書類です。申請時点での直近月の事業場内最低賃金および直近決算における給与支給総額を明記し、これらを基本要件以上に引上げることを表明します。

ものづくり補助金では賃金引き上げ計画の誓約書の提出が必要

第14次公募から簡略化

ものづくり補助金の第14次公募より、賃金引き上げ計画の誓約書の手続きが簡略化され、書類を準備して添付する必要がなくなりました電子申請システムへ、必要事項を入力するのみで完了です。賃上げ誓約書への押印作業も不要です。

一部は他の入力内容から自動で反映

電子申請システム上の賃上げ誓約書に記載する賃上げ内容については、他の入力内容から自動反映されるようになっています。ただし、申請直近月の事業場内最低賃金の入力は必要になるので、事前に計算しておきましょう。

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ものづくり補助金では賃上げ要件が設定されており、事業者様にとって複雑な制度理解が求められます。賃上げ計画の策定や実施方法について疑問をお持ちの事業者様も多いのではないでしょうか。

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まとめ

ものづくり補助金の基本要件には、給与支給総額や事業場内最低賃金の引上げといった、賃上げ要件が定められています。事業計画策定時には、必ず賃上げ要件を満たす内容を組み込みましょう。

賃上げ要件については、賃上げ誓約書を準備して添付する必要がありました。しかし14次公募以降は、電子申請システムでの入力のみで対応できます。簡略化されているとはいえ、電子申請前には内容に誤りがないかしっかりとチェックしておいてください。

ほかにもものづくり補助金についての記事ありますのでチェックしてみてくださいね。

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